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2023.01.30 (Mon)

ICTで製造業はどのように変わるのか(第37回)

製造業における働き方改革とは? メリットや成功のポイントを解説

 働き方改革の推進が求められる業界は多岐にわたりますが、なかでも製造業は、人材不足や就業者の高齢化の加速の観点から、さらに推進を進めていく必要があります。本記事では、働き改革の概要から、製造業で働き方改革が求められる理由、進める方向性や成功させるために押さえるべきポイントについて掘り下げていきます。

働き方改革とは

 働き方改革とは、働く人が個々の事情に応じて多様な働き方を選択できる環境を実現し、より良い将来の展望をもつことをめざす取り組みのことです。少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少や、育児や介護との両立といった働く人のニーズの多様化といった課題を解決するための働き方となります。

 働き方改革実現に向けて、政府の法整備も進んでいます。2018年7月には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」、いわゆる「働き方改革関連法」と呼ばれる労働法改正が成立しました。その後2019年4月には働き方改革関連法が順次施行され、時間外労働の上限、有給取得の義務化、雇用における公正な待遇の確保などが定められました。

働き方改革の取り組み内容とは

 働き方改革を実現するための取り組みにはさまざまなものがありますが、特に企業が取り組む対策としては、以下の7点が挙げられます。

長時間労働の削減

 仕事と生活の調和を図り、ワークライフバランスの充実した労働環境を整備するためには、長時間労働の是正に向けた取り組みが不可欠です。近年、過労死や心身の疾患を招く要因となる過重労働が問題視されており、長時間労働の削減は働き方改革を推進する上で非常に重要な課題となっています。上限規制を超えた長時間労働が常態化している事業所に対しては、労働基準監督署によって監督指導が実施されます。

雇用形態を問わない公正な待遇の確保

 働き方改革の推進における重要課題のひとつは、雇用者の待遇差解消です。具体的にいえば、正規労働者と非正規労働者の雇用格差の是正、公正かつ公平な待遇を確立することです。

 非正規労働者は正規労働者と比較して、福利厚生や休暇制度、雇用の安定性などの水準が低い傾向にあります。このような現状を打破するために、一定期間勤務した場合の正社員登用や、同じ仕事をしている場合は同じ賃金が支払われるようにするなど、待遇の見直しが進められています。不平等な待遇は、労働者の労働意欲にも影響するため、企業側が待遇を整えることは非常に重要です。

柔軟に働ける環境の整備

 働き方改革の実現を推進する上で欠かせないのが、多様かつ柔軟な働き方ができる環境の整備です。実現のためにはテレワーク制度の採用が不可欠であり、リモートでも出勤時と同様に働けるように、業務プロセスの見直し、システムの環境整備が必要となります。デジタル技術の活用によって、時間や場所に縛られないワークスタイルが確立されれば、パートタイムでの勤務、副業や兼業での勤務といったような、従来の枠組みにとらわれない柔軟な働き方が可能となります。

ダイバーシティの推進

 ダイバーシティとは、組織の中で国籍や性別、年代などが異なる人々が存在し、お互いを尊重し共存していくという多様化する状態を示します。

 国内では人口の減少や高齢化などが予測されており、多くの分野で労働力不足が深刻化することが懸念されています。このような時代のなかで企業が発展していくためには、多様な人材を受け入れ、その特性を活用するダイバーシティマネジメントが求められます。ダイバーシティを推進することで、介護や育児と仕事を両立する女性や、外国人が活躍できる組織体制の構築につなげられます。

賃金の引き上げや労働生産性の向上

 労働者の賃金が引き上げられれば、生活に余裕ができ、働くモチベーションにもなるでしょう。しかし中小企業の場合は、賃金の引き上げをしたいものの、その余裕がないケースも多いかもしれません。

 厚生労働省では、中小企業が生産性向上のための設備投資を行なったうえで、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を引き上げた際、設備投資の経費の一部を助成する制度を行っています。賃金引き上げの際は、このような支援を活用するのもひとつの方法です。

再就職の支援や人材育成

 国内の総人口は2008年の1億2,808万人を頂点に、下降の一途を辿っていくことが予測されています。人口比における65歳以上の高齢者率は2022年9月現在で29.1%となっており、2022年時点で他の国と比較しても、世界で最も高い水準となっています。

