2022.03.25 (Fri)

小売業で広がるICT活用(第6回)

小売業界が注目する「スマートストア」とは?導入メリットや事例を紹介

 近年、小売業の人材不足が深刻化しています。農林水産省食料産業局が公開した「卸売業・小売業における働き方の現状と課題について」によると、常用労働者数に対する未充足求人数の割合を示す欠員率は2.9と、全産業の2.1を上回る水準となっています。そのような中で、人材不足の解決が期待できると小売業で注目を集めているのがスマートストアです。現在もスーパーマーケットやコンビニエンスストアではセルフレジやキャッシュレス決済などの技術が導入されていますが、スマートストアはIoT(Internet of Things、モノのインターネット)やAI(人工知能)などの技術を取り入れることで、さまざまな作業を最適化できる店舗を示します。ここでは、スマートストアで具体的に何が変わるのか、どういったことが実現できるのかをご紹介します。

スマートストアとは

 まず、スマートストアでは具体的にどのような技術が使われているかを解説します。前述のAI/IoTを使った仕組みとしては、AIカメラを使った顧客の自動認識や品切れ商品の自動検知などが挙げられます。ほかにも、RFID(電子タグ)を使った商品情報の検知、スマートレジカートによるセルフレジ機能など、さまざまな技術が取り入れられています。もちろんスマートストアには既存のキャッシュレス決済やセルフレジなども取り入れられており、顧客は専用の端末やスマートフォンなどを使って買い物を行うことで、決済までの多くの流れを自動で行えるのです。

スマートストアが解決する課題、導入のメリット

人手不足解消

 スマートストアはセルフレジやキャッシュレス決済などを活用しているため、販売員の人数を抑えることができます。また在庫管理が自動化されることで、棚卸業務の効率化も期待できます。

マーケティング活用

 スマートストアでは、購入された商品や購入日時、購入者の属性、店舗内の動線などさまざまな情報がデータ化することができます。こういったデータをマーケティング活動に利用することで、売り上げの向上が期待できます。

スマートストアの事例

TOUCH TO GO(タッチ・トゥ・ゴー)

 株式会社TOUCH TO GOが、JR山手線 高輪ゲートウェイ駅構内にオープンしたスマートストアです。

 ウォークスルー型の完全キャッシュレス店舗で、カメラなどが入店した顧客と手に取った商品をリアルタイムで認識し、決済エリアに利用者が立つとタッチパネルに商品と購入金額が自動表示されます。顧客は表示内容を確認して交通系電子マネーを端末にかざすことで、商品が購入できます。

スーパーセンタートライアル東篠崎店

 株式会社トライアルカンパニーは、2020年2月にスマートストア「スーパーセンタートライアル東篠崎店」をリニューアルオープンしました。

 スーパーセンタートライアル東篠崎店では、セルフレジ機能やレコメンド機能を搭載したスマートレジカートのほか、AIカメラを利用した陳列商品の欠品感知、棚に配置された値札情報を自動更新できる電子棚札などを用意しています。

いちかわGo

 日本メックス株式会社と株式会社ピースノート、NTT東日本株式会社は、道の駅いちかわにコンテナ型スマートストア「いちかわGo」をオープンしました。スマートフォンを使って商品選択や決済が行えるほか、AIを活用した需要予測による廃棄ロス削減、発注作業の効率化などを実現しています。

スマートストアの導入に向けた課題

 スマートストアのさまざまなメリットを紹介しましたが、課題もあります。導入に向けた最大のネックとなっているのが、各種ICTシステムの導入や運用にかかるコストです。

 顧客が満足できる品揃えや売場づくりの最適化を行うことで人件費の削減や売り上げ向上が実現しても、先行投資額を短期で回収できるとは限りません。また、スマートストアに導入するICTシステムを使いこなすには、一定の知識を身に付ける必要があります。そのための教育コストや採用コストなども検討する必要があるでしょう。

 スマートストアの導入は確かに人件費削減や売り上げ向上が期待できますが、人材が不足している他部署への配置転換や取得データのマーケティング活用による新商品・サービスの開発など、さまざまな副次的効果も期待できます。また、スマートストアの普及や技術革新などで、将来的には導入コストが減る可能性もあります。さまざまな要因を考え、検討することが重要です。

まとめ

 スマートストアは徐々に導入が進んでおり、キャッシュレス決済やスマートフォンを利用したバーコード決済などはすでに一般化しています。スマートストアの導入を他人事と考えず、いつでも導入検討を行えるよう、将来の選択肢の一つとして「自社には本当に必要か」と常に考えておくことが重要なのではないでしょうか。

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