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2023.03.13 (Mon)

小売業で広がるICT活用(第33回)

小売業でRPAを導入するメリットとは?

 人手不足対策のためにデジタル活用を検討しているものの、運用面などにハードルの高さを感じ、導入に踏み切れていない小売業者も多いでしょう。こうした企業は、「RPA」を導入することで、状況が変わるかもしれません。RPAは、定型的なバックオフィス業務を自動化できる強力なツールであり、運用面での難易度も低めです。本記事では、このRPAの概要や導入メリット、小売業における具体的な活用方法などを紹介します。

小売業に求められるRPA

 RPAとは「Robotic Process Automation」の略称で、主に業務の自動化・効率化のために利用されるICTツールです。まずはRPAの効果と、小売業でRPAの導入が求められている背景を解説します。

RPAの効果とは

 RPAは、パソコンを用いたバックオフィス業務を自動化するソフトウェアロボットです。基本的には、繰り返し行う単純作業を自動化するのに適しています。たとえば、あるファイルに保存されたデータを別のデータベースに移し替えるためのコピー&ペースト作業も、RPAで代用できます。

 RPAは、事前に設定した操作手順を忠実に実行するため、ヒューマンエラーの抑制に役立ちます。かつ、情報処理速度は人の作業速度をはるかにに上回るため、業務時間が大幅に短縮可能です。人が手作業で行っていた単純業務を効率化・省人化する手段として、さまざまな企業で導入されています。

 RPAの特徴のひとつに、プログラミングスキルがなくても使えるノーコード、もしくはローコードの製品が多いことが挙げられます。多くのRPA製品は、ドラッグ&ドロップの直感的なインターフェースの採用により、簡単な操作で自動化の設定が可能です。Excelのマクロ機能のように、人が手作業で行った操作を記録させることでも自動化設定ができるため、ICTスキルが低い人でも比較的容易にRPAを活用できます。

 さらに、導入にあたって既存のシステム構造などに手を加える必要がなく、既存システムをそのまま活かせる点も魅力です。RPAは複数のシステムをまたがって利用することも想定されるため、それぞれのシステムを改修する必要がないのは、導入や運用上のハードルを大きく下げることにつながります。

 このようにRPAは、ICTスキルがそれほど高くない企業や現場でも、簡単に業務効率化を行える、優れたソリューションです。

小売業でも注目を集めている理由とは

 小売業でRPAが注目を集めている背景には、深刻な人手不足が挙げられます。

 農林水産省の資料「卸売業・小売業における働き方の現状と課題について」によれば、2015年における小売業の欠員率は、全産業の平均値2.1を上回る2.9を記録しています。特に人手が不足しているのは、「営業・販売」「流通・運搬作業」「商品生産(単純作業)」の分野です。

 こうした人手不足の影響もあり、小売業は他業種に比べて勤務時間が長く、年間休日数も少なくなっています。特に飲食料品小売業では、勤務時間の長さに比して労働生産性が低く、全産業の平均値と比べて半分以下となっています。

 こうした労働環境の悪さは、ますます働き手を遠ざけ、さらなる人手不足を招く負のスパイラル構造を生む恐れがあります。「現場の人材に頑張ってもらうことで現状維持を図る」という対策では、状況が徐々に悪化していくのを座視するだけになりかねません。

 人手不足がすでに慢性的な問題として存在する以上、企業としては少ない人手でも仕事を回せるように工夫する必要があります。業務効率化の手段として、さまざまなデジタル技術が期待されていますが、なかでもRPAは、先述のようにICTスキルが高くなくても導入しやすいので、デジタル技術を活用する手始めとして適しています。

