ここ10年間、売上高を伸ばし続けている無印良品。2007年に1,570億円だった売上高が、2016年には3,075億円になり、2倍近く成長しています。しかし、そんな無印良品もかつては、経営危機を経験しています。「無印の時代は終わった」とまでいわれた同社が、V字回復することのできた取り組みを取り上げます。
経営危機に陥った過去と業績悪化の原因
西友のプライベートブランドとして誕生した無印良品。創業以来10年間、右肩上がりの成長を続け、一時代を築いたといっても過言ではありません。しかし2001〜2003年には業績が悪化、営業利益は半減し、経営危機に陥ってしまいます。業績悪化の原因は、成長への慢心、経営戦略の失敗、ブランドの弱体化などが考えられました。
どん底の2001年に社長に就任した前会長の松井忠三氏が、まず取り組んだのはマイナスをなくすこと。赤字店舗の閉鎖、在庫の焼却処分などを実行します。しかし、マイナスをなくすだけでは、経営の回復は見込めません。業績悪化の原因を改善していかなければなりませんでした。
復活への取り組み①〜商品力の回復
業績悪化の最も大きな原因となっていたのが、無印ブランドの弱体化。当時の無印良品は消費者が求める商品を提供できていなかったため、顧客が離れていたのです。そこで商品力を回復するために、「モノづくりコミュニティー」をサイト上に開設。消費者が参加する商品開発プロジェクトが誕生します。この取り組みが支持され、V字回復へとつながります。
「モノづくりコミュニティー」は、2009年に「くらしの良品研究所」へリニューアルし、現在も消費者と共に商品開発する姿勢が受け継がれています。今や自分たちの意見を吸い上げてくれるブランドとして認知され、根強いファンの獲得につながっているのではないでしょうか。
復活への取り組み②〜社風改革
業績が悪化した頃の無印良品は、創業以来の好調が慢心を生み、他企業の研究さえ行わない大企業病に陥っていました。こうした社風を変えるために、松井前会長が最初に進めたのが「朝のあいさつ当番」。そんなところから……と感じるかもしれませんが、基本的なあいさつでさえ満足にできない状況だったのでしょう。
課長職以上に当番を義務付け、朝8時から玄関で出社してくる人に声をかけることを続けるうちに、皆が自発的にできるようになったとのこと。上司から進んで行うこと、継続することの2点がポイントのように思えます。
また、毎日遅くまで残業し、家と会社の往復だけの生活からはアイデアが生まれるはずがないと、ノー残業デーを作ります。仕事を持ち帰らなくても済むよう、全員の仕事量を1割削減する仕組みを作り、現在は毎日18時半の退社を実現しました。
あいさつや仕事量の削減など、社風改革への取り組みを誰もがわかる形で取り入れたことが、社員の意識改革へつながったのかもしれません。
復活への取り組み③〜業務のマニュアル化
セゾングループには、個人の感性を大切にする企業文化がありました。それも魅力的な長所ではありますが、優秀な社員の経験に依存することが多くなり、共有すべきスキルやノウハウが蓄積されないというデメリットがあります。そこで、あらゆる業務をマニュアル化し、誰もが成果を出せるような仕組みを作りました。
マニュアルといっても創造性を奪う画一的なものではなく、基本の方法とでもいうべきもの。それまでの職人的なやり方を改めたスタイルといえるでしょう。
地道な取り組みこそがV字回復への鍵
見事にV字回復を達成した無印良品ですが、特効薬のような改革があったわけではありません。地道な取り組みの継続が復活への鍵となったようです。そして現在の継続的な好調は、どん底を経験したからこそ生まれた「慢心することなく努力する社風」によって、支えられているのではないでしょうか。
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