 こうした社会的背景のなかで労働力を確保するためには、再就職の支援や人材育成の強化といった施策が必要となるでしょう。退職後も再就職を希望する人に対して支援をする、雇用の際の年齢制限を緩やかにする、もしくは人材育成のための環境を整えるなどの方法で、労働力を確保していくことが大切です。

ハラスメントを防止する対策

 働き方改革の推進における重要課題のひとつは、誰もが働きやすい組織風土や企業文化の育成です。新しい時代に適した労働環境を整備するためには、職場で起こり得るさまざまなハラスメントを防止する必要があります。外見に関する言動で相手に不快感を与える、暴言を吐くといったことはもちろん、上司が部下に対して無理な要求をするといったパワーハラスメントも、防止すべき事項となります。

製造業が抱える課題

 働き方改革は、製造業でも推進する必要があります。

 かつて日本は「ものづくり大国」と呼ばれ、資源に乏しい国でありながら「製造」と「貿易」によって経済成長を遂げ、約40年にわたり世界第2位のGDPを保持していました。ところが2010年に中国に追い越され、2011年には貿易収支が赤字となり、主力の製造業にも低迷の兆しが現れはじめました。

 製造業が低迷する主な理由としては、以下の4点が考えられます。

労働人口の減少による人手不足

 国内では、少子高齢化の影響から労働力の確保が困難になっています。特に顕著なのが、製造業です。経済産業省の「令和元年度ものづくり基盤技術の振興施策」によると、製造業を営む大企業、中小企業ともに4割強が「人手不足」を経営課題として挙げています。同様に「人材育成・能力開発が進まない」についても、4割の企業が回答しています。

技術の承継が進んでいない

 技術の承継が進んでいない点も、製造業にとって大きな課題です。製造業では就業者が高齢化傾向にある一方で、若年層の労働者が減少しているため、後継者不足が深刻な問題となっています。そのため、長年蓄積された熟練工の技術や知識の承継に課題があります。

IT化など、環境整備が進んでいない

 経済産業省のDXレポートによると、老朽化したメインフレームや、ブラックボックス化しているシステムを抱えている企業が多くあることが明らかになっています。DXレポートでは、もし企業が老朽化したシステムの保有を続けた場合は、2025年以降最大12兆円規模の経済的損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしています。

 特に中小企業は、予算の問題からICTへの投資が難しく、大企業との差が広がっているという傾向もあります。

競争が激化している

 現代は情報通信技術の進歩に伴い、市場のグローバル化が急速に拡大しており、国際的な競争性が激化の一途を辿っています。このような中、日本企業ではデジタル化が進まず、競争力が低下しつつあることが問題となっています。市場は不確実性を増していることもあり、グローバルなマーケットで競争に勝ち抜くためには、データをスピーディーに解析し、ビジネスに活かしていくことが求められています。

製造業における働き方改革のメリット

 製造業で働き方改革を推進することは、さまざまなメリットを生みます。従業員側のメリットとしては、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方ができるようになることが挙げられます。ここでは、働き方改革によりもたらされる企業側のメリットについて、主なものを5つに分けて解説します。

労働時間の見直しによる生産性の向上

 働き方改革関連法の施行によって、時間外労働に上限規制が設けられたため、時間内に業務が完遂できるよう、既存のプロセスを見直し、生産性を向上する必要が出てきました。

 生産性を向上させる手法としては、システムによる業務効率化の実現が考えられます。加えて、労働者がより集中して業務を行えるような環境をつくり、生産性の向上をめざしていくことも必要でしょう。

生産性の向上によって人件費の削減が期待できる

 既存の業務プロセスを見直し、効率化を図ることで、人件費の削減も期待できます。たとえば、AIやIoTといった技術の導入によりスマートファクトリーを構築できれば、生産設備の不具合検知や在庫管理、発注といった業務の省人化・自動化が可能になり、ひいては人件費の削減につながります。

