奇抜なPR戦略や他業種とのコラボレーションで、地方銀行ながら本店のある県以外での認知度も高いのが、岐阜県大垣市に拠点を持つ大垣共立銀行です。同行は「日経金融機関ランキング」という調査の顧客満足度ランキングでトップ10に入っています。
その理由は、同行が実施した現役女性行員によるアイドルのようなユニットを使ったPR戦略といった奇抜さだけではありません。その裏にある「発想力」と「徹底した顧客目線」が評価されたからといえるでしょう。
日経金融機関ランキングでトップ10に入る地銀
日本経済新聞が毎年実施している「日経金融機関ランキング」の顧客満足度ランキングという調査で、大垣共立銀行は近年、トップ10に連続で入るようになっています。2017年1月に実施した調査では、三井住友銀行や三菱東京UFJ銀行などといったメガバンクをしのぐ6位となっています。
地方銀行の多くは、長期的に続く金融緩和によるゼロ金利や、ICTを利用したフィンテックや仮想通貨などといった金融業界の急速な変化に翻弄されています。さらに基盤である地方都市は、人口減少や少子高齢化が大都市圏以上に進行しているのです。
それらにより各行は、経営状態が圧迫されている、あるいは新たな施策を打ち出せずにいるといった課題を抱えています。2016年4月には横浜銀行と東日本銀行が経営統合、また金融庁が業績の悪化している地方銀行へ立入検査を行うといった動きがニュースとなりました。
そんな経営環境の変化は、大垣共立銀行の商業圏である岐阜県周辺でも進行しています。地方銀行を苦しめる経営環境のなかで、大垣共立銀行が存在感を大きくした原動力は、「型破りな発想力」と「顧客目線のサービスの徹底」です。銀行界の常識を覆すサービス・商品とPR戦略により、同行は顧客満足度を高めて、その存在を知られるようになりました。
金融界の常識を覆す「型破りな発想力」で
大垣共立銀行は、銀行名の略称である「OKB」(Ogaki Kyoritsu Bankの頭文字)によって自行のブランド化を進めていました。その略称をPRする戦略の一環として度肝を抜いたのが、アイドルを模したような「OKB45」というユニットの存在でした。
OKB45とは、大垣共立銀行の現役女性行員45人によるユニットです。ポスターやCMで大々的にPRされた結果、テレビや雑誌などの取材が相次ぎました。途中で現役女性行員からプロのモデルにメンバーが変わりましたが、大垣共立銀行の知名度アップに大きく貢献しました。
OKBによるブランド化は女性行員のユニットだけに留まらず、他業種とのコラボレーションにも展開します。銀行は他業種に事業展開することが法的に禁じられていますが、大垣共立銀行では取引先に命名権料を支払う方法で、地元商店のチョコレートや地元企業が運営する農場の米などに「OKB」をブランド名として入れました。
また、JR東海道本線・大垣駅の駅前商店街通りを「OKBストリート」を名付けるなどにより、「OKB」は大垣共立銀行という行名より高い認知度を獲得するまでになりました。地域と密着したコラボレーションにより、自行だけが型破りというだけはなく、地域の話題作りともなったのです。
この型破りな発想は、ATMや店舗の形態といった本業の部分でも随所に見られます。ATMでは利用の際に、テレビゲームで勝利すると、少額の現金が当たる、あるいは手数料免除などといった特典を設けました。さらに店舗では、車に乗ったまま利用できる「ドライブスルーATM」を導入するなど、同行は地方銀行業界初の試みに数多く取り組んでいます。
型破りの背後にある顧客目線
大垣共立銀行が型破りな取り組みを続ける理由は、地域の金融機関から課題解決型「総合サービス業」へとシフトしたいという狙いがありました。型破りであること自体が目的なのではなく、大垣市を中心とした顧客目線に立つための手段として、数々のPR戦略や顧客サービスがあるという考え方です。お客さまが訪れるのを待つのではなく、「訪れてもらうには」という目線で、サービスや商品を考えるようにしています。ATMの現金当選や手数料免除、ドライブスルーは、そんな視点から始まったそうです。
その他にも、女性行員のアイデアから実現したローンがあります。「シングルマザー応援ローンTetote」「離婚関連専用ローン“Re”–f-」「不妊治療関連ローンFutari・de(フタリ・デ)」「女性のためのメモリアルローンmatinee(マチネ)」などといった女性向けローンで、女性の転機を支えるものになっています。住宅ローン、自動車ローン、カードローンといった今までの銀行商品にはない視点が、お客さまの満足度を高めているのでしょう。
また「手のひら認証ATMピピット」は、その着眼点から話題を呼びました。東日本大震災によってキャッシュカードや通帳を紛失し、現金を引出せないで困っている利用者がいるという報道に、同行は注目したのです。そして東日本大震災の翌年2012年から、カードや通帳などがなくとも、手のひらをかざす静脈認証だけでATMが利用できるように変更したことが、時事性と相まって話題となったのです。
紹介してきたように大垣共立銀行は、奇抜なPR戦略だけではなく、顧客目線に立った攻めの商品やサービスによって、顧客満足度を向上させたといえます。
地方銀行業界が大きな転換期を迎える中で、「お客さまにどのような価値を提供するのか」というビジネスの原点に立ち返って考えているからこそ話題となり、地元市民の心を掴むことになっているのでしょう。同行は今も取締役頭取のあいさつで「お客さま満足度・地域貢献度No.1を目指します」と述べています。
【関連記事】
http://toyokeizai.net/articles/-/71102
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGC27H0O_Y7A120C1NN1000/
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