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2023.01.30 (Mon)

ICTで製造業はどのように変わるのか(第27回)

工場を見える化することで得られるメリットは? 具体的な導入の流れも解説

 近年、デジタルツールを活用して業務効率の向上をめざす企業が増えています。具体的には、デジタルツールを活用して工場の設備や作業内容などを見える化することにより、業務プロセスの改善や業務の自動化などにつなげる動きです。この記事では、工場の業務を効率化する方法に触れながら、見える化のメリットや導入手順を紹介します。製造業のDX化を検討している責任者や管理者の方は、ぜひ参考にしてください。

工場の業務効率向上のカギは「見える化」

 工場の業務を効率化するには、業務プロセスや進捗状況、設備の状態などを「見える化」し、ひと目で現状を把握できるようにすることが大切です。見える化することで業務効率化のために解決すべき課題が明確になり、施策を検討できます。ここでは、工場の見える化によるメリットを4つ紹介します。

見える化のメリット[その1]業務の手順やプロセスの改善が期待できる

 ひとつの製品が完成するまでにはさまざまな業務プロセスがあり、発注内容や製品の種類などによって変わることもあります。現場の従業員は自分の業務内容を理解していても、ほかの従業員の業務内容を把握していないケースは少なくないでしょう。これでは、たとえ非効率な業務内容であっても、従業員自身が気づかない限りは改善されません。そこで工場を見える化することにより、誰が見ても現場の状況を客観的に把握することが可能になります。そのうえで問題点を発見し、改善策を講じられることは、見える化の大きなメリットです。

 プロセスを可視化することで、業務の中にある無駄な部分が浮き彫りになり、より効率的な方法を検討するきっかけにもなります。「業務が正しい優先順位で行われているか」「本当にその作業に意味があるのか」などを見直し、必要に応じてICTツールなどを導入すれば、効率化の向上が期待できます。

見える化のメリット[その2]自動化すべき業務の判断がつきやすくなる

 最近は単純な入力作業・データ分析作業をAIが行うものなど、さまざまなデジタルツールが登場しています。工場内の業務を見える化すると、人が行うべき業務と機械・ロボットなどに任せられる業務の判断がつきやすくなり、業務プロセスの改善策を検討しやすくなるでしょう。

 工場で自動化できる業務としては、たとえば在庫管理や受発注管理、出荷管理などのデータ入力作業やデータ管理業務が挙げられます。重い製品の仕分けや運搬など、人が行うには負荷がかかる業務も自動化できる可能性があります。とくに単純作業を繰り返すことが多い業務は、デジタルツールや機械・ロボットにより代替できる可能性が高いでしょう。

見える化のメリット[その3]工場のレイアウトの見直しに役立つ

 工場の見える化によって明らかにするべき項目は、業務内容だけではありません。従業員の能力や気づき、行動などを分析することで、業務効率を改善できる可能性があります。

 たとえば、工場の適切なレイアウトは従業員の人数や能力、扱う製品の種類・数などによって異なります。現場の従業員から働きやすさをヒアリングしたり、行動を分析したりすると、現状のレイアウトに問題があるとわかるケースも多く見受けられます。レイアウトが従業員の動線に合っていないと時間的なロスが発生し、作業効率が下がってしまいます。現場の目線を取り入れた効率的なレイアウトを採用することが大切です。

見える化のメリット[その4]属人化の回避が期待できる

 工場内の作業は一定の経験や技術が求められる場面が多く、属人化しやすい傾向にあります。業務が属人化すると、従業員の入院や休業といった不測の事態で業務が滞る、ベテラン従業員の退職時に引き継ぎが難航するといったリスクが高まります。ほかの従業員が業務内容を把握できないことでトラブルが発生した時の対応が遅れ、納品遅延などを招くリスクもあります。

 工場を見える化すれば、業務の属人化によって発生するリスクを軽減できます。「それぞれの工程で誰がどのような業務をしているのか」「その業務にはどれくらい時間がかかるのか」などを明文化しておくことで、業務の引き継ぎや人材育成が容易になります。万が一のトラブルにも迅速な対応が可能です。

工場を見える化するための方法とは?