小売業にRPAを導入する際の注意点

 導入が比較的容易なRPAですが、いくつかの点に注意しないと、満足のいく効果が得られない恐れがあります。

 まず、RPAの基本的な特徴として理解しておきたいのは、RPAが自動化できるのは単純な定型作業であるという点です。RPAは事前に設定された操作を忠実に反復するソリューションであるため、臨機応変な判断が必要な業務には適していません。中にはAIによって高度な判断を行うものもありますが、基本的にRPAの役割は、単純な反復作業の代行にあります。

 RPAのこの「融通の利かなさ」は、システムや業務内容の変更の際に問題になることもあります。RPAは自分で判断を行わないため、システムや業務プロセス、あるいはデータのフォーマットなどに変更が生じても、以前に設定されたままの方法で自動化処理を実行します。そのため、RPAと関わっているシステムや業務に変更が生じた際は、RPAの設定も変更しないとトラブルにつながる恐れがあります。

 こうしたトラブルを避けるには、RPAを活用する現場の部署が、積極的な役割を果たすことが重要です。そもそも、RPAをどの業務に導入するのが良いか否かも、現場の知見なしには決められません。「RPAで置き換えられそうな業務はどれか」「ふだんはどのように処理しているのか」「導入したことで実際にどれくらい現場の仕事が楽になったのか」などを判断するには、システム部門だけでなく、実際に業務を行っている人たちの協力が不可欠です。場合によってはRPAを活用しやすいよう、現場の業務プロセスそのものを修正する必要もあるでしょう。

 このように、RPA導入によって高い成果を出すには、RPAの特性を十分理解したうえで、現場がRPA活用に積極的に関与していくことが重要です。逆にいえば、だからこそRPAは全社的にデジタル活用を推進していくためのきっかけとして優れている、とも捉えられるでしょう。

小売業が直面している課題

 現代の小売業は、以下の2つの大きな課題を抱えていますが、RPAはこれらの課題を解決するための手段として有効です。ここからはRPAによって解決が期待される、小売業の2つの課題を紹介します。

課題1. 消費者のニーズをより的確に判断しなければいけない

 小売業の課題その1は、消費者のニーズを迅速かつ的確に判断しなければならないことです。現代ではインターネットやオンラインショッピングが普及したこともあり、顧客の価値観が多様化し、トレンドの移り行きも早くなっています。小売業が利益を最大化するためには、この変動が激しい消費者ニーズを的確に把握し、在庫管理を最適化しなければなりません。

 しかし、消費者ニーズをタイムリーに把握するにしても、大量の在庫を適切に把握し、必要な時期に発注処理をするにしても、人手ですべてを行うには大きな時間と手間がかかります。データの解析に時間を取られている間に、トレンドに乗り遅れてしまうかもしれません。そこで、データ処理などのバックオフィス業務を自動化・迅速化するRPAの活用が重要になってきます。

課題2. 人材確保が厳しい状況になっている

 小売業の課題その2は、人材確保がさらに厳しい状況になっていることです。小売業界は現状でも人手不足に陥っていますが、少子高齢化によって労働人口そのものが減少していくことを考えれば、今後この状況が劇的に改善することは期待できません。

 この状況に対処するためには、今のうちからRPAによる自動化を進め、少ない人数でも業務を回していけるような体制を構築しておくことが求められます。

小売業にRPAを導入するメリット

 上記のような課題を抱えている小売業ですが、RPAを導入することで以下のようなメリットが期待できます。

メリット1. 自動化により人件費削減につながる

 RPAを導入することで、これまで従業員が手作業で行っていた作業を自動化できるため、より少ない時間や人数で仕事を回せるようになります。これにより、人件費の削減効果が見込めます。

 早出や残業が多く、休日も少ない小売業は、従業員に負担をかけがちです。しかし、RPAを導入して労働時間を短縮できれば、人件費削減と同時に従業員の負担軽減も期待できます。

