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2023.01.30 (Mon)

ICTで製造業はどのように変わるのか(第26回)

工場は深刻な人手不足。その原因と5つの対策法とは

 工場・製造業の人手不足は、労働人口の減少や後進が育たないことなどを理由に、年々深刻化しています。企業にとっては経営に関わる重大な問題であり、早急に対策を立てなければなりません。

 本記事では、国が公表するデータに基づき、製造業における人手不足の実態や、その要因、懸念される影響、改善するための対策を解説します。実態を把握し、できるだけ早く先手を打つことで、今後の安定的な企業経営が期待できるでしょう。

データで見る工場・製造業の人手不足問題

 近年、工場・製造業における人手不足問題は深刻化しています。まずは、厚生労働省や経済産業省が公表しているデータから、その実態を見てみましょう。

約20年間で157万人も減少している!

 厚生労働省の「2022年版ものづくり白書」で公表されたデータによると、製造業の就業者数は約20年間で157万人も減少しています。加えて、全産業における製造業の就業者割合も、約20年間で3.4ポイントの低下が見られました。直近で見ても、製造業における就業者数は、2019年が1,068万人、2020年が1,051万人、2021年が1,045万人と、3年連続で減少しています。

女性就業者数も約20年間で90万人減少している

 製造業では、女性就業者数の減少も見られます。2002年には403万人いた就業者数も、2021年には313万人に落ち込み、約20年間で90万人も減少しています。実は2012年から2018年までは増加基調にあったものの、2019年から減少に転じてしまいました。

 ちなみに、全産業における女性就業者の割合は上昇傾向にある一方で、製造業に限ると約10年間横ばいで推移しています。つまり、全産業では女性就業者が増加しているにも関わらず、製造業の女性就業者は伸び悩んでいるということがわかります。

高齢化が深刻化している

 製造業では、就業者の高齢化も深刻化しています。2022年版ものづくり白書によると、製造業における34歳以下の若年就業者数は、過去20年間で121万人も減少しています。

 一方で、製造業における高齢就業者の割合は、2002年の4.7%から、2021年には8.7%となり、約20年間で増加しています。つまり製造業では、若年就業者数が減る一方で、高齢就業者数が増えているという“高齢化”が深刻化していることがわかります。

工場・製造業が人手不足に陥る3つの理由

 工場・製造業の高齢化は、結果的に人手不足を招くことになります。工場・製造業が人手不足に陥る3つの理由を解説します。

労働人口の減少

 製造業が人手不足に陥る理由のひとつに、少子高齢化による、日本全体の労働力人口の減少が挙げられます。

 少子高齢化は、人口に占める高齢者の割合が増加し、出生率低下によって若年人口が減少することで起こる現象です。今後も少子高齢化はさらに深刻化すると見られていることから、労働力人口も減少し続けると考えられます。

 労働人口の減少は、特に地方で深刻になることが予想されます。ただでさえ少なくなっている20代前後の労働力が、賃金の高さや利便性・自由度を求めて東京に移住すると、地方では人材確保が困難になります。

教育不足

 後進の教育不足も、人材不足の要因として挙げられます。

 「ものづくり白書2022」によると、製造業において計画的なOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング、実際の仕事を通じた指導)およびOFF-JT(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング、現場以外の指導)を行った事業者の割合は、2019年度から2020年度にかけて低下しています。この理由として「指導する人材が不足している」と答えた事業所が約6割にものぼっています。背景には、ベテランが退職したことによる、現場の技能人材の不足が大きな要因となっているようです。 なお、技能継承においては「退職者の中から必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用を行い、指導者として活用している」と答えた事業所も約6割にのぼっています。

工場・製造業に対する負のイメージ

 工場・製造業に対する世間のイメージも、人材不足に陥っている要因と考えられます。

 高度成長期における製造業は、花形の職業とされていました。しかし、バブル崩壊後には大規模なリストラや大手の外資企業との待遇差、不景気、グローバル化などによる時代・環境の変化が訪れ、工場・製造業に対して負のイメージを抱く人が一定数存在するようになりました。加えて、ライン作業など「単純作業」というイメージも、工場・製造業が抱える悩みのひとつとなっています。

工場・製造業の人手不足による影響

 工場・製造業が人手不足に陥ると、企業経営にも深刻な影響を及ぼします。ここでは、特に悪影響が大きいと考えられる「競争力の低下」「事業縮小・倒産の危機」「労働環境の悪化による悪循環」について解説します。

競争力の低下

 人手不足は、企業における競争力の低下を招きます。新しく人材を採用できない場合、現状のベテラン人材だけで業務を続けても、いずれは定年退職で現場を去るため、将来に不安を残すことになります。加えて、従来であれば新人が担当するような業務を、すでに中堅ともいえる従業員がこなすことになれば、重要な業務に人材を割けなくなり、さらなる競争力低下を生んでしまいます。

事業縮小・倒産の危機

 人手不足は、企業の生産力にも悪影響を及ぼします。業務を担う人材が増えないと、必然的に行える業務量も増えません。たとえ現状の人材のみで最大限の力を発揮しても、その業務量には限界があり、無理をすればオーバーワークにつながる恐れもあります。結果として生産力低下は免れず、事業規模の縮小を迫られるケースも起こり得ます。

