2023.03.13 (Mon)

小売業で広がるICT活用(第43回)

小売店の万引き対策はどうすべき? 万引きされやすい店舗の特徴とは

 小売店の経営者を悩ませるのが、「万引き」の被害です。たとえ1件あたりの被害額は少なかったとしても、件数が増えれば経営に支障をきたしますし、万引き対策を徹底したとしても、今後はコストの負担が大きくなります。本記事では、万引きの被害規模や万引きされやすい店舗の特徴などを紹介し、万引きの手口、すぐに実行できる小売店の万引き対策、各防犯アイテムの効果的な設置の仕方や注意点などを紹介します。

万引き事件の実情

 警察庁が発表した「令和3年の刑法犯に関する統計資料」によると、万引きの認知件数や検挙人員は、2012(平成24)年から2022(令和4)年にかけて減少傾向にあります。ここでいう「認知」とは、被害届の提出や現行犯の目撃などにより、警察が犯罪の発生を知ったことを意味します。そのため、店側が被害届を出さずに、万引き犯を許したような場合は、万引き事件の認知件数としてカウントされません。

 株式会社野村総合研究所が経済産業省へ宛てた2018(平成30)年の報告書では、年間の万引き被害総額を6,574億円と推計しています。これは決して少ないとはいえない額です。

 こうした状況を鑑みると、たとえ小さな店舗であっても、万引き対策は決しておろそかにはできません。犯行の手口を知り、効果的な対策をとる必要があります。

万引きされやすい小売店の特徴とは

 万引き対策をする前提として、そもそも万引きされやすい店舗には、いくつかの特徴があります。

特徴1. 見通しが悪い

 万引きは店員や他の顧客の目を盗んで行われるものです。そのため、人の目に触れない場所が店内に多いほど、万引きされる可能性が高まります。たとえば、商品棚で遮られてレジから顧客の姿が見えなくなっていたり、商品が雑多に積まれていて死角が生じているようなケースが該当します。

 店内の見通しだけに限らず、店外からの視認性も重要です。ガラス張りの店舗であれば、店外からの視線もあるので万引きが起きる可能性は低くなります。逆にいえば、店外から見えにくい店舗ほど、万引きの危険性は高まるということです。

特徴2. 店員数が少ない

 たとえ店内や店外からの見通しが良かったとしても、店員が少ない店舗では、すべての顧客の動きが把握しにくくなるため、やはり万引きが発生しやすくなります。

 パートやアルバイトなどを雇っている店舗は、時間帯により店員数が増減することも珍しくありません。混雑しがちな時間帯には多くの店員を確保し、それ以外の時間帯には少数の店員で回している店舗もあるでしょう。しかし、店員の数が少なくなるとすべての顧客に目が行き届かず、万引きのリスクも高まります。

特徴3. 万引き対策を行っていない

 目に見える形で万引き対策を行っていない店舗も、万引きが発生しやすくなりがちです。

 たとえば、目立つ形で防犯カメラや防犯ゲートなどを設置していれば、万引き犯に警戒され、万引きが未然に防げます。

 しかし、仮に防犯カメラを据え付けていたとしても、店内にカメラの死角になるような場所があると、万引き発生の抑止効果は乏しくなります。防犯カメラは「店員の目の補助」と捉え、見通しの悪い場所に配置すべきでしょう。

把握しておくべき万引きの手口

 万引きへの対処を適切に行うためには、万引き犯の手口の把握は欠かせません。犯行の態様ごとに紹介します。

単独犯の場合

 万引きが単独で行われる場合のよくあるパターンが、店員の目を盗んでバッグやポケットなどへ商品を入れて持ち出すというものです。商品棚から直接隠し入れることもありますが、トイレや階段の裏といった人目につかない場所で隠すケースも少なくありません。

 商品を隠して持ち出すパターンだけでなく、堂々と持ち出す手口もあります。服や靴を身につけて、そのまま店外に出ていく方法や、あたかも買い物を済ませたかのように装い、未会計商品をレジ袋やマイバッグに入れて立ち去るという犯行もあります。特に最近は、マイバッグやマイ買い物かごを使う人が増えているため、袋やかごを持って外に出ても怪しまれにくくなりました。

複数犯の場合

 万引きが複数人で行われる場合には、さらに手口が巧妙化します。たとえば、数名が実行犯を囲むことで、店員や他の顧客の目に触れさせないよう隠すといった方法もあります。人為的に死角を生み出すため、見張るのが難しくなります。

 トイレの小窓などを通じて、商品を外部の協力者に手渡すという方法もあります。人間の身体は抜け出せなくとも、商品だけなら受け渡すことが可能です。店内の死角にあたる場所に窓があると、こうした手口を誘発します。

