2022.03.25 (Fri)

小売業で広がるICT活用(第17回)

フルフィルメントサービスとは? メリットとデメリットを解説

 近年の小売業界では、従来型の店舗による商品販売だけでなく、ECサイトを運営する企業が多く見られるようになりました。ECサイトを効率的に運用したい事業者向けサービスの普及も進んでおり、そのうちのひとつが「フルフィルメントサービス」です。今回は、フルフィルメントサービスについて解説します。

フルフィルメントとは何か?

 フルフィルメント(Fulfillment)とは、遂行や達成を意味する言葉です。ECサイトの運用で使われる場合は、商品の受注からピッキング、梱包、発送、代金回収など、顧客が商品を注文してから手元に届くまでに必要とされる一連の業務全般のことを示します。

3PLとの違い

 フルフィルメントと似た意味で用いられ、混同されることも多いのが「3PL」です。3PLは、サードパーティー・ロジスティクス(3rd Party Logistics、第三者による物流)の略であり、厳密には物流のアウトソーシングを示す言葉です。したがって、物流だけでなく受注や決済業務なども含むフルフィルメントの方がより広い範囲の業務をカバーしています。

フルフィルメントにおける一連の業務内容

 では、フルフィルメントには具体的にどのような業務が含まれるのでしょうか。おもな流れは以下の通りです。

入荷・検品

 卸売企業やメーカーから届いた商品を物流センターや倉庫に配送する業務です。入荷データと照らし合わせて正しい商品が届いているか、数量は注文通りかなどを確認します。この段階で商品に異常がないかをチェックする検品作業を行う場合もあります。

商品保管

 入荷した商品(在庫)を、適切な場所で保管します。

受注

 インターネット、あるいは電話などで顧客からの注文を受け、商品発送の準備を行います。事業者ごとに細かな違いはありますが、注文内容の確認、在庫の確認、送り状の発行などが受注業務に含まれます。

ピッキング

 受注後、注文内容に応じて保管されている商品をピックアップする作業がピッキングです。現在ではこの工程をロボットが行い、自動化している物流センターもあります。また、商品にもよりますが、ピッキング後に梱包箱の組み立てや宛先ラベルの貼り付けなどの作業が発生する場合があります。

梱包

 商品の輸送時に損傷などが発生しないように、箱詰めや緩衝材の同封など、商品に応じて発送のために必要となる梱包を施します。アパレル系の商品などは、この段階で検品が行われることもあります。

発送

 梱包が完了した商品を宅配先の情報とともに、所定の宅配事業者へと引き渡す業務です。

決済

 以前の通信販売では代引きと呼ばれる、商品の受け渡し時に同時に決済が行われる方法(即時決済)がよく利用されていましたが、最近はクレジットカード払いやコンビニ払いなど、決済方法が多様化しています。

アフターサービス

 近年では、フルフィルメント業務の一環として商品が顧客に届いた後のアフターサービスを行う企業も多く存在します。アフターサービスのうち主要な業務は、返品処理とクレーム対応です。

フルフィルメントサービスを利用するメリット

コスト削減

 ECサイトの規模によりますが、フルフィルメントサービスを活用したほうが、自社で物流拠点やコールセンターを構え、物流ネットワークを構築するよりもコストを抑えられる可能性が高いです。

業務効率化

 フルフィルメントサービスを提供する企業はノウハウを蓄積しており、自社で行うよりも効率良く業務が進められる可能性は高いです。海外への商品発送を行う場合は、そもそも現地での倉庫確保や配送などのオペレーションが自社では困難なケースもあります。

フルフィルメントサービスを利用するデメリット

 外部のフルフィルメントサービスを活用すると、ノウハウは自社に蓄積しません。仮に課題点や改善点などが存在したとしても、自社の一存でサービスの形態は変更できませんし、各種業務に秀でたスタッフ育成なども難しくなります。

フルフィルメント導入のポイント

 もし実際に、フルフィルメントを導入するとした場合、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

 第一に、フルフィルメントサービスの利用には、費用が発生することを忘れてはいけません。商品の内容や保管期間などに応じて変動するため、メリットとコストを天秤にかけたうえで検討する必要があります。

 フルフィルメントサービスを提供する企業の業務範囲を確認し、自社が求めている業務と一致しているか確認することも重要です。一連のフルフィルメント業務のうち、一部のみを委託する方法もあります。

 Amazonやヤマト運輸など、現在フルフィルメントサービスを行っている企業は多くありますが、利用企業は一社に絞ったほうが管理業務の手間などの観点から見て効率的です。

 取り扱う商材にもよりますが、小売業界の常識と物流業界の常識が異なるケースもあるため、商品の保管環境の確認も重要となります。たとえば、一定温度の範囲内での商品保管が必要となる場合、空調が常に稼働している定温倉庫での保管にはオプション料金が発生するケースがあります。

まとめ

 フルフィルメントサービスをはじめとする業務のアウトソーシングは、うまく活用すればコストカットや効率化につながる一方、業務が自社の手を離れることになるため、どこまでの業務を依頼するか慎重に見極めなければなりません。複数社のサービス内容を比較検討し、自社業務とのすみ分けを考慮して選ぶようにしましょう。

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