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2018.02.16 (Fri)

元気な企業はどこが違う?成功企業の戦略とは(第54回)

パナソニックを2度の低迷からV字回復に導いた経営眼

posted by 水本 愛(みずもと このむ)

 パナソニックは、「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助氏が1918年に創業した、日本を代表する総合電機メーカーのひとつです。しかし2000年代に入ると、テレビや家電といった従来の主力事業で苦戦を強いられた同社は、2012年度、2013年度と2期連続で7,500億円以上の赤字を計上しました。累計では1.5兆円を超える赤字でしたが、2015年度には見事にV字回復を遂げています。

 V字回復を達成した具体策とはどのようなものだったのでしょうか。業績が低迷した原因、業績改善の鍵となった2度の組織改革について、元パナソニック管理職である平川紀義氏の著書『パナソニックV字回復の真実』(KADOKAWA)から、歴代社長の経営眼、事業展開を軸に紐解いていきます。

パナソニックの企業風土を活かした事業部制

 パナソニックには「いろんなタイプの人が個性を持って仕事をする」という企業風土が創業当初より根付いており、社員がお互い切磋琢磨して競い合っていました。そのような企業風土をベースにして1933年、創業者である松下幸之助氏は事業部制を導入します。製品ごとに開発から生産、営業までを事業部で一元管理できる裁量を委ねると同時に、事業部同士で収益を競わせました。

 ところが各事業部の規模が拡大すると、競争意識が強くなり過ぎてしまい、それが事業部制のデメリットを助長させることとなります。デメリットを象徴するものとしては、FAXやデジタルカメラなどで、同時に複数の事業部で商品を展開していたという経営資源の浪費です。また材料の調達や人材管理も事業部ごとに行なっていたので、同じ材料なのに事業部ごとで仕入れ値が違っている、ある事業部の工場では工員に余剰が生まれているのに、他では臨時募集しているというコストの無駄が生じていました。

 これを整理したのが、2000年に社長に就任した中村邦夫氏です。中村氏は2001年に大規模なリストラの実施と、事業部制の廃止を行ないます。縦割りだった事業部制に代わり、企画・開発や生産、営業などの業務内容ごとで横割りされた「事業ドメイン別組織経営管理」へと組織を再編しました。

事業部制廃止によるパナソニックのさらなる低迷の始まり

 組織再編により、経営資源の浪費と無駄なコストが削減され、収益面でプラスの結果を生み出し、業績回復を果たしました。しかし、今度は技術と営業が分離されたことによる「職能別組織のデメリット」が現れます。これを象徴するのが、プラズマディスプレイの失敗に代表される市場ニーズの取り違えです。営業部門が集めた「消費者はデザイン性などを求めている」という声が開発部門に伝わらず、プラズマテレビは高精細な画面などの技術力を重視した商品となり、販売成績の低迷を招きました。

 事業部制は、事業部長がお客さま第一の基本的な思いを持って、製造から販売まで一貫して経営する体制でした。事業ドメイン別組織経営管理では、この一貫性が希薄となり、パナソニックはお客さまの声が届かない集合体となってしまったのです。

経営陣の否定と事業部制への回帰

 このプラズマテレビの失敗から「営業と生産の現場の連携が必要」と判断したのが2012年に社長に就任した津賀一宏氏でした。2013年に12年ぶりとなる事業部制を復活させます。そしてプラズマテレビや個人向けスマートフォンなど不採算事業から撤退。事業構成の組み換えを進め、自動車、住宅、BtoBに経営資源を投入します。結果、2015年4~9月期の連結決算では純利益1,113億円、営業利益は7年ぶりに2,000億円台へと回復を見せました。

 津賀氏の改革は、中村氏以降の改革を否定し、創業者である松下氏が導入した事業部門制へ立ち返るだけという単純なものではありませんでした。事業部制の浪費や無駄をチェックする「コーポレート戦略本社」という部署を、事業部制復活前の2012年に本社内へ設置していました。それによって事業部制を本社で統制しながら、経営の本質である「お客さまの声が届く」組織へと立ち返ったのです。

経営体質の改善が利益につながる

 中村改革と呼ばれる事業部制の廃止は、経営資源の重複やコストの無駄を明確にした反面、商品の競争力低下を招きました。しかし中村改革を経たからこそ、事業部制のメリット・デメリットや経営の本質を再確認し、組織の改善すべき点を見出すことができたのです。

 低迷期にこそ、経営方針を抜本的に見直すという経営者の手腕が問われます。低迷の問題点を見極め、弊害を回避しながら成長を促すには大胆な組織改革が必要となります。事業部制を復活させた津賀氏は「創業者の先見性なり、本質を見抜く力というのはすごいなという正直な感想がある」としながらも「いつまでも創業者の枠組みから抜け出せないというのは情けない話。現経営陣の経営理念、価値観をこれからの時代に根ざした形で築くべき」と語っています。

 低迷期のビジネスリーダーに必要な経営眼とは、過去の成功を検証して、それを時代に合わせて変化させていくポイントを探し出すというものであるということを、パナソニックのV字回復は気付かせてくれます。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2018年1月23日)のものです。

【参考書籍】
平川紀義『パナソニックV字回復の真実』KADOKAWA

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水本 愛(みずもと このむ)

水本 愛(みずもと このむ)

理系出身のフリーライター・インタビュアー。国立大学理学部物理学科卒。5度にわたる転職経験を持つ。ジョブホッパーという生き方をポジティブに捉え、企業紹介、求人広告、SNSを活用した企業PR支援などを手がけている。企業経営陣へのインタビュアーとしても活動中。本好きが功を奏し、書評ライターとしてさまざまなジャンルの書評・コラムを多数執筆。

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