 おとりを使い、店員の注意を引いている間に万引きを行うケースもあります。店員が不審な動きをするおとり役を捕まえたとしても、その人物は何も商品を盗っていないため、手出しができないという手口です。

内引きの場合

 「内引き」とは、店員をはじめとする内部の人間による万引き・窃盗です。単に商品を盗る行為だけでなく、レジや金庫内の金銭を着服する行為なども含まれます。

 内引きの特徴は、内部犯によるため、店舗の運営によってはいくらでもごまかすことができ、不正行為が露呈しにくいことです。たとえば、搬入や棚卸しのタイミングで商品を盗めば人目につきにくくなり、帳簿に虚偽の記載をすれば品数のズレが隠ぺいできる可能性があります。よって責任者が店舗に不在なことが常態化していたり、金銭や商品の管理が甘い場合は、内引きも生じやすくなります。

万引き対策にはどのようなものがあるのか

 万引き対策には、いくつかの手法が存在します。ここでは大きく2点に分けて紹介します。

対策1. 目を見て挨拶する/声掛けをする

 簡単に実行できる対策として、相手の目を見ながらの挨拶や、積極的な声掛けが挙げられます。東京万引き防止官民合同会議による調査では、万引きを諦める原因として「店員の声掛け」との回答割合が、世代を問わず最多でした。

 店員が目を見て挨拶することで、相手に「顔を見られた」と思わせれば、万引きの予防効果も高められるでしょう。何かを買う素振りもないのに店内を長時間歩き回っていたり、店員に対して警戒する素振りを見せるような挙動不審な行動を取る人物には、積極的な声掛けをすることが大事です。

 とはいえ、挨拶や声掛けは、あくまでも万引きへの心理的な抵抗感を高めるに過ぎず、確実に犯行を防げる方法ではありません。加えて、閑散時など店員が少ない場合には実行が難しくなります。

対策2. 警備員を巡回させる

 店員、顧客、防犯カメラに加えて、警備員の巡回も万引き対策に有効です。店員ではなく警備員が見回ることで、万引きの予防効果は高まります。とりわけ、制服を着用した警備員の存在は、衝動的な犯行の防止や、万引きが取り締まり対象であることの印象付けといった効果が期待できます。加えて、犯行を目撃した顧客からの通報も受け付けやすくなります。

 ただし、警備員を雇う際は一定のコストがかかります。加えて、巡回のタイミングやスケジュールが決まっていると、不在のタイミングを狙われる恐れがあります。

 店舗の被害状況や万引き対策に割けるコストを考慮した上で、警備員が巡回するべきか否かを判断する必要があります。

防犯アイテムの設置も検討しよう

 万引きの予防効果とコストの節約を両立させるための手段として、防犯アイテムに頼るというも良いでしょう。ここからは、防犯アイテムを3点取り上げます。

防犯カメラの設置

 防犯カメラを設置することで、商品棚の陰になる場所やフロアの隅など、店員や他の顧客の目が届かないところも監視できるようになります。

 設置の際は、「防犯カメラを設置している」という事実も明示すべきです。防犯カメラがあると知られていなければ、万引きの予防にならない上に、隠し撮りの疑いをかけられる恐れもあります。

 防犯カメラの設置にあたっては、場所や用途に合った種類のものを選ぶ必要があります。具体的には、AC電源と配線が必要になる有線カメラ、ワイヤレスで使用できる無線カメラ、録画はしないものの、防犯カメラで撮影しているように見せかけるダミーカメラです。ダミーカメラは低コストですが、見破られてしまうと防犯効果が失われるのが難点です。

防犯ミラーの設置

 店員の死角を無くすという点では、防犯ミラーも効果的です。防犯カメラなどよりも低コストでありながら、ミラーを通じて店員から見える範囲が広げられます。防犯効果以外にも、商品の棚替えをしていた店員がレジの混雑に気付き、迅速なフォローができるといった、防犯以外の効果も期待できます。

防犯ゲートの設置

 防犯ゲートは、万引きした商品を持ち出した場合、ブザーで知らせてくれます。店舗の出入り口に設置しておけば、万引きへの抵抗感を高められるでしょう。

 ただし、実際に商品を持ち出しても、防犯ゲートが反応しないケースもあります。防犯ゲートが確実に動作するよう、定期的なメンテナンスが求められます。

まとめ

 万引きの認知件数や検挙人員は年々減少傾向であるものの、被害額の多さは決して無視できない規模です。対策としては、声掛けや警備員の巡回、防犯アイテムを活用する手があります。近年はクラウド型防犯カメラや顔認証システムなど、さまざまな防犯アイテムが登場しています。こうした機器を活用すれば、万引きの被害を最小限に抑えられることも可能です。適切な万引き防止対策を行い、経営リスクを減らしましょう。

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