海外1,071店舗という国内の834店舗を上回る販売ネットワークをもつファストファッションブランドがユニクロです(2017年5月末時点)。山口県宇部市という、瀬戸内海に面した小さな街のメンズショップからスタートし、今や「世界のユニクロ」へと成長しました。
ユニクロが国内で成長した過程と、海外展開を成功させた戦略から、企業を成長させる秘訣を読み解いていきます。
「UNIQLO」のロゴは書き間違いから生まれた
「ユニクロ」という名称が、その前身である「ユニーク・クロージング・ウェアハウス」の略称であることは、知っている方も多いかもしれません。1988年に香港支社を設立した際に、会社登記の書類に「UNI-CLO」を「UNI-QLO」と書き間違えて登記し、以降「UNI-QLO」というブランド名が正式に使われるようになったのも、有名な話です。
1990年代のユニクロといえば、今のようにプライベートブランド製品を取り揃えるのではなく、ナイキやリーボックなどといった、スポーツブランド製品を数百円台で販売するような店舗でした。
1997年ごろから徐々にプライベートブランド製品の比率を増やしていき、1999年には「フリース」が大ヒットしたことで、売上は約4倍にと急増しました。
当時ユニクロが目指した業務形態は、海外のファッションブランド業界で提唱されていたSPA(製造小売業)です。生産と小売りが直結されることで中間マージンを排除した業務形態により、お客さまに良質で低価格なファッションを提供することを目標としていました。
日本ではまだ目新しかったSPAを取り入れたのと、当時は有り得なかった「接客しないファッションブランド」を確立することで、ユニクロは国内の成功を収めたといえるでしょう。「接客しない」とは、スタッフからお客さまに声をかけるのではなく、お客さまから声をかけられたら接客するというスタイルです。
2006年に本格化した海外事業への挑戦
国内で成功を収めたユニクロが海外戦略を本格的にスタートさせたのは、2006年4月からです。すでに海外への出店を始めていましたが、当時の海外事業担当執行役員であったスティーブン・デイカス氏は、「ユニクロ事業の海外戦略~世界No.1のカジュアルブランドになるために~」という資料で、プロジェクトについて具体的に述べています。
そこでは、「2010年までに売上高1,000億円、経常利益100億円を目指す」と、正式に発表しています。その戦略としては、「国内チームを最大限に活用」「成功要素の世界展開」「強い現地チームを作る」「ブランド力を高める」の4つです。
「国内チームを最大限に活用」とは、海外と国内では別事業という社内の考えを捨て、グローバル展開している1つの事業という視点に切り替え、国内チームの優秀な人材を海外事業でも活用するというものです。
「成功要素の世界展開」は、国内で成功した良質で低価格な商品、接客しないスタイル、ブランドイメージを体感できる店舗を、海外で展開するというものになります。日本で成功したモデルで世界市場を開拓していくという戦略方針です。
「強い現地チームを作る」は、その国の市場や文化を理解している現地に強いスタッフを増強して、海外子会社の経営陣を強化するという施策になります。当時、韓国においてロッテとパートナー提携をすることで成功したことが手本となっています。
「ブランド力を高める」は認知度を高めるために、世界の主要都市にブランドイメージを具現化した旗艦店を出店することです。
こうした海外戦略を基盤に、2006年11月には旗艦店となる「ユニクロ SOHO NY店」を出店しています。2007年には韓国初の大型店舗である「ユニクロ 明洞店」、同年にフランス初となる「ユニクロ パリ・ラ・デファンス店」と、続々と海外店舗を出店しています。
現在では、その戦略によって世界1,071店舗を展開し、2017年8月期の売上収益は18,500億円(前期比3.8%増)と、成長を遂げています。
海外で戦うための基盤を日本で完成させていた
海外戦略で成功した理由として、ユニクロは国内でSPAと「接客しない」を先行したファッションブランドだったため、海外に進出するための基盤がすでに整えられていたからと考えられます。
海外ファッションブランドと国内ファッションブランドの大きな違いは、「接客しないこと」です。ジャーナルスタンダードやユナイテッドアローズなど、日本の代表的なファッションブランドでは入店するとスタッフから声をかけて接客されますが、ZARAやH&M、ユニクロといったファストファッションと呼ばれるようなブランドでは、スタッフから声をかけることはありません。
しかしそれだけでは海外事業を成功させることはできません。ユニクロが海外戦略で成功した最大のポイントは、接客しないスタイルに「日本人ならではの細やかな気配り」を加えた点です。
たとえば、袋詰めした後にテープで封をする際に、テープの端に折り目を付けて開けやすくする。クレジット決済で署名する際に、ペンを相手側に持ち替えて渡す。クレジット決済後にお客さまの名前を確認し、「〇〇様、お買い上げありがとうございます」と声をかける。スタッフは微笑みを絶やさない。こうした細かい気配りは、日本人ならではの感覚だから提供できるサービスといえます。
ユニクロが海外戦略で成功した秘訣は、日本人ならではの「おもてなし」を海外店舗に浸透させたことだったのではないでしょうか。
【関連記事】
https://zuuonline.com/archives/13204
http://www.fastretailing.com/jp/about/photolibrary/uniqlointernational.html
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