労働環境の悪化による悪循環

 業務量に対する人手が足りないことで、既存の従業員の残業時間が増えるなど、重い負担がのしかかってしまう恐れがあります。加えて、業務過多により有給休暇の取得率が低下し、労働環境する可能性も考えられます。既存従業員の肉体的・精神的負担が増大することは、モチベーションの低下も引き起こすでしょう。パフォーマンスも下がり、ミスや抜け漏れなどが多発する恐れもあります。これらは労働災害や製品の品質低下にもつながりかねません。

 労働環境の悪化は、結果的に従業員の離職につながります。そのことがさらなる人手不足を呼び込むという悪循環を招いてしまいます。

人手不足を防ぐ5つの対策

 製造業の現場における人手不足は、企業の利益にも悪影響を及ぼす深刻な問題です。ここでは、製造業において人手不足を防ぐための5つの対策を紹介します。

エンゲージメントの向上

 人手不足を防ぐにはまず、今いる従業員の離職を食い止めるために「従業員エンゲージメント」を高める必要があります。

 エンゲージメントとは「契約」や「約束」という意味を有する言葉で、従業員エンゲージメントは企業と従業員の信頼度の高さ、もしくはつながりの強さを示します。従業員エンゲージメントを高めることは離職防止につながり、人手不足に歯止めをかける効果が期待できます。

 従業員の離職理由には、人間関係の問題や人事評価に対する不満も考えられます。これらを解消するには、コミュニケーションの活性化、公平性の高い人事制度の採用が有効です。

 コミュニケーションを活性化することで従業員同士の関係性が深まり、人間関係によるストレス軽減にもつながります。そのために、コミュニケーションを取りやすい社内環境の整備が求められます。

 人事評価に対する不満を解消するには、人事制度の基準を明確にすることが重要です。これらを行うことでエンゲージメントが向上できれば、人材流出の防止効果が期待できます。

イメージアップ

 製造業に対する負のイメージを払拭するのも、人手不足解消への第一歩です。

製造業に対する負のイメージは、 “中身”が見えていないこともひとつの要因となります。実際に企業が取り組んでいる内容や仕事の魅力をアピールすることで、イメージアップが期待できます。

 イメージアップの手法は、Webサイトを立ち上げて動画を公開したり、SNSアカウントを運用するのが効果的です。特に中小規模の製造業は知名度が高くないため、自社がどのような企業なのかを積極的にアピールすることが大切です。

 この手法は、人手不足に対してすぐに効果が得られるわけではありません。あくまでもイメージアップを図り、人材確保を優位に行うための長期的戦略として有効な手法です。

外国人や女性人材の採用

 人手不足解消には、採用の幅を広げることも視野に入れる必要があります。たとえば、外国人や女性の採用です。

 外国人の採用に関しては、近年、全産業において年々増加しており、製造業でも多くの技能実習生が活躍しています。2019年4月からは、一定の専門性や技能を有した外国人を受け入れるための在留資格「特定技能」が新設され、特定技能外国人の受け入れが開始されました。このような即戦力になる外国人の雇用により、人手不足解消が期待できます。

 女性就業者についても、製造業は他産業と比べても伸び悩んでいるため、積極的に採用を推進していく必要があります。

DXの推進

 人手不足による生産力低下を食い止めるために効果的な手段のひとつが、DXの推進です。たとえば、これまで人が行っていた単純作業をAIに代替して自動化することで、業務効率の向上が見込めます。加えて、知識やノウハウ、技能などもデータベース化することにより、研修に費やす時間が削減できます。自動化のためのシステム導入は、初期費用など導入コストが必要になりますが、生産性向上に大きな効果が期待できます。

【関連記事】
「製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性とは?事例も合わせて紹介」

多能工の育成

 人手不足を補うには、「多能工」の育成もひとつの手段です。多能工とは、ひとりで複数の業務を進められる人材を示します。限りある人材の中に多能工が複数いることで、人手不足に陥っている部署に適切な配置ができ、繁忙期にも柔軟な対応が期待できます。従業員自身もキャリアアップやスキルアップが図れることで、モチベーションの向上につながるでしょう。

 多能工の育成には業務のマニュアル化が欠かせません。突如欠員が出た際に、どの従業員も対応できるような環境づくりも大切です。

まとめ

 ものづくり白書のデータが示すとおり、工場・製造業では人手不足が深刻化しています。人手不足は労働環境の悪化、競争力の低下の原因となるため、放置しておくと事業縮小、最悪の場合は倒産も招きかねません。

 人手不足による生産力低下を阻止するには、本記事で取り上げたような、製造業のデジタル化が大きな効果を発揮します。

 NTT東日本では、デジタル技術とネットワーク構築で製造業のデジタル化(スマートファクトリー化)を支援しています。部品などの自動発注、自動搬入といった業務の自動化や、コミュニケーション強化による従業員のエンゲージメント向上など、幅広い領域から人材不足解消に取り組むことができます。詳細については、ぜひ以下をご覧ください。

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