2023.03.13 (Mon)

小売業で広がるICT活用(第40回)

小売業でデータ分析を活用するにはどうすれば良いのか?具体的な方法を解説

 近年ではICT化が急激に進み、IoT、AI、ビッグデータなどが浸透しつつあります。ICT化により、店舗でもさまざまなデータが収集・管理するようになりました。

 日々収集される店舗データを分析すれば、さまざまな予測を可能にします。ここでは、店舗、顧客、商品の状況を判断する重要な指標にもなる小売業のデータ分析について、その方法や流れを解説します。

小売業におけるデータ分析の必要性

 スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売業は、売上目標や経営目標を達成するために、データ分析が活用されています。

 目標を達成するためには、進捗状況のチェックや課題の有無を確認することが大切です。設定した目標に対する進捗率が把握できていない状態では、売上目標や経営目標の達成が困難になります。

 データ分析を活用すると、売上や在庫状況などの数字を予測することが可能になります。売上目標に向けて現状では何がどのくらい不足しているのかが明確になれば、足りない部分を補うための的確な施策が立てられるでしょう。

 在庫管理も、データ分析による効率化が可能です。データに基づいた無駄のない仕入れを行うことで、これまでよりもコストを抑えることができるため、利益の向上につながります。

小売業でデータ分析を行う方法

 小売業でデータ分析を行う際は、主に店舗の運営に大きく影響する「KPI(重要業績評価指標)」を使用します。小売業のKPIで重要なものには購買率、来店客数、客単価があります。

購買率を調べる

 購買率とは、来店客のうち店舗で買い物をした顧客がどれくらいいるのかを示す割合です。購買率を調べると、販売戦略の効果などが確認できます。購買率は、「購買客数÷来店客数=購買率」の計算式で求められます。

 たとえ多くの顧客が入店していても、購買率が低い店舗もあります。購買率が高い店舗は、来店客の多くが商品を購入している状態です。従業員の販売力が高かったり、来店客が購入しやすい商品レイアウトになっている店舗は、購買率が高くなり、売上の向上も期待できます。

 購買率を向上させるためには、顧客の来店回数を増加させ、商品購入の割合を高める必要があります。その場合は来店客数と購買客数を時間帯や曜日などで分けて、必要なデータを収集・分析するとよいでしょう。

 購買率向上のための具体的な手法としては、DMによる顧客へのアプローチ、競合に負けないための価格設定、POPや商品の品揃え・レイアウトなど長時間の滞在が可能な売り場づくりなどが挙げられます。実践した後には再度データを収集し、購買率が向上しているかどうかを確認します。

 常に効果的な企画を設定し続けることも大切です。購買率のデータについても、時間や曜日だけでなく年齢、性別などさまざまな分析結果を用意し、従業員が有効に活用できる状態にする必要があります。

来店客数を調べる

 来店客数とは、その名の通り店舗に訪れた顧客の数です。来店客数が多いと売上も向上するため、欠かせないデータとなります。

 来店客数は、基本的にはPOSレジのデータから収集できます。とはいえ、POSレジのデータは正確にいえば、「店内で商品を購入した来店客の数」のことです。来店後、商品を購入しなかった人の数を数えるには、来店カウンターの設置が必要です。

 来店カウンターは「トラフィックカウンター」「ピープルカウンター」とも呼ばれる、センサーの前を通った顧客を数えるシステムです。店舗内だけに限らず、たとえば店の前を通過する人を数える場合にも活用できます。通行人の人数に対して、来店客数がどれだけいるかなどの割合がわかると、来店客数のデータ活用に役立ちます。

 来店客数は、天気などの不確定な要素にも影響を受けやすいため、目標に向けて長期的にデータ収集、施策への取り組みを行うことが大切です。

 来店客数を増やすためには、通行人が店舗に興味を抱くような工夫が求められます。店内のディスプレイにトレンドを意識して取り入れ、売れ筋商品を目立つところに配置したり、コモディティグッズ(実物を見なくても、購入の決定に支障が出ない必需品)の価格を安くする、キャンペーンを実施するなどの施策が効果的です。

