即席麺業界で一目置かれる存在のエースコック。常識にとらわれない商品開発で、売り上げを伸ばし続けています。二代目社長の村岡寛氏は、常に社員に「やりすぎぐらいがちょうどいい」と言っているとのこと。そんなエースコックが、斬新な商品を生み出し続ける秘密を探ります。
常識破りの商品が次々と誕生
エースコックの看板商品のひとつである「ワンタン麺」。実は、1963年に誕生したロングセラー商品です。当時まだなかった、即席麺にワンタンの皮を入れる斬新なアイデアで、エースコックの名を世間に広めました。その他、業界初の「カレー味カップ麺」や「力うどん」など個性的な商品を次々と世に送り、着実に業績を伸ばしていきます。
1980年代に入り売上が低迷しますが、日本初の大盛りカップ麺「スーパーカップ」を誕生させます。「スーパーカップ」は、発売から半年で1億食、160億円の売上という前代未聞の大ヒットとなり、現在まで続く人気商品となりました。
2000年には、健康ブームにより「カップ麺は身体に悪そう」とのマイナスイメージが広がるなか、「スープはるさめ」を発表。それまでのカップ麺のイメージを覆すことに成功しました。低カロリーの「スープはるさめ」はダイエットに敏感な女性に受け、カップスープ部門での売上が11年連続1位という看板商品へと成長したのです。
「とにかくやってみよう!精神」でチャレンジ
これらの独創的な商品を生み出す秘密は、とにかくやってみよう! というチャレンジ精神。時代の変化を先読みし、挑戦する気持ちがヒット商品の開発につながっているようです。
同社が年間に投入するアイテムは、リニューアルを含めて150以上もあるといいます。会議では「真剣にふざける!」を合言葉に、どんなに変な提案だと思っても否定してはいけないというルールがあるとのこと。日夜、新しい味や食感を探っています。
ベトナムでの成功
ところで現在、同社の売上全体の約半分は海外が占めているとのこと。ベトナムの即席麺市場ではシェア6割を占めています。ベトナムではPOSシステムも導入していないところが多く、メーカーは売りっぱなしの状態だといいます。そのような状況のなか、エースコックは日本流のきめ細かい営業活動でファンを増やしてきました。
現地に合わせた味を追求し、ベトナムで開発した袋麺「ハオハオ」は、2000年の発売以来、圧倒的な人気を誇っています。
そして現在はさらなる成長のため、低所得層向けにはコストを削減し「安さ」を訴える商品を強化。中間層へは、高付加価値商品の開発に力を入れています。中間層をターゲットにしたノンフライ麺「ミコチ」や、和風だしの「ウドン・スキスキ」、具だくさんカップ麺「エンジョイ」などの個性的な商品の売れ行きは好評で、さらに需要は増えると考えられています。
海外で培った技術を日本の市場に
こうして海外で培った技術を日本で生かし、新たな市場の開拓にも取り組んでいます。日本で発売されている「ふぉっこりきぶん」はベトナムで製造した本場のフォーを使用した、本格的なもの。「油で揚げない低カロリー米麺」を売りにしており、カロリーはわずか190kcal。通常のカップ麺と比べてヘルシーなため、小売店からの注文が絶えないといいます。現地の味を再現する逆輸入的な戦略で、新たなファンを開拓することができるでしょうか。
次々と斬新な商品を生み出してきたエースコック。磐石な体制を築き、安定しているにも関わらず、失敗を恐れずドンドン新しいことに挑戦するチャレンジ精神には頭が下がります。その実態は即席ではないようです。
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