2022.03.25 (Fri)

小売業で広がるICT活用(第11回)

AIが解決するスーパーマーケットの課題とは

 近年、さまざまな業種でAI(人工知能)が導入されています。私たちの日常に欠かせないスーパーマーケットでも同様です。今回は、なぜスーパーマーケットでAIの導入が進んでいるのかについて解説します。

 

スーパーマーケットの課題

 近年、小売業では少子高齢化・人口減少に伴う市場規模の減少や、労働力不足に伴う人件費高騰などさまざまな課題を抱えています。従来のスーパーマーケットでは食品加工から商品の品出し、レジでの会計など人の手を借りる必要がある作業が多く、とくに労働力不足は大きな課題とされてきました。

 また、AmazonなどのEC業界が発展したことや、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い非接触型のライフスタイルが定着したこともあり、スーパーマーケットの利用者数も減少傾向にあります。

AIはスーパーマーケットの課題解決になるか

 その中で注目されているのが、AI活用です。では、スーパーマーケットでAIはどのような活用が考えられるでしょうか。

 まず考えられるのは、発注業務です。生鮮食品をはじめスーパーマーケットが扱う商品は、季節や天候、地域特性などさまざまな要因が絡み合い、必要とされる数量を決定するのが難しいものが数多く存在します。また、販売数量が発注数量より少ないと機会損失が、多いと余剰在庫が発生するため、なるべく適正な数量を発注しなければなりません。そのため発注業務は店長など熟練した従業員が行う傾向にありました。しかしAIで要因を分析し、適正な数量を発注することができれば、従業員の軽減負荷ひいては労働力不足の解消につながる可能性があります。

 AIカメラを使った店舗分析なども考えられるでしょう。AIカメラとは、AI機能を搭載したカメラで、撮影した画像をAIが分析することで、商品の在庫管理や顧客の導線確認などが行えるものです。活用することで商品補充や配置などの効率化が期待できるでしょう。

スーパーマーケット×AIの事例

 近年、スーパーマーケットではAIを導入する事例が増えています。AIをどのように活用しているのか、見ていきましょう。

株式会社イトーヨーカ堂

 大手スーパー「イトーヨーカドー」を運営する同社は、AIを使った商品発注システムを全国132店にて導入し、運用しています。発注対象となる商品は、カップ麺や菓子などの加工食品や冷凍食品、アイス、牛乳など約8000品目。価格や商品陳列の列数などの情報に加えて天候情報、曜日特性や客数などの情報をAIが分析し、最適な販売予測数を発注者に提案しています。2018年にテストを実施したところ、担当者が発注作業にかける時間を平均約3割短縮でき、また営業時間中に商品の在庫がなくなる事例を減らす効果も確認できました。

株式会社ライフコーポレーション

 首都圏および近畿圏でスーパー「ライフ」を運営する同社は、日本ユニシス株式会社と協働開発したAI需要予測による自動発注システムを導入し、全店舗にて稼動しています。販売実績や気象情報、販売計画などの各種データをもとに商品発注数を自動で算出。これまでもドライグロサリー(冷蔵を要さない食品)を対象とする自動発注システムは導入していましたが、販売期間が短く制度面での対応が困難だった牛乳などの日用品にも用いています。作業負荷や難易度が高い業務を自動化することで、従業員の作業負担軽減や、商品欠品・廃棄ロスの削減を実現しています。

株式会社トライアルカンパニー

 スーパー「トライアル」を全国展開する同社は、「ITの力で流通を変える」を目標に掲げてさまざまな取り組みを行っています。同社は自社開発したAIエンジン搭載カメラを活用し、商品棚の監視や顧客の導線分析などを行い、売り場の最適化を実施。棚回転効率プラス28.7%、欠品改善プラス12.2%などの導入効果を実現しています。

株式会社マルイ

 岡山県や鳥取県、島根県でスーパー「マルイ」を運営する同社は、過去の販売実績および気象情報を用いた需要予測の実証実験を行いました。対象とした食材は、鍋食材である7品目。販売実績や各店舗のキャンペーン情報、気象情報などのデータをもとに、AIで合計販売金額を予測し、発注を行う仕組みを導入しました。結果、発注精度の向上により年間約90万円の粗利益改善が見込まれたほか、年間216時間の発注業務削減により約40万円の工数削減が見込まれる結果となりました。

まとめ

 AIは従業員の作業をサポートすることで、業務負担の軽減や生産性の向上などが期待できます。前述の通り、スーパーマーケットをはじめとする小売業では、品出しやレジ打ちなど、作業の多くを人の手に頼っていました。視点を変えれば、AIの活用によって改善できる範囲が広いという見方もできます。AIがサポートできる業務領域は、今後も広がっていくのではないでしょうか。

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