2023.03.15 (Wed)

小売業で広がるICT活用(第45回)

顧客ニーズに応えるためのデザインシンキング活用法

 

 コロナ禍、テクノロジーの進化など、小売業はかつてない環境の変化に直面しています。顧客のニーズに寄り添いながら事業を成長させていくために注目したいのが、「デザインシンキング」です。この記事では、デザインシンキングの基本について解説し、小売業が取り入れる際のポイントを紹介します。

デザインシンキングとは?

 デザインシンキングとは、端的に言うとデザイナーの思考をビジネスに当てはめて活用する考え方です。人の価値を中心に考え、アイデアを発展させ、プロトタイプを設けることで得たフィードバックをもとに目的達成に対して創造的に取り組む手法です。

 デザインシンキングは、スタンフォード大学教授であり、デザイン会社「IDEO」の創設者でもあるデイビッド・ケリーが、2005年、同大学にd.schoolを創設したことで、世界的に認知されるようになったと言われています。なお、デザインシンキングと似た言葉に、アートシンキングがあります。こちらは、自分の自由な発想や感性をもとに、新しいものを作り出すという考え方です。

 近年では経営においてもデザインシンキングが取り入れられています。2018年には、経済産業省・特許庁が、「デザイン経営宣言」を行い、デザインを重要な経営資源として活用し、ブランド力とイノベーション力を向上させる経営を推進しています。

 そもそもなぜ、デザインシンキングをビジネスに取り入れる必要があるのでしょうか?従来の商品開発において主流だったのは、仮説を検証して商品を開発し、効果を検証する「仮説検証型」のアプローチでした。しかし、現在の世の中にはモノやサービスがあふれ、ユーザーが機能や品質で差を見分けにくい「コモディティ化」が進んでいます。さらに、少子高齢化が進んで人口構造が変化したり、デジタルテクノロジーがこれまでにない進化を遂げたり、人々のニーズが多様化したりと、ビジネスにおいて将来の予測が困難なVUCA(Volatility<変動性>・Uncertainty<不確実性>・Complexity<複雑性>・Ambiguity<曖昧性>)の時代になっています。このような状況において、従来の「仮説検証型」のアプローチでは、人々のニーズに応える製品やサービスを生み出しにくくなったからです。

 企業がデザインシンキングを導入するとさまざまなメリットがあります。まず、ユーザー視点で本質的な課題やニーズを考えるため、ユーザーが本当に必要としている製品やサービスの開発につながります。

 つぎに、デザインシンキングの過程では、複数のメンバーでさまざまなアイデアを考案します。アイデアを考える習慣が身に付くと同時に、多様な意見を受け入れることで自身の発想力を高めることもできます。また、多くの従業員が製品やサービスの開発プロセスに携われるメリットもあります。

 最後に、デザインシンキングはプロトタイプを作ってテストをして、改善していくという過程を踏みます。失敗を恐れずに「まず、やってみる」という姿勢が身に付きます。

デザインシンキングの実践プロセス

 デザインシンキングの基本的な実践プロセスは、下記のようになります。

①観察・共感

