2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2023.01.30 (Mon)

ICTで製造業はどのように変わるのか(第36回)

SCMとは? メリット・デメリットやERPとの違いについて解説

 製造業を営む企業が計画通りに生産活動を実行するには、原材料や部品などを供給するサプライチェーンの安定が欠かせません。大量に存在する原材料や部品のうちひとつでも手に入らないだけで、製品の完成は困難になります。

 「SCM(サプライチェーンマネジメント)」とは、サプライチェーン全体の情報を一元管理し、安定的な供給網を確立するための取り組みです。本記事ではこのSCMの概要やメリット・デメリット、成功のためのポイントを解説します。

SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?

 SCMとは「Supply Chain Management(サプライチェーンマネジメント)」の略称で、日本では「供給連鎖管理」と訳されます。

サプライチェーンの概要

 そもそもサプライチェーンとは、原材料や部品を調達・製造し、消費者の元へ届ける供給までの流れのことです。サプライチェーンは自社内で完結している場合もあれば、国外も含む複数企業の協力によって成立している場合もあります。たとえば、A社から仕入れた原材料をB社が部品にし、C社がその部品を使って完成品を仕上げるといったケースです。

 さらに、企業同士をつなげる運送事業者も関わるなど、サプライチェーンは多くの企業が関与し、複雑な関係となっています。

 サプライチェーンのどこか一カ所でも機能しなくなれば、その影響は連鎖的にサプライチェーン全体に拡散し、他企業の生産計画や経営計画までも狂わせる恐れがあります。そこで重要になるのが、SCMです。

SCMとは?

 SCMとは、サプライチェーンを流れるカネ・モノ・情報などのリソースを適切に管理し、生産・供給フロー全体の最適化をめざすマネジメント手法です。具体的な施策は企業ごとに異なりますが、一般的には製品の流通、生産、販売、在庫などの情報をシステム上で管理・分析することで実現します。SCMが適切であれば、企業は余計なコストやリスクを軽減し、消費者へ製品をより早く、確実に届けられるようになります。

製造業においてSCMはなぜ注目されるのか

 今日の製造業でSCMが注目されている理由としては、「経済のグローバル化」と「デジタル技術の進歩」のふたつが主に挙げられます。

経済のグローバル化

 前述の通り、経済がグローバル化した現代サプライチェーンでは外国の企業・工場が加わることも多く、構造は複雑になっています。

 構造が複雑化することは、同時に供給体制の不安定さや不透明さも増大することになります。たとえば、遠い国で起こった地震や感染症の発生が、巡り巡って日本の物流や物価に影響を与える可能性も十分に起こり得ます。

 経済のグローバル化は今後も加速することが予想されますが、サプライチェーンに不安を抱えたままでは、安定的にビジネスを行なうことは困難です。そこでSCMの必要性が強く認識されるようになったというわけです。

デジタル技術の進歩

 国内外を横断する複雑なサプライチェーンを管理するには、膨大な情報をリアルタイムに収集・共有・可視化・分析するための高度なシステムやネットワークが必要です。ひと昔前まではこうした情報管理体制を整えることは困難でしたが、現在のデジタル技術であれば実現可能です。

 グローバル化によるサプライチェーン問題への意識が高まり、さらにデジタル技術の進化によって問題の解決が可能になったことで、SCMは多くの企業の注目を集めるようになりました。

製造業においてSCMを導入するメリットと注意点

 製造業にSCMを導入することで、いくつかのメリットが得られますが、運営するうえで注意すべき点も存在します。

SCMのメリット

 SCMのメリットは、サプライチェーンのリソースを可視化し、物流の安定化や生産性の向上が期待できることです。

 SCMに取り組むことで、企業は生産・供給フロー全体を監視し、すべてのリソースが効率的に利用されているかどうか可視化できます。たとえば、市場を分析したデータに基づいて現在の在庫量や過去の消費量などを可視化すれば、将来の需要予測が立てられます。需要予測によって市場の変化へ的確に対応できれば、必要な時期に必要な在庫が確保できるため、余剰在庫による無駄なコスト負担や、原料不足による生産ラインの停止といったリスクが低減できます。

 SCMによって物流体制の監視や改善ができれば、配送の遅延を回避し、消費者の手元に製品が届くまでの時間を短縮することも可能です。どこにどれだけの人員が必要なのか、人員の最適な配置が可能になるため、従業員の業務負担の軽減や人件費の削減にもつなげられます。

SCMの注意点

 SCMの注意点は、導入コストが高い点と、運用が難しい点です。

 SCMを導入するには、多くの経済的負担、労力、時間がかかるため、企業にとって大規模な投資を必要とします。たとえば、SCMを実行するにはサプライチェーンについて深い知見を有しており、物流や生産体制の全体像を把握して管理調整できる、高度なスキルを持った人材が必要です。

 加えてSCMでは製造、在庫管理、流通など多くのプロセスを管理しなければならないため、もし各部門で不正確な情報共有があった場合、サプライチェーン全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼします。サプライチェーンに外国企業が含まれている場合、この調整作業はなおさら大変になるでしょう。

SCMとERPの違いについて

 SCMと関係の深いものとして「ERP」という概念が挙げられます。ここからはSCPとERPの違いを解説します。

ERPとは

 ERPとは「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」の略称です。ERPは「ヒト・モノ・カネ・情報」といった、企業が有するあらゆる経営資源を統合管理することで、経営を最適化するマネジメント手法です。SCMと同様、ERPもその実現のためにはICTソリューションが必要となり、デジタル上で一切の情報管理を行うことで、資源の管理運用コストを効率化します。一般的なERPソリューションには、会計、在庫、生産計画、顧客情報、受発注などの管理機能が含まれます。

