2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2017.03.10 (Fri)

元気な企業はどこが違う?成功企業の戦略とは(第23回)

低迷市場でも人気、プレミアム・モルツのブランド力

posted by なかむら いちろう/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

低迷する市場で売上を伸ばしたビールがある

 「どうすれば自社のサービスや商品が市場で高く評価されるのか」

これは多くの会社に共通する、解決が困難な課題です。特に、市場全体が低迷している場合、その課題を解決する難易度はさらに高まります。

 たとえばビール業界も、市場全体が低迷しているカテゴリのひとつです。ビール大手5社が発表したビール類の出荷量は、前年から2.4%減となる4億1,476万ケースですが、これは12年連続マイナスで、過去最低の数値となります。

 そのような厳しい状況にあって、サントリーホールディングス社(以下、サントリー)は、ビール大手の中で、売上高3年連続首位を獲得しています。その背景のひとつに、ビール市場の低迷が続く中においても、着実に販売実績を伸ばし続けてきた、プレミアムビール「ザ・プレミアム・モルツ」(以下、プレミアム・モルツ)の成功があるでしょう。

そもそもビールは差別化が難しい商品

 プレミアムビールとは、国内大手メーカーが製造販売する定番のビールよりも、店頭での実勢価格が高いビールのことを指します。サントリーでは2003年より、 “こだわりの素材・品質を徹底して訴求した”というプレミアムビール「プレミアム・モルツ」を販売していますが、販売数量は発売から2014年まで11年連続で上昇。2017年においては、対前年103%となる1,770万ケースの販売を目指すとしています。

 なぜ、プレミアム・モルツはここまで成長したのでしょうか。その要因を説明する前提として、「ビール」という商品の市場における特殊性を理解しておく必要があります。

 自社製品が市場で高く評価されるためには、他社より勝っているとする「差別化」が必要となりますが、サントリー代表取締役の水谷徹氏は、日本のビールが他社製品とブラインドテストをしても、すべて当てるのが難しいほどに技術やおいしさが拮抗しており、差別化しにくい商品であると、雑誌のインタビューにおいて指摘しています。

ポイントは、消費者はプレミアムビールをいつ飲んでいるのか?

 商品の明確な差別化ができないとすれば、自社の製品を積極的に選択してもらうためには「ブランド」の力が必要となります。

 ブランド・マネジメントでは、「多くの人に知られる」という「認知の幅」が必要となりますが、それと同時に「そのブランドが、消費者のニーズに結びついている」という「認知の深さ」も必要となります(ケビン・レーン・ケラー著『戦略的ブランド・マネジメント 第3版』東急エージェンシー)。

 サントリーは、同社が行ったある調査で、プレミアム・モルツの「認知の深さ」を知ることになります。

 ビール業界では従来、高級ビールが売れる時期は、年末年始などのギフトシーズンであると考えられていました。しかし、サントリーが行った調査によれば、実際にプレミアムビールが最も飲まれているのは「休日の夕食」であることが判明しました。

 そこでプレミアム・モルツでは、訴求ポイントを従来のギフトシーズンから「休日」へと変更。“「週末の夕食」という特別な時間にはプレミアム・モルツ”と、消費者にアピールしました。この結果、販売数は増加。高級ビールとしての知名度という「認知の幅」に加え、プレミアムモルツが休日の夕食のパートナーとして選ばれるという「認知の深さ」も得ることに成功したのです。

注力したのは、利用シーンにあったブランディング

 前述の通り、ビールというのは差別化の困難な商品です。だからこそ、サントリーはブランディングにこだわりました。水谷氏も、飲食店の顧客から「プレミアム・モルツはないの?」と、ブランドを指名されることが重要だ、と指摘しています。

 消費者から支持を集めるプレミアム・モルツの販売戦略からは、市場で評価を得るためには、業界の一般的なやり方に依存するのではなく、その商品がどのように消費者に利用されているのか、消費者のニーズを満たしているのか、利用シーンを検証しながらブランディングを行い、差別化を図ることの重要性が見て取れます。

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