 ここからは、工場を見える化する具体的な方法を紹介します。

作業を見える化するには?

 多くの従業員を抱える企業は、それぞれの作業内容を細かく把握するのが困難です。作業を見える化すると、業務の無駄を発見できるだけでなく、作業時間も適切に管理できるようになるため、残業や従業員の負担を削減できます。

 作業の見える化を導入する方法のひとつとして、日報やチェックリストなどの電子化が挙げられます。紙媒体による保存はデータを蓄積・分析するのが難しく、うまく活用できない企業も少なくありません。電子化したデータはクラウドなどで管理し、必要な時にすぐ閲覧できる状態にしておくとよいでしょう。

設備を見える化するには?

 設備の見える化では、稼動している装置などの数値を取得し、閲覧できる状態にします。設備の状態をひと目で把握できるため、エラーや故障を予測しやすくなり、工場の稼動の安定化につながります。

 設備を見える化するには、何らかの方法によって稼動している設備の状態を数値化する必要があります。たとえば、設備にカメラを設置して画像認識する方法や、センサーを取り付けて数値を可視化する方法、設備のログを取得する方法などが挙げられます。異常がある場合はランプが点滅するなど、設備の状態がひと目でわかる仕組みを併せて導入するとよいでしょう。

工場を見える化させる流れ

 工場の見える化は、適切な手順で進めることが大切です。ここでは、見える化のプロセスを5つのステップに分けて解説します。

[その1]なぜ見える化するのか目的を決める

 工場を見える化する目的は、企業によってさまざまです。「業務効率を改善して生産性の向上につなげたい」「若手にベテラン従業員の技術を承継させたい」「生産ラインを最適化したい」など、見える化の目的を洗い出しましょう。目的が明確になっていないと、どのデータを収集すればよいかわからなくなるため、目的は数値や期限などを含んだ具体的なものにしましょう。

 見える化に際しては、新しい設備を導入したり、プログラムを組み直したりと多くのコストがかかるケースも少なくありません。一度にすべてを実現するのは難しいため、優先順位を決めて重要度の高い設備から改善していくとよいでしょう。スモールスタートを意識することで、コストを抑えつつ継続的に見える化を推し進められます。

[その2]必要となる環境を整える

 目的を決定したら、見える化するために必要な設備をピックアップします。たとえば、データを取得・収集するためのサーバーや、収集したデータを管理するためのデータベース、データ分析をする専用システムなどが挙げられます。

 いくらデータを蓄積してもそれらを分析し、結果がひと目でわかる状態に落とし込めなければ、見える化につなげることは難しいでしょう。

 システム関連部署がない場合やデータ活用に詳しい人材がいない場合などは、専門の協力会社に相談したり、新たに専門知識のある人材を雇うなど対策する必要があります。

[その3]セキュリティ対策を行う

 設備をインターネットに接続した場合、サイバー攻撃などによって情報が漏えいするリスクを考慮しなければなりません。大切なデータを守るために、パソコンやサーバー、IoT機器などの情報セキュリティ対策を行いましょう。

 対策の指針として参考になるのが、総務省が策定した「IoTセキュリティガイドライン」です。IoT機器をサイバー攻撃や不正アクセスなどから守るために、行うべき体制づくりを定めています。IoT機器を導入する時はこのガイドラインを確認し、運用ルールや規則などをあらかじめ決めておくとよいでしょう。

[その4]ルールに則ったデータ化や整理を行う

 データを収集、整理する際は、組織としての共通ルールを細かく策定する必要があります。たとえば、「それぞれの設備はどの数値を基準値とするのか」「数値の異常が見られたらどのように対応するか」などが挙げられます。それらをマニュアルにまとめておくと、運用後のミスやトラブルが防止できます。