メリット2. ケアレスミスの防止につながる

 ケアレスミスなどのヒューマンエラーの防止ができるのも、RPAの導入メリットです。

 RPAが得意とする定型的な反復作業は、人にとっては単調に感じてしまう仕事です。単純作業とはいえ、長時間にわたり大量に行っていれば、疲れや飽きが原因でケアレスミスが起きやすくなります。その点、事前の設定通りに機械的に作業を処理するRPAならば、どれだけ大量の仕事でも人のように作業品質が落ちることはありません。

 作業する担当者によって、作業品質が左右されてしまう属人性を改善するうえでも有効です。RPAが正確に作業をこなすことで、人が作業していた場合に必要だったチェックやフォローの時間も少なくなります。

メリット3. 工数削減が期待できる

 RPA導入によって人の手作業が減ることで、これまでよりも工数の削減ができます。その分、従業員は接客業務やより付加価値の高い作業に注力できるようになるでしょう。誰がやっても結果が同じ作業はRPAに任せ、人ならではの能力が求められる仕事は従業員が行う、といったような仕事のすみ分けがRPA導入で成功するためには重要です。

メリット4. 24時間稼働できる

 RPAは人間と違って、24時間365日いつでも稼働できるのも大きな利点です。人が作業する場合は、担当者の業務時間や他業務との兼ね合いも考えながら仕事を調整する必要がありますが、RPAなら最小限の操作をするだけで、あとは自動で仕事を片づけます。そのため、RPAを導入することで納期短縮や残業時間の短縮などが期待できます。

メリット5. 小さい規模から導入できる

 現場単位のスモールスタートで導入できるのも、RPAの大きなメリットです。RPAを導入するのに、サーバーの整備などの大掛かりな投資や作業は必要ありません。クラウド型の製品ならば、パソコンを1台用意するだけですぐに運用を開始できます。

 運用に際してITの専門知識がなくても扱えるツールも多いため、人材面での問題が起きにくい点も魅力です。自動化しやすい単純な業務からRPAを導入し、ノウハウや成功体験を積みながら、徐々に対象業務を広げていくとよいでしょう。

RPAで自動化できる小売業の業務

 RPAで自動化できる小売業の代表的な業務としては、「資料作成」と「販売管理」の2つが挙げられます。

資料作成

 RPAを導入することで、売上報告書や営業日報、出荷報告書などの資料作成を自動化できます。こうした資料は基本的に、ほかのデータベースから転記した数値などで多くの情報が構成される定型的なものです。そのため、たとえば売上報告書なら、売上データなどの数値をRPAが抽出して転記するように設定しておけば、必要な情報が自動的に埋められるでしょう。

 RPAであれば、人と違って数値を入力ミスしたり、入力事項の漏れが生じたりするような事態も避けられます。RPAは予約設定もできるため、決まった時間に作業を行わせ、メールなどでその結果を報告させることも可能です。

販売管理

 RPAは商品の在庫管理をはじめ、請求・入金・出荷報告といった販売管理における定型業務も自動化できます。これらの業務は小売業で頻繁に発生するものであり、従業員が時間と労力をかけて手作業で処理している企業も多いことでしょう。しかし、その作業内容を改めて考えてみると、決まった情報をシステムやフォーマットに落とし込むのがメインで、複雑な判断が求められるわけではありません。

 顧客への出荷報告のメールにしても、メールの件名や本文は定型文で構成されており、明細表などのファイルは販売管理システムから出力して添付すれば良いため、RPAで自動化が可能です。RPAによって販売管理業務を迅速化・正確化することは、顧客や取引先からの信頼獲得にもつながるでしょう。

まとめ

 小売業は慢性的な人手不足に悩まされている一方で、人間の手作業に頼っている定型業務も多いため、RPAを適切に運用することで高い導入効果が期待できます。RPAを導入して単純な定型業務を自動化し、限られた人員をより付加価値の高い仕事に回せるようにすることは、労働人口の減少が進む今後の日本社会において、小売業が持続していくうえで大きな助けになるでしょう。RPAは比較的簡単に運用を始められるのが特長です。ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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