2023.01.30 (Mon)

ICTで製造業はどのように変わるのか(第18回)

工場を見える化するには? メリットや具体的な方法を紹介

 製造業においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)への関心が高まっている昨今、工場の「見える化」への取り組みが注目を浴びています。本記事では、「見せる化」との違いや「見える化」する目的、取り組みによって得られるメリット、検討すべき課題などについて解説します。見える化を実践する方法や重要なポイントについても紹介しますので、工場の見える化や、ものづくりにおけるDX推進に関心をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。

工場の見える化とは?

 DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環として、製造現場である工場を「見える化」することは重要な施策です。ここではまず、工場の見える化とは具体的にどのようなことなのかについて解説します。

工場の見える化の定義

 工場の見える化とは、具体的には「生産ラインにおける問題の所在を可視化すること」を示します。工場にあるさまざまな生産ラインには、一見問題なく稼働しているように見えても、実は解決すべき課題が潜んでいることも少なくありません。生産ラインの生産性を向上させるためには、業務効率化が不可欠です。それにはまず、隠れた課題をいかに見つけ出すか、つまり業務の「見える化・可視化」がキーポイントになります。

 現代は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)などのテクノロジーが発達し、浸透しつつあります。こうしたテクノロジーを活用して可視化された情報やデータを正確に整理、分析することで、業務プロセス改善へのアプローチがしやすくなります。

 目視や口頭での確認など、アナログ的な手法で情報を取得していると、判断がどうしても遅れがちになります。それに対し、見える化して客観的なデータを基に判断できるようになると、課題をよりスピーディーに把握でき、解決に向けて早期に動けるようになります。課題が解消できれば、これまで以上に迅速な運営が可能になったり、効率的な生産体制を構築できたりと、工場全体のパフォーマンスも大幅に向上するでしょう。

「見える化」と「見せる化」の違い

 DXなどの話題でよく使われる言葉の「見える化」と、同じような言葉の「見せる化」とは、どのような違いがあるのでしょうか。

 たとえば、機械の稼動状況を確認したいと思った際に、必要なデータを見られるようにすることは「見える化」と呼びます。何らかの情報を知りたいといったニーズが根底にあり、そのタイミングで可視化する取り組みのことです。

 一方で「見せる化」は、知りたい情報をいつでも目に入るようにする施策を示します。この場合「情報を知りたい」といった、人由来のニーズはあまり問題ではありません。あまり意識をせずとも情報を得られる点で、「見える化」と意味が異なっていることに注意が必要です。

工場を見える化するメリット

 工場を見える化することで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。ここでは、代表的な3点について解説します。

工場の課題や問題を発見できる

 工場に限らず、従来の手法を踏襲することで、実は無駄やムラなどが発生していることがあります。こうした無駄やムラは、問題意識を持っていなければ気付けません。たとえば、1日のうち工場のどこでどれくらいのエネルギーを使っているのか、などについては、これまで振り返りが行われていないケースもあるでしょう。

 現在は、IoTなどのテクノロジーを導入することで、いつ、どこで、どれくらいのエネルギーを使用しているのかを容易に可視化できます。エネルギー使用量の詳細な内訳についてデータを収集し、把握できれば、無駄な部分が明らかになるでしょう。分析の結果、無駄を省けるように施策を打つことで、工場全体におけるコスト削減や環境保全対策にも役立ちます。

生産設備の稼動率を可視化できる

 従来は目視でしか確認できなかった生産ラインの設備の稼動状況が、数値化されたデータで確認できるようになります。稼動率に偏りが見られたり、不具合が発生していたりといった異常を発見しやすくなり、万一の際には、スピーディーに解決策を講じ、回復措置を取ることができるようになります。ヒューマンエラーによる点検ミスも防げることから、突然稼動停止に陥る事態も事前に回避しやすくなります。

作業に必要な人的リソースを把握できる

 これまでは、工場における従業員の配置についての判断を、経験や勘などに頼る側面がありました。しかし、インターネットによってさまざまなモノと通信が可能になるIoTを活用すれば、より効率的な人員配置が可能になります。特定のタイミングにおける稼働率の高い業務を把握し、必要な従業員をタイムリーかつ集中的に配置することも可能です。限られた人手を最適化でき、生産性の向上も期待できます。

工場を見える化する際の課題

 工場の見える化には、多くのメリットがある一方で、クリアしなければならない課題も存在します。ここでは3点のデメリットについて解説します。

設備を整えるのに費用や時間を要する

 製造業の現場では、古い設備や機械を更新せず、今もそのまま使っているケースがよく見られます。そうした設備や機械やネットワークにつながっていないことが多く、そのままではインターネットに接続できません。稼働によって発生するデジタルデータを収集するのは困難なため、見える化にとっては大きなネックです。

 デジタルデータを収集するための対策としては、IoTセンサーやWebカメラを別途取り付けることなどが考えられるでしょう。場合によっては、設備を全面的に入れ替えなければならないことも考えられます。予想外に思わぬコストがかかったり、環境を整備するまでに長い期間がかかるかもしれません。工場を見える化する際には、導入時のイニシャルコストと導入後のランニングコスト、かかる期間などを確認し、総合的に判断することが大切です。自治体が用意している補助金制度があれば、積極的に活用することもおすすめします。

必要なデータを入手できない

 製造業において、設備や製品の品質管理にも大きく関わるデータの取得は、重要なポイントとなります。工場の見える化を進める際には、必要なデータは何か、そのデータはどのように定義付け、取得するかといったことを考えておかなければなりません。たとえば、製品の温度検査について視覚化したいという場合、何をもって合格とするのかはさまざまな角度から検討できるはずです。何を根拠にデータを必要とするのか、根本的な本質を捉えて明確化したうえで、必要なデータの取得方法を決めることが大切です。