SCMとERPの違い

 SCMとERPの最も大きな違いは、その管理領域です。SCMが対象とするのはサプライチェーンというビジネスにおける特定の分野であるのに対し、ERPが対象とするのは、自社のビジネスのほぼ全領域に渡ります。

 その他の違いとしては、ERPで扱うのが基本的には自社内の情報であるのに対し、SCMの場合はサプライチェーンの特性上、外部の協力会社も含めた情報も対象になります。

 とはいえ、ERPソリューションの中にはサプライチェーン管理も含まれていることがあります。つまり、ERPのほうが、SCMよりも包括的ということになります。よって基本的な理解としては、ERPを実現するための施策のひとつにSCMがあると捉えてもよいでしょう。

SCMに取り組む際の注意点

 続いては、SCMを成功するために重要なポイントを解説します。

全体像を可視化する

 SCMを実現するには、サプライチェーンの全体像を可視化することが大切です。メーカーおよびサプライヤーの全体的な関係構造とその中における自社のポジション、金銭や物の流れ、人員の配置、生産能力、在庫状況など、可視化の対象は多岐に渡ります。

 こうしたさまざまな情報を可視化することで、どこにどのくらいリソースが投じられているかを把握し、そこに潜む無駄や課題を発見して効率的にサプライチェーンの最適化を図ることが可能になります。そのためには、後述するようなデジタル技術を活用して、多種多様な情報をリアルタイムに収集・管理できる情報基盤を構築することが鍵になります。

意思決定プロセスの最適化や社外との連携を図る

 サプライチェーン全体の最適化を図るSCMの実現は、一部門だけの努力だけでは達成できません。SCMの成功には、部門横断的な協力体制を築き、何か問題が生じた際にも混乱せずに対応できる意思決定プロセスを確立しておく必要があります。そのためには、部門を超えた強力な権限が必要になるため、SCMに特化した部門の創設およびマネジメント層による積極的な関与やリーダーシップが重要になるでしょう。

 サプライチェーンが他社との協力によって成り立っている場合、SCMの実現には社内だけでなく、社外との連携も欠かせません。おもにメーカーが主導してサプライヤーと共有できる情報プラットフォームなどを整備し、課題の発見や改善を共に進めていくことが大切です。他社の問題にまで関与するのは、一見すると非効率的に思えるかもしれませんが、SCMを実現するには大局的な観点から推進体制を構築していく必要があります。

災害など有事への備えを徹底する

 サプライチェーンの分断を防ぐためには、平時の環境を改善するだけでなく、有事に対する備えも欠かせません。特に地震や台風などの自然災害が多い日本では、SCMにBCPの観点を盛り込むことが必要です。

 BCPとは「Business Continuity Planning」の略称で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。BCPは自然災害や財務的危機、システムトラブル、社内の不祥事など、事業継続の障害となるあらゆるリスクに備えて予防策や復旧策を策定する取り組みです。

 つまり、「何らかの事情でサプライチェーンが機能しなくなる」という状況もSCMの全体計画の中で想定しておき、その場合の損害や事業への影響範囲なども見積もった上で対策を練ることが重要になります。たとえば、万一の事態に備えて、ひとつのサプライヤーに依存しないように仕入れ先を分散するというのも、BCPの一環です。

支えるシステム環境の導入も検討しよう

 

 ここまで何度も触れてきましたが、SCMを実現するにはデジタル技術の活用が重要になります。サプライチェーン全体の最適化を図るには、そこに流れるカネ・モノ・情報を可視化し、どこで何が起きているのかをリアルタイムに把握できる環境が必要だからです。

 SCMの効果のひとつには在庫管理の最適化が挙げられますが、それを実現するには現状の在庫量はもちろん、過去のデータや将来の生産計画、市場需要などを把握・分析することが必要不可欠です。常に更新されるそうした膨大な情報を分析するのは、手作業だけでは到底追いつきません。デジタル技術の活用が必要になります。

 SCMに役立つツールとしては、上記でも紹介したERPソリューションが第一に挙げられます。繰り返しになりますが、ERPには会計管理、在庫管理、生産管理、受発注管理など、SCMに必要とされる「カネ・モノ・情報」を可視化するための機能が一通り揃っているからです。

 もちろん、「在庫関係は在庫管理システム」、「会計関係は会計システム」というように特化したソリューションを利用するのもひとつの手法ですが、サプライチェーン全体の最適化というSCMの目的を達成するには、情報がサイロ化しないように、システムやデータを連携させるためのプラットフォームの構築が必要となります。

 SCMを実現するために、どのようなシステムが最適なのかは、企業によって異なります。しかし、デジタル技術を活用して、サプライチェーン全体の状況をリアルタイムに可視化する重要性は変わりません。

 製造業でSCMを適切に行うことは、事業継続のために重要です。自社はもちろん、他社を含めたサプライチェーン全体の情報をシステマティックに一元管理することで、安定した経営が可能になります。

まとめ

 高いレベルでSCMを実現することで、企業はサプライチェーンを安定的かつ効率的に機能でき、遅延の少ないロジスティクス、余剰も欠品もない最適な在庫管理、コスト効率に優れた生産体制が実現できます。

 サプライチェーン全体の情報を収集し、一元管理するためには、デジタライズされた各種ソリューションの活用が不可欠です。

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