 策定したルールをあらかじめ従業員に周知しておくことも大切です。いくらマニュアルを作成しても、現場の従業員に知られていなければスムーズに運用を開始できないからです。資料を配布するだけでなく、上司が部下にルールを説明したり、読み合わせをするといった対策を取るとよいでしょう。

[その5]データの集積や分析を行い、今後の業務に反映させる

 データを集積し、分析を行います。重要なのは分析をすることではなく、分析結果を社内で共有し、今後の業務に反映させることです。常にPDCAサイクルを回して業務効率が向上しているかを確認しましょう。

 最初に決めた導入の目的をもとに仮説を立てて効果の実証を繰り返し、問題解決に努めることが大切です。検証を繰り返すことで、より安定的な稼働体制を実現できます。データ分析に詳しい人が社内にいない場合や専門の部署がない場合などは外部に委託するなどの対策を取り、データを蓄積するだけの状態にならないように注意しましょう。

工場の見える化で押さえておくべき注意点

 工場の見える化にはさまざまなメリットがあるものの、進める際には注意するべきポイントがあります。以下では主な注意点を3つ紹介します。

デジタル化されていない古い設備のデータ移行はコストがかかる

 古い設備はデジタル化に対応していない場合が多く、別途センサーやカメラなどの補助設備を取り付ける必要があります。補助設備の取り付けが難しい場合は、設備そのものの入れ替えやアップデートを検討する必要があり、多くのコストがかかってしまう可能性があります。

 昔ながらの工場など、古い設備を長く使っている企業は数多く存在します。そのような場合はIoT化に多くの費用や時間がかかるため、なかなか着手しづらいかもしれません。しかし、自治体によっては設備のIoT化を助成する補助金制度が設けられている場合があります。まずは工場を管轄する自治体のWebサイトなどを確認し、情報を探すとよいでしょう。

データを集めることが目的にならないようにする

 見える化の目的は、データを集めることではありません。データを収集、蓄積するだけで分析や結果の共有などを怠り、今後の業務に反映できていないケースは意外と多いものです。工場を見える化する目的を明確にしていなかったり、自社の課題を把握できていないと、このような失敗が起こりやすいので注意しましょう。

 「どのデータをどれくらい集めるべきか」「必要性の高いデータは何か」を判断するのが難しいという失敗も見受けられます。必要なデータを見極めること自体が課題となってしまい、本来の目的を見失ってしまうケースも少なくありません。

部署ごとに評価指標を設定する

 工場を見える化する過程で、それぞれの部署が目標達成までの指標となるKPIを作成します。しかし、同じKPIでも部署ごとで計算方法や根拠にばらつきがあると、正確な判断が下せなくなります。

 数値を可視化して評価につなげるためには、すべての従業員に同じ判断基準を設けることが大切です。計算方法をあらかじめ標準化するなど、誰が見ても結果を判断できるように共通の指標を決めておきましょう。

まとめ

 工場の見える化とは、データの収集や分析などによって、作業内容や設備の状態などを可視化することです。単なる現状把握ではなく、業務プロセスを改善したり、業務の属人化を防止したりするメリットがあり、業務効率の向上が期待できます。

 しかし、データを集めること自体が目的になってしまう失敗も多く見受けられるため、システム関連部署がない場合などは専門家に相談し、分析結果を受けて業務を改善できるように対策を取るとよいでしょう。NTT東日本は、「デジタル技術」と「セキュアなインフラ環境」によって製造業の生産性向上をサポートしています。NTT東日本が手がける製造業ソリューションを導入してみてはいかがでしょうか。

製造業のスマートファクトリー化をデジタル技術から支援

日本の製造業は人材不足や老朽化した生産設備の維持、技能継承など、さまざまな問題を抱えており、これらに対応するため、生産性の向上が喫緊の課題となっています。NTT東日本は、「デジタル技術」と「セキュアなインフラ環境」によって、工場のデジタル化(スマートファクトリー化)をご支援。製造業の生産性向上をサポートします。

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