近年、よく聞くようになった言葉のひとつに「キャッシュレス決済」があります。このキャッシュレス決済はさまざまなサービスで使われるようになっており、キャッシュレス決済をPRしたテレビコマーシャルもよく目にします。
諸説ありますが、キャッシュレス決済の普及が進んだのは1950年代のアメリカだといわれています。Diners Clubの創業者であるフランク・マクナマラとラルフ・シュナイダーがレストランで食事を共にしたとき、食事後に財布を忘れたことに気づきました。これをきっかけに「財布を忘れたときでも恥をかかずに決済できるような仕組み」として、キャッシュレスで決済できるクレジットカードが生み出されました。
日本でキャッシュレス決済の普及が進んだのは、1960年に日本ダイナースクラブが設立されたのがきっかけといわれています。1961年に日本ダイナースクラブとJCBが最初の汎用型クレジットカードを発行しました。1964年の東京オリンピック開催を控え、来日外国人がクレジットカードを利用できるようにするために普及が進んだともいわれています。
そんな歴史を持つキャッシュレス決済ですが、今回は具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのか、キャッシュレス決済にはどのような種類があるのかなどについて整理していきます。
キャッシュレス決済とは?
キャッシュレス決済の定義
そもそも、キャッシュレス決済とは何なのでしょうか。経済産業省が平成30年に公表した「キャッシュレス・ビジョン」では、キャッシュレスは「物理的な現金(紙幣・硬貨)を使用しなくても活動できる状態」と定義されています。つまり、商品またはサービスの代金の支払いの際に、クレジットカードやデビットカード、交通系・流通系の電子マネー、バーコードやQRコードを介したコード決済、銀行振込や口座引落など、電子的紙幣価値のデータの送受信によって行う仕組みです。
日本におけるキャッシュレス決済比率について
一般社団法人キャッシュレス推進協議会が公開している「キャッシュレス・ロードマップ」には、日本国内におけるキャッシュレス決済比率の推移が掲載されています。キャッシュレス決済比率は、国内で商品・サービスの購入金額のうち、どれだけの金額がキャッシュレス決済を用いて支払われたかを表しています。2018年の段階で24.1%だったキャッシュレス決済比率が、2019年になると26.8%と、1年間で2.7%程度上昇していることから、日本国内でキャッシュレス決済が浸透していることが読み取れます。なお、キャッシュレス決済の9割以上にクレジットカードが使われており、それ以外の決済方法についてはまだ浸透したというわけではありません。
また経済産業省の「キャッシュレス・ビジョン」では、2025年に開催される大阪・関西万博に向けて、キャッシュレス決済比率40%の実現を宣言しています。訪日する外国人観光客がキャッシュレス決済を利用するシーンを想定して、今後もこの比率は右肩上がりが続くものと思われます。
キャッシュレス決済のメリット、デメリット
キャッシュレス決済にはさまざまなメリット・デメリットがあります。詳しく見ていきましょう。
キャッシュレス決済のメリット
現金を引き出す手間がなくなる
現金払いの場合は、事前に銀行口座から現金を引き出しておかなければいけません。キャッシュレス決済を利用すれば、決済方法と銀行口座を紐づけておくことで、銀行に足を運んだり、ATMを探し回る必要がなくなります。
現金に触れなくてもよい
新型コロナウイルスの影響で非接触のやりとりが好まれる中、紙幣や硬貨に触れることなく決済できることは、大きなメリットといえます。
支払い履歴が残せる
キャッシュレス決済の場合、支払い履歴はインターネットや支払い通知書などで確認できます。わざわざ管理簿を作成しなくても、金銭の流れが把握できるようになります。
キャッシュレス決済のデメリット
利用できない店舗がある
キャッシュレス決済を提供している企業と契約していない店舗では、当然ながら利用できません。また災害などで通信機能が遮断された場合も、利用できなくなります。
預貯金の残高を超えた決済が行える
現金はいま所持している金額を超えた決済はできません。しかしクレジットカードなど後払いタイプのキャッシュレス決済は、預貯金の残高を超えた決済が行えることに注意しましょう。
キャッシュレス決済の代表的な種類、それぞれの特徴
キャッシュレス決済の支払い方法
