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2023.01.30 (Mon)

ICTで製造業はどのように変わるのか(第15回)

工場の改善アイデア・事例5選! 業務改善を成功させるコツや実施手順も紹介

 デジタル活用による技術革新で、製造業の企業間競争はますます激化しています。この競争を生き残るには、業務効率化による生産性の向上が欠かせません。日本の工場では、実際にどのような施策が行われているのでしょうか。

 本記事では製造業の工場における、業務改善の具体的な事例をご紹介します。改善策による効果を最大限化するコツや、具体的な実施手順についても解説します。工場の業務改善や生産性向上に関心のある方は、ぜひご覧ください。

工場が直面する課題

 多くの製造業が抱える主な課題はふたつあります。ひとつは人材不足です。少子化により日本の労働力人口は減少しつつあり、どの業界も人材の確保は困難になっています。

 厚生労働省が発表した「令和3年 労働力調査(基本集計)平均結果の概要」の「主な産業別就業者数・雇用者数の推移」を見ると、製造業の2021年の就業者数は1037万人で、前年の1045万人より約8万人減少しています。前年より22 万人減った宿泊業・飲食サービス業に比べれば減少は緩やかなものの、決して楽観視できる状況ではありません。

 もうひとつの課題は、世界に比べデジタル活用が進んでいないことです。「令和4年版 情報通信白書」における「世界と日本のICT市場規模(支出額)の推移」を見比べると、2021年の世界のICT市場規模は、465.2兆円。前年比で12.5%増加しているのに対し、日本の市場規模は13兆3,300億円(予測値)と、前年比でわずか3%程度の増加にとどまっています。

 テレワークの導入などで、日本でも多くの企業でデジタル活用が進んでいますが、設備投資する余裕がない企業も一定数存在しているというのが現状です。

工場の改善アイデアと具体的な取り組み事例

 工場の業務を改善するため、企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは改善アイデア事例を5つご紹介します。

[その1] 5Sを定着させる

 「5S」とは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「躾(しつけ)」のことです。すべてSから始まることからこう呼ばれています。5Sは工場の管理・改善における基本的な活動で、自動車メーカーのトヨタは、5Sの徹底により職場環境の改善につなげています。以下にそれぞれのSについてご紹介します。

整理・整頓

 物や書類が雑然としている職場は、探し物を見付けるまでに時間がかかり、業務効率が悪くなります。整理・整頓は職場環境を改善し、業務を効率化するうえで重要です。

 整理とは、必要なものと不要なものを分類し、不要なものを処分することです。整理には作業スペースの確保や物を探す時間の削減など、さまざまなメリットがあります。

 整頓の工夫としては、共用物や書類の定位置化が挙げられます。加えて、物の名前を書いたラベルを貼る、ラベルや箱で色分けする、棚や箱に入っている物の写真を貼るなどすれば、位置がわかりやすくなります。

清掃・清潔

 清掃を行い、職場環境を清潔に保つことも大切です。掃除の行き届いていない不潔な職場は機械・設備の不具合や故障、不良品の発生につながるだけでなく、従業員のケガや健康被害が発生する可能性もあります。

 清掃は当番を決め、できれば毎日行います。掃除の時間や担当場所、点検項目などを決めてルール化しておくとよいでしょう。清掃のルールや目標、基準などを可視化することで、従業員が認識しやすくなります。

 清掃を徹底し、工場内の環境を清潔に保つことで、機械の性能維持や不良品の防止、従業員の安全・健康の確保につながります。

 躾とは4S(整理・整頓・清掃・清潔)が徹底して守られるために、ルールづくりや従業員への教育、職場環境の整備などを行うことを示します。

 せっかくつくったルールも、適切に実行されなければ意味がありません。企業は従業員が主体的に行動できるよう、指導や教育を行いましょう。PDCAサイクルによる評価と改善を繰り返すことで、よりよい職場環境が期待できます。

[その2]工場内の環境を整える

 従業員が作業しやすいように工場内の環境を整えることも、業務改善のためには重要です。

 株式会社イマオコーポレーションでは、加工機械の近くに置かれた作業台の天板が低くて小さいため、物があまり置けず従業員の負担も大きいことが課題となっていました。そこで広い天板に交換し、位置も高くしたところ、従業員の負担が軽減しただけでなく、備品整理もしやすくなり、作業効率が向上しました。

 このように、少しの工夫で作業効率が向上する場合があります。常に改善の余地がないか、工場内に目を配ることが必要です。

[その3]指導方法を変える

 従業員が作業を覚えるのに時間がかかったり、ミスが減らない場合は、指導方法を変えるのもひとつの方法です。

 前述のイマオコーポレーションは、新入社員への指導を口頭で行っていましたが、作業効率が向上しませんでした。

 そこで口頭説明をなくし、作業工程のチェックシートを作成しました。一連の工程が可視化されたことで理解しやすくなり、ミスや不具合も減少しました。

 「技術は見て覚えるもの」という価値観が主流だった時代もありました。しかし現代はイマオコーポレーションのように、誰が見ても技術を理解し、習得できるように作業をマニュアル化する工場が増えています。

[その4]作業を根本から見直す

 作業工程には、根拠のないこだわりやクセによって、ムダな工程が残っていることも少なくありません。作業工程を見直し、ムダな工程を省く努力も必要です。

 トヨタ生産方式では「7つのムダ」が挙げられています。具体的には加工、在庫、造りすぎ、手待ち、動作、運搬、不良・手直しに関するムダです。ムダを極力省くことで、コスト削減や生産性の向上につながります。

