2022.03.25 (Fri)

小売業で広がるICT活用(第18回)

小売業界のデジタル化で注目を集める「電子レシート」とは

 スマートフォンやパソコンの普及などの普及にともない、さまざまなものがデジタル化しています。デジタル化した代表的なもののひとつは、書類です。書類を紙媒体から電子媒体に移行することで、保管スペースの縮小などが期待できます。電子マネーも、紙幣がデジタル化したものと考えられます。しかし、財布の中に依然として「レシート」という紙媒体がスペースを占領している人も少なくないでしょう。ここではレシートのデジタル化、つまり「電子レシート」について解説します。

電子レシートとは

 電子レシートとは、購買を記録、証明するために紙で発行していた書類をデータ化したものです。最近ではクレジットカードでの決済や、QRコードを活用した決済の後に発行されることがあります。

 日本政府も、電子レシートを推進しています。2018年、購買履歴データを活用できる環境整備を進めることを掲げて、東京都町田市で経済産業省が「電子レシート実証実験」を行っています。計27店舗と約2700人の顧客の協力により、電子レシートによる購買履歴データを扱う際の標準フォーマットと、蓄積された購買履歴データをほかのアプリケーションなどと連携する際に用いるAPIを完成させています。

電子レシート導入の特長

顧客側から見た特長

 顧客側から見た電子レシートの特長としては、まず「保管が簡単である」ことが挙げられます。確定申告をする場合はレシートを保管する必要がありますが、財布がレシートであふれかえる経験をした人もいるのではないでしょうか。また、経年劣化しない点も特長です。紙のレシートは劣化で印字がにじんだり、破れることもあります。電子レシートであれば、そのようなことは起こりません。

 次に挙げられる特長は、「他のアプリやソフトとの連携」です。たとえば家計簿アプリと連携すれば、家計簿へ入力する手間を省けます。ヘルスケアアプリと飲食店のレシートデータを連携して食生活の栄養バランスを分析し、次の食事で摂取するべき栄養素を知らせてる、といったことも考えられます。

事業者側から見た特長

 事業者側から見た電子レシートの特長としてまず挙げられるのは、「コスト削減と発行時間の短縮」です。レシートロールなどの購入費用を削減できるほか、レシートの発行にかかっていた時間を削減できる可能性もあるので、レジの混雑回避が期待できます。

 一方で、初期投資費用が発生することに注意しなければなりません。電子レシートを導入するには、対応するレジの購入や改修が必要なため、一時的に大きな費用がかかります。また電子レシートに関する発行手続きや、商品の返品手続きなど、これまでとは違う業務が発生するので、従業員への教育コストもかかってしまいます。

電子レシートの導入事例

ビックカメラ

 ビックカメラは、独自のスマートフォンアプリに電子レシート機能を搭載しています。商品の絞り込み、ポイントや買い物の履歴検索のほか、スマートフォンアプリ内で商品保険の加入状況を確認することもできます。

スマートレシート

 スマートレシートは、東芝テックが提供する電子レシートサービスです。通常紙で提供されている商品の明細レシートを電子化したもので、同社が電子データを一度預かり、顧客がスマートフォンアプリを通じてデータを閲覧できる形式を取っています。

まとめ

 電子レシートの導入率はまだそれほど高くはありませんが、顧客・企業双方にとってメリットがあるため、今後導入する店舗が増えていく可能性は十分に考えられます。導入コストなど、越えなければならないハードルはありますが、電子マネーなど決済方法のデジタル化に合わせて、レシートもデジタル化するのは自然な流れ、という考え方もできます。小売企業などは導入の検討をしてみてはいかがでしょうか。

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