平均的な客単価を調べる

 平均的な客単価とは、商品を購入した顧客の平均購入額です。客単価は「店舗売上額÷購買客数=客単価」の計算式で算出可能です。平均客単価がわかると、顧客が購入する商品の価格帯が把握できます。ただし、季節によって売れ筋商品は変わるため、平均客単価は一定とは限りません。

 客単価は、従業員の販売力や接客スキル、トレーニングの成果の確認にも活用できます。従業員別に客単価を算出し、各従業員が高単価商品を販売できているか、商品を組み合わせて販売できているかを確認し、スキルチェックを行います。

 平均客単価を増やすためには、販売スタッフが客単価を意識して、クロスセル(顧客に新たな商品を提案し、単価を向上させること)のための施策を取り入れることが大切です。そのためにには、関連する商品を合わせて配置したり、積極的に商品を提案するといった方法が考えられます。

 具体的には、精肉コーナーの近くに鍋スープやポン酢などの鍋に関係する商品を陳列したり、「アウトドア・BBQコーナー」として焼き網やトング、炭など、異なる種類の商品を一カ所にまとめて陳列するなどです。組み合わせて使える商品を同時にアピールすることで、商品の同時購入を促進し、売上単価のアップが期待できます。

小売業におけるデータ分析の流れ

 小売業におけるデータ分析は、「目標を決める」「仮説を立てる」「データを収集する」「分析する」という流れで行います。

1. 目標を決める

 データ分析を行う際は、最初に分析の目的を明確にすることが大切です。目的がはっきりしていると、必要なデータ分析方法を定めて分析を適切に進められます。目的が定められていない場合、そもそもどんな分析結果が必要なのかがわかりません。不要なデータ分析を行っても、売上の向上に役立てられません。最終的なゴールとなる目標を含め、明確な目的を設定します。

 まずは現在の状況を確認して、店舗でどのような問題が発生しているか、現状を把握します。現状が確認できたあとで、「現在の売れ筋商品を明確にする」など、データ分析を行う具体的な目標を設定します。具体的な目標設定が難しい場合は、「売上の向上」などの大まかな目標を設定し、徐々に目標を具体化していく方法もあります。

2. 仮説を立てる

 目標を設定したら、次に仮説を立てます。目標を達成するために、何が原因で問題が発生しているのか、何に着目すると問題を解決できるのか、疑問に対する仮説を立てて、データ分析の方向性を定めていきます。

 たとえば、売上が落ちている現状を受けて「売上の向上」を目標に設定した場合には、売上低下の問題が発生している原因の仮説を立てます。具体的には「売上が悪い日には雨が降っていた」「曜日によって売れる商品が違う」など、さまざまな仮説を立てて、原因を予測します。もしも設定した仮説が成り立たなかった場合には、もう一度違う仮説を設定し直します。

3. データを収集する

 仮説を設定した後は、検証するための分析方法を決定します。分析方法により、必要なデータは異なります。店舗が収集・管理しているデータの種類が限られている場合には、使用できるデータの種類に制限があるため、限られた分析方法から選択しなければなりません。

 分析を行う際は、一定のデータサンプルが必要になります。分析方法を決定し、収集すべきデータの種類をあらかじめ決めてからデータの収集を行います。POSレジで収集される購買データをはじめ、ポイントカードの顧客情報、接客時のデータ、顧客アンケートなど幅広いデータを日頃から管理しておくと、精度の高いデータ分析が可能です。

4. データ分析する

 必要なデータを収集したあとは、データを統合・整理し、分析を開始します。分析のためにデータを最適化してから必要な分析方法でデータ分析を行うと、収集したデータを十分に活用して仮説の検証を行えます。

 最適なデータと分析方法で行うと、店舗が有する課題や解決方法まで用意把握することが可能になる可能性が高まります。

 データ分析の結果が改善につながらなかった場合は、仮説の変更などを行って、分析をやり直します。分析のあとに施策を行い、結果を評価することで、経営を徐々に改善していくことが可能になります。