 たとえば、「造りすぎ」のムダをなくすためには、受注生産の実施や生産管理の徹底などが挙げられます。また「運搬」のムダをなくすには、従業員や設備の配置を見直して移動距離を短くすることなどが有効です。

[その5]ICTツールを導入する

 デジタル活用がビジネスの世界で大きな役割を果たす昨今、ICTツールの導入は業務効率化を実現するうえで欠かせません。製造業でもさまざまなシーンで、ICTツールの導入が進んでいます。

 深絞り・プレス加工業を営む株式会社野口製作所では、製品の不具合の情報共有にExcelを使っていました。しかし入力作業に時間がかかるうえ、情報が共有しにくいという課題がありました。そこで情報を一元管理できるICTツールを導入したところ、従業員の負担も減り、共有できる情報も増えました。

業務改善アイデアの効果を最大化するコツ

 業務改善アイデアを実現するとき、効果を最大限に引き出すためには、どのような心がけが必要なのでしょうか。以下に3つのコツを紹介します。

目的意識をもって取り組む

 業務改善アイデアを実現する目的は、生産性の向上です。目的意識をもたず闇雲にアイデアを実行しても、うまくいかないことが多いでしょう。

 他社で成功した業務改善アイデアが、自社でも同様の成果が得られるとは限りません。業務改善アイデアは数ではなく質を重視し、自社の現状での課題は何か、それを克服するにはどのような改善策が必要かをよく検討しましょう。そのうえで得られる成果を具体的にイメージしながら、実行に移すことが大切です。

現場の声を反映させる

 管理者や経営者などが立案した業務改善アイデアは、現場の状況に即していない場合があります。業務改善を実施する際は、現場の声を反映させることも大切です。従業員の声を聞くことにより、管理者が見えていない現場での細かな課題も業務改善アイデアに反映できます。

 業務改善アイデアを実行する際は、最初から大きな目的を掲げたり、対象範囲を広げすぎると途中で計画が頓挫しやすくなります。すぐに実行に移せる身近な部分から改善を始め、少しずつ対象範囲を広げましょう。小さな改善を積み重ねることで社内の理解も得やすくなります。

業務負荷が増えすぎていないか確認する

 業務改善アイデアを実現するために、現場の負担が増える場合は注意が必要です。たとえばパソコンに不慣れな人が多い職場でICTツールを導入すると、ICTツールの習熟が負担となり、モチベーションが低下しかねません。

 一時的に負担が増えても、最終的にコスト削減やミス低減につながるのであれば問題ありません。しかし現場の負担が増えすぎて従業員が疲弊している場合は、モチベーションの低下が業務改善に対するネガティブな感情を引き起こす可能性があります。別の方法がないか検討する必要があるでしょう。

工場の業務改善を実施する手順

 業務改善はアイデアを慎重に検討してから実施することが大切です。業務改善を実施する際の具体的な手順を紹介します。

現状の課題を把握する

 業務改善を実施する第1ステップとして、まずは現場でどのような課題を抱えているのか、可視化する必要があります。作業工程にムダがないか、連絡系統はスムーズか、労働環境は適切かなど、現場の声もヒアリングしながら、改善すべきポイントをピックアップしましょう。

解決したい課題に優先順位をつける

 製造業の業務は幅広く、改善点が広範囲におよぶ可能性があります。すべてを一度に行おうとすると現場の負担が増え、通常業務に支障をきたす可能性があります。

 改善点が広範囲になる場合は、まず早急に取りかかるべきところはどこなのか、優先順位をつけることが大切です。そのうえで予算や時間、人員などを考慮しながら、段階的に改善を進めるとよいでしょう。さらに改善を実施する際は、期限を設けて具体的な行動計画を立てると、効率的に進められます。

改善アイデアの検討・実施をする

 課題が出そろい、優先順位をつけたら、次は課題解決するためのアイデアを出し合います。どのぐらいのコストや時間がかかるのか、現場の負担はどの程度かなど、ひとつひとつのアイデアについて、メリット・デメリットをピックアップしましょう。そのうえでどの改善案が最適か、慎重に検討します。

 アイデアが固まれば、いよいよ改善策を実施します。現場に混乱を招かないよう、従業員への丁寧な事前説明も必要です。実施にあたっては、舵を取る担当者も決めておきましょう。担当者は行動計画に従って施策を実行し、どのような効果があったか報告する役割も担います。

効果測定を行い、再度改善に取り組む

 長期的に高い効果を得るためには、単発の実施で終わらせるのではなく、業務改善を継続することが重要です。一定期間ごとに効果測定を行い、業務改善が進んでいない場合は原因を検証しましょう。

 たとえば備品の位置変更など、アイデアの段階では良案であっても、実行してみるとかえって使いづらくなる場合もあります。効果測定には現場の声も反映させるようにしましょう。

 順調に進んでいる場合もさらに改善の余地がないか、施策のブラッシュアップを行う必要があります。さらに余裕があれば、優先順位で後回しにしていた改善点に着手してもよいでしょう。改善が一時的なものではなく、日常的に行われることで生産性は向上し、職場全体の改善につながるでしょう。

まとめ

 製造業で生産性を向上させるためには、5Sの定着や工場内の環境整備、指導方法の変更などが有効です。改善策の実施にあたっては、他企業が成功している方法をそのまま自社で運用するのではなく、自社の課題を洗い出したうえで、ICTツールの導入を含めた最も効果の高い方法を選択しましょう。

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