従業員のやる気アップに貢献できる

 組織全体における生産性を向上するためには、いかにして従業員のパフォーマンスを最大化するかが重要です。働き方改革によりワークライフバランスの実現や公正な待遇の確立などに取り組むことで、従業員の労働意欲向上が期待できます。その結果、企業への愛着度の向上も期待できるでしょう。企業への愛着度が高まることで、従業員と企業のエンゲージメントも高まり、従業員の離職が抑えられるというポジティブなサイクルとなることも考えられます。

従業員の健康面をサポートできる

 働き方改革の推進によって、従業員の仕事とプライベートのバランスが取れるようになれば、従業員の健康状態が良好に保てる可能性は高まるでしょう。

 過重労働は従業員のパフォーマンス低下を招き、離職率を高めます。一方でワークライフバランスの整った環境であれば、十分な休養を取り、趣味の充実をすることが可能となります。

人材を獲得しやすくなる

 製造業の勤務体制は、昼夜の二交代制勤務や、8時間ごとの三交代制勤務が多く、体力的に“キツイ”というイメージから、敬遠される傾向にありました。しかし働き方改革を推進することで、“キツイ”というイメージを払拭することが可能になります。技術を身につけられ、ライフスタイルにあわせて働ける、という柔軟な働き方をアピールすれば、人材の確保という面でも良い効果が期待できます。人材不足や就業者の高齢化に悩む製造業において、人材を獲得しやすくなるという点は、大きなメリットです。

製造業の働き方改革に成功するポイント

 製造業で働き方改革を成功へと導くためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。なかでも重要度の高い、3つの要素について取り上げます。

自社の課題や現状を洗い出す

 働き方改革に即した労働環境を整備するためには、まずは自社の現状の働き方を把握する必要があります。就業規則に則った労働時間や有給取得のルールが守られているか、守られていない場合は、是正する取り組みが必要になります。業務における作業時間や生産性が可視化できるようなシステムを導入すれば、問題の洗い出しに有用でしょう。

ペーパーレス化を進める、AIやIoTを活用する

 ペーパーレス化は、時間や場所にとらわれない働き方を実現するための働き方改革に欠かせない仕組みといえます。各種申請、稟議などを電子化すれば、紙資源の節約になるだけでなく、書類をオンライン上で管理することにより、検索性が高まります。

 さらにAIやIoTを活用すれば、大量のデータの収集、自動解析、定型業務の自動化も可能になります。作業時間の短縮、効率化が実現できるため、生産性の向上や人的資源の有効活用が見込めます。

従業員が柔軟に働ける仕組みにする

 現代はテクノロジーの進歩と発展に伴って、業務プロセスの省人化が加速しており、製造業においてもデジタル技術の戦略的活用が重要な経営課題となっています。しかし、どれだけテクノロジーが発達しても、ビジネスの土台にあるのは人と人との関係です。そのため、企業が持続的に発展していくためには、従業員が柔軟に働ける労働環境の構築が欠かせません。フレックスタイム制や短時間労働、テレワーク制度といった仕組みを整備し、多様なワークスタイルに対応できる組織体制の構築が、働き方改革を実現する第一歩といえるでしょう。

まとめ

 働き方改革によって、長時間労働の是正や公平な待遇の確保、柔軟な働き方が実現できます。特に人材不足や就業者の高齢化、若年層の入職者減少といった課題を抱える製造業にとっては、利点の多い施策といえるでしょう。

 働き方改革実現のためには、デジタル技術を活用した製造現場の業務効率化が必要です。たとえば、AIやIoTといった技術を戦略的に活用できるスマートファクトリー化を推進すれば、業務のさらなる効率化が見込めます。製造業へのデジタル技術の導入については、NTT東日本で幅広い支援が可能です。より詳しい情報は、下記Webページ、ダウンロードできる資料をご覧ください。

製造業のスマートファクトリー化をデジタル技術から支援

日本の製造業は人材不足や老朽化した生産設備の維持、技能継承など、さまざまな問題を抱えており、これらに対応するため、生産性の向上が喫緊の課題となっています。NTT東日本は、「デジタル技術」と「セキュアなインフラ環境」によって、工場のデジタル化(スマートファクトリー化)をご支援。製造業の生産性向上をサポートします。

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