データ分析における3つの視点

 小売業におけるデータ分析は、ひとつの視点だけでなく、店舗視点、顧客視点、商品視点の3つの視点から行います。どの視点から行うかによって、分析の取り組み方に違いがあるため、求める情報に応じて視点を変え、分析する必要があります。

店舗視点で見た場合

 店舗視点で行うデータ分析としては、店舗ごとの収益をデータ化してその差を比較する分析方法が考えられます。売上の多い店舗と少ない店舗を把握して、売上の少ない店舗でキャンペーンなどの改善施策を行います。

 自店舗の場合はデータを集めやすいため、データ分析も始めやすいです。自店舗の商品、価格、流通など、売上につなげるための営業活動、取り組みなどに問題がないか調査し、発見した問題を改善していきます。

顧客視点で見た場合

 店舗にとって顧客は、商品を購入し、利益をもたらす重要な存在です。そのため、顧客の行動や変化の分析は店舗経営で欠かせない視点です。顧客視点でデータ分析を行うことで、顧客のニーズに適した商品の提供を実現できます。新規顧客を増やし、顧客をロイヤルカスタマー(店舗やブランドに信頼を寄せる顧客)に育てるために必要な改善策を得ることが可能になり、データ分析を顧客にとって魅力的な店舗づくりにつなげられます。

 近年はポイントカードを活用する企業が増加したことで、販売データに会員の顧客情報が紐づけられているケースが増えています。そのため、顧客の年齢、性別、住所などの属性や、顧客が購入する商品、求めている商品の傾向などが把握しやすくなっています。

 さらに、会員と会員以外で、売れている商品の違いも把握することが可能です。会員にはどのような商品を購入する顧客が多いか、会員以外にはどのような商品が売れているかなどが把握できると、ターゲット層に対して適切なマーケティング施策が実施できます。

商品視点で見た場合

 小売業では、商品を販売して店舗の運営を行います。そのため、商品の管理が適切に行われていないと、商品の在庫切れによる販売機会損失や、売れない商品の在庫がいつまでも残ってしまう仕入れの無駄などが発生します。商品の仕入れから、販売、在庫状況までデータを活用して分析した場合、商品の販売に関して、値下げや陳列場所、仕入れ数などを工夫して売り上げ向上につなげることが可能になります。

 購買データは、POSレジのデータから収集できます。売れ筋商品やトレンド商品、同時購入される商品など、さまざまなデータが確認できます。ある商品と同時購入されやすい商品を把握することで、「こちらもいかがですか」と勧めるべき商品が何なのかが把握できます。

 商品の特長を押さえ、商品による対応方法の違いを把握することで、マーケティング戦略が策定でき、売り上げの向上が期待できます。

まとめ

 小売店のデータ分析は、売上や来店客数、客単価など日々のデータの収集が鍵となります。「KPI(重要業績評価指標)」を使用したデータ分析を行うと、店舗の運営状況を把握、改善しなければならない点が見つけられます。

 データ分析は、店舗視点、顧客視点、商品視点の3つの視点から行うことができ、視点によって調べる内容も異なります。店舗の目的に適したデータ分析方法を取り入れると、効率的に顧客満足度の向上、売上アップにつなげられるでしょう。

NTT東日本が提供する「CXソリューション」でデジタル活用

小売業の個別最適なone to oneマーケティングをご支援

小売業に関するお問い合わせはこちら

お問い合わせ

先行き不透明な時代における小売業のデータ分析・活用入門

ビジネスのデジタル化が急速に進む昨今。収集・分析したデータを経営戦略に活用する「データドリブン経営」に注目が集まっています。この潮流は小売業界においても例外ではありません。消費者のニーズが多様化し急速に変化する先行き不透明な時代で小売事業者が生き残るには、データドリブン経営の実現がカギとなります。本ホワイトペーパーでは、そもそもデータドリブン経営とは何かを整理するとともに、取り組みを成功させるために押さえておくべきポイントも解説します。

資料ダウンロード

連載記事一覧

メルマガ登録


NTT EAST DX SOLUTION


ミライeまち.com


「ビジネスの最適解」をお届けします 無料ダウンロード資料


イベント・セミナー情報

ページトップへ

ページ上部へ戻る