各部門でKPIの計算方法が異なる

 KPI(Key Performance Indicator)とは「重要業績評価指標」とも呼ばれ、企業の各組織・部門における業績を測る重要な指標のことです。ただ、KPIは各部門によって、算出方法や計算方法がまちまちになっていることもあります。そうすると、部門ごとのKPIが設定されたとしても、結局何が正しいデータなのかが不明で、客観的な業績評価が困難な事態に陥ることになります。

 本来、KPIは各部門で比較して会社全体で評価されるべき数値です。自社にとって必要なデータの根拠を統一させ、確実に共有しなければなりません。どのように統一化させるかは、経営陣や管理者を巻き込み、各部門での現状を把握した上で、コンセンサスを得ながら決めましょう。

工場を見える化するための具体的な方法

 

 工場を見える化するためには、複数のステップを踏んでいく必要があります。ここでは特に重要となるふたつの方法を紹介します。

生産設備の数値を取得する

 工場を見える化する目的のひとつは、何らかの障害が起きた際にどのような対応をするのか、判断のスピードアップを図ることにあります。そのためには、生産ラインの設備の稼動から得られる「数値」を収集することが不可欠です。できるだけ正確かつタイムリーに、さまざまな角度から数値データを集めるための取り組みを検討しましょう。たとえば、設備や機械にIoTセンサーやWebカメラを取り付ければ、インターネットを通じて常に新しいデータが手に入ります。データから、発生した不具合の状況を詳細に把握できれば、今後打つべき対策がおのずと見えてくるはずです。

従業員の作業を把握する

 工場で働く多くの従業員がどのように作業しているのか、作業内容や稼働・進捗状況を把握することも、工場の見える化にとって重要です。具体的には、全従業員についてそれぞれの作業時間と作業内容をデータ化し、作業効率について調べます。確認作業に時間や手間をかける必要はなく、日々提出される日報を中心に、作業ごとに作成される報告書などを利用するとよいでしょう。もし、これまで紙ベースのものを使っていたなら、デジタルデータ化することで収集から分析、判断までの時間を大幅に短縮化できます。つまり、工場の見える化には、まず、従来のアナログ的な方法から脱却したデジタル化が必須です。

 工場で働く従業員にとっても、客観的なデータに基づいて自分自身の働きを評価されることにやりがいを感じるほか、モチベーションの向上も期待できるはずです。こうした取り組みを全従業員にもれなく周知し、認識を共有することも忘れないようにしましょう。

工場の見える化を成功させるポイント

 工場の見える化に向けて実際に取り組んでいく際には、いくつかのポイントを意識しておくと成功に近づきやすくなります。特に大切な点は、以下のふたつです。

判断基準を共有・標準化する

 前述したように、KPIの根拠となる基準がまちまちだと、業績を正しく評価できないといったデメリットが発生します。これを避けるため、判断すべき基準を統一し、従業員全員で共有することが重要です。

 一般的には、良品と判断できる製品から逆算してKPIを策定し、各部門で共有する方法が取られています。主観に惑わされることなく、客観的なデータの数値を見られるようにするのが「見える化」の本質です。社内の誰もが共通の認識を持って、適切な判断が可能になるように基準を整備する必要があります。

対応マニュアルを作成して周知徹底する

 工場が稼動する中で、何らかの問題やトラブルが発生する可能性はゼロではありません。ただ、工場を見える化し、収集したさまざまなデータを分析することで、発生した問題の根本的な原因は何かを迅速に突き止めやすくなります。

 原因が究明できれば、解決するために従業員はどう動けばよいのか、何らかの指針が必要になります。具体的には、トラブル時の対応マニュアルを作成することです。これにより、その場しのぎで対応の指示がバラバラになったり、従業員が個々に勝手な判断で動いたりするといった事態は防げます。従業員は、定められたルールに沿いつつ、万一の際には自分自身で考え対処して解決することで、成功体験を積み重ねていけるでしょう。

 加えて、トラブルはある特定の部門だけに起きることではありません。トラブルが起きてしまったとき、社内で状況から原因、対策といった一連の発生事例を共有することが大切です。他部門で、同じようなミスを繰り返さないように注意喚起でき、うまく対処できたナレッジを蓄積できれば、トラブル回避の対策を行えるのがポイントです。工場全体の生産性が上がり、従業員のモチベーションや定着率アップにもつながりやすくなります。

 ものづくりの現場となる工場を見える化するためには、これまでのアナログ的手法や考え方から脱却する意識が大切です。IoTを活用し、さまざまなデータから分析した結果を共有する一連のサイクルを回すことで、生産性の向上につなげましょう。

まとめ

 デジタル技術を用いてビジネスを変革するDXが、各所で進められています。製造業においても、DX化の一環として工場の「見える化」が重視されるようになりました。見える化によって、万一のトラブル時には稼働を止めるべきか、他の対策を打つべきかなどをスムーズに判断できるようになります。見える化が成功すると、限られた人的リソースも最適化できるようになり、コスト削減に役立ちます。各部門でのKPIを統一化して対応マニュアルを作成することも重要なポイントです。

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日本の製造業は人材不足や老朽化した生産設備の維持、技能継承など、さまざまな問題を抱えており、これらに対応するため、生産性の向上が喫緊の課題となっています。NTT東日本は、「デジタル技術」と「セキュアなインフラ環境」によって、工場のデジタル化(スマートファクトリー化)をご支援。製造業の生産性向上をサポートします。

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