キャッシュレス決済の支払い方法は、「前払いタイプ」「即時払いタイプ」「後払いタイプ」3つのタイプに分けることができます。
前払いタイプ
決済前にあらかじめ金額をチャージする必要があるタイプで、プリペイド方式とも呼ばれます。電子マネーにはこのタイプが多いです。「Suica」などの交通系電子マネーも前払いタイプです。チャージしている金額の範囲内しか決済できない不便さはありますが、使いすぎを防げるメリットもあります。
即時払いタイプ
利用した直後に銀行口座から代金が引き落とされるタイプで、デビットカードなどが該当します。銀行に入金している金額、あるいはデビットカードに設定されている金額の範囲内しか決済はできません。
後払いタイプ
おもにクレジットカードなどが該当します。利用金額が後日に請求される点が特徴です。そのため利用した時点で金銭が不足していても、請求日までに用意すればよいというメリットがあります。ただし多くの場合、契約時に審査が必要となり、支払い能力に問題があると判断された場合は利用できない場合があります。
キャッシュレス決済の種類
キャッシュレス決済はカードを使って決済するタイプと、スマートフォンを使って決済するタイプに大別されます。ここでは、それぞれの種類と特徴について解説します。
クレジットカード
クレジットカードは日本国内で最も普及しているキャッシュレス決済です。スーパー・コンビニエンスストアでの買い物や、飲食店での会計、電気・ガス・水道といった公共サービスの支払い、国民年金保険料や国民健康保険料などの納付など、多くの場面で利用できるのが特徴です。
クレジットカードを所有するには事前審査が必要で、申込者のさまざまな部分が考慮され、利用限度額が設定されます。
付帯サービスの多さも特徴のひとつです。多くのクレジットカード会社は利用金額に応じてポイントが加算されるシステムを用意しています。貯まったポイントは商品やギフト券に交換したりと、多彩な使い道が用意されています。
実際の利用時には、決済端末でカードを読み取り後、暗証番号を入力するパターン、出力伝票にサインするパターン、決済端末にカードをかざして使用するパターンなどがあります。Webサイト上で利用するときは、口座名義やカード番号、有効期限を入力するパターンが一般的です。
デビットカード
デビットカードは二種類あり、ひとつはキャッシュカードがそのまま使えるJ-Debit、もうひとつはVisaやMasterCard、JCBといったクレジットカードの国際ブランドが提供しているブランドデビットです。J-Debitは日本デビットカード推進協議会に加盟する店舗、ブランドデビットは各ブランド加盟店で利用できます。
デビットカードはクレジットカードと異なり、所有するにあたっての審査が原則ありません。原則的に15歳以上から所有できます(中学生は不可)。ただし支払方法は即時払いタイプとなり、一括払いのみとなります。
利用方法はクレジットカードに近く、暗証番号を入力するパターン、決済端末にカードをかざして使用するパターンが多くを占めます。提供会社によってはポイントが加算されるシステムが用意されていることもあります。
電子マネー
電子マネーの特徴は、専用機器にICカードやスマートフォンをかざすだけで決済が行えるという手軽さです。Suicaのような鉄道会社が発行する交通系電子マネー、nanacoのような流通系企業が発行する流通系電子マネーに大別されます。
支払い方法は、決済前にあらかじめ金額をチャージする必要があるタイプが中心です。所有できる年齢は種類によりさまざまですが、クレジットカードやデビットカードと異なり何歳でも利用可能なものもあります。
スマートフォン決済
スマートフォン決済は、スマートフォンに専用アプリをインストールして利用します。事前に専用アプリと銀行口座あるいはクレジットカードを紐づけしておくことが必要です。支払い方法は専用アプリにより異なります。
スマートフォン決済の場合、専用アプリで表示されたQRコードを専用端末で読み取る、あるいは店舗に用意されたQRコードを専用アプリで読み取る方法が一般的です。また、ほかのキャッシュレス決済とは異なり個人間での金銭の受け渡しが行えるものもあります。
まとめ
日本ではキャッシュレス決済の普及が進んでいます。対応する店舗やサービスの数はこれからも増え続けていく可能性が高いでしょう。キャッシュレス決済それぞれの長所と短所を見極め、自分に最適なキャッシュレス決済を見つけましょう。
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