2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2016.12.20 (Tue)

元気な企業はどこが違う?成功企業の戦略とは(第16回)

40年ぶりに増収した北海道の「奇跡の黄色いバス」

posted by 坂元博/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

 地方の公共交通機関は、人口の減少などを受け、苦しい状況が続いています。11月に発表されたJR北海道の業績見通しでは、半分の路線が「単独では維持困難」とされ、話題になりました。

 バスも例外ではありません。乗客が少ない赤字路線では、バス会社が行政から補助金をもらうことでなんとか運行が成立していますが、もし路線が廃止されれば、高齢者を始めとする地域の交通弱者は、ますます困った状態になります。たとえば近年は高齢者による自家用車の事故が増えており、警察や各都道府県が高齢者の運転免許返納を推進していますが、路線が廃止されてしまっては、返納後の移動手段がなくなることになります。

 このような状況のなか、40年続いた地方路線バスの赤字をストップし、増収に転じたバス会社が注目されています。北海道の帯広市に本社を構える十勝バス株式会社です。同社の成功は「奇跡の黄色いバス」という名で書籍化され、ミュージカル化もされています。

 その成功の裏には、苦しい状況を「時代のせい」と思い込んでいたことから、「自分たちの問題である」と意識を改革したことにありました。

「時代のせい」を言い訳に業績悪化

 国土交通省の調べによれば、三大都市圏以外の路線バス輸送人員は、1970年当時から比較して、約35年間でおよそ1/3以下にまで減少しました。三大都市圏以外の乗合バス事業者では、83%が赤字となっています。

 十勝バスも、そうした赤字企業のひとつでした。輸送人員はピークの1969年の2,300万人から、2010年にはその約83%減となる402万人。営業収入も20年間で半減、負債も40億円抱えており、倒産も考えられた状況でした。

 しかし、多くの従業員は「顧客が減ったのは時代のせいだから、自分たちで変えられるものではない」と思っていました。

 そんな中、現在も社長を務める野村文吾氏が、父の受け継ぎ、2003年に同社社長に就任。顧客の増加のために奮闘します。

「なぜバスに乗ってくれないのか?」

 野村社長がまず手をつけたのは、従業員の意識改革です。従業員の持っている問題意識を「社会の問題(時代のせい)」から「自分たちの問題」へと変える必要がありました。

 そこで十勝バスは、野村社長のもと、乗務員自らが毎日運転している路線地域の一軒一軒を訪問して、「どうしてバスに乗っていただけないのか」とヒアリングを行いました。この結果、沿線住民が「毎日バスが走っているのは知っているが、行き先や運賃がわからない」という不満を持っていたことから、同社は時刻表が記載されたパンフレットを住民に配布しました。パンフレットには、住民の不安を取り除くため、バスの乗り方や、バスの行き来表示の読み取り方など、根本的な部分の解説も記載しました。

 この結果、利用者は徐々に増えていきました。それにつれて、従業員一人ひとりも、会社の問題を自分の問題としてとらえはじめ、新たな工夫も生まれました。

 乗客が増え始めた十勝バスでは、さらに沿線住民の乗客増加に向け普及活動に励みます。通院や買い物など、目的に絞った時刻表を作成したり、通勤・通学定期利用者には土日乗り放題のサービスを実施するなど、従業員の発案による取り組みを実施します。

 さらに、地元の観光地をめぐる観光客向けの企画商品「日帰りバスパック」も発売します。これは帯広を訪れた観光客のために、バス乗車券と観光地の入場券や入館券・割引クーポンがセットになったもの。地元の企業や自営業者とも連携することで、地域活性化の効果も狙っています。

 この結果、収益も利用客数も40年振りに増加。利用客数は2011年度は前年度比で4.3%増、2012年度は前々年度比で12.4%増と、大幅な回復を見せています(いずれも路線バス全体の数値)。

「自分たちの問題」という意識改革が業績を上げる

 公共性の高い事業の場合、行政の支援に頼って、赤字経営であっても危機感が薄くなりがちです。そこで働く従業員も、ただ毎日の業務をこなしていくだけで、問題点を考えるどころか、「社会のせい」などと、自分では不可避な問題として放置しがちです。これでは何も解決しないどころか、従業員が生き生きと働く雰囲気にはなりません。

 十勝バスの事例では、従業員自らが自分の問題として行動を起こし、その積み重ねが赤字解消につながりました。今ある危機を「自分たちの問題として考える」ことがいかに重要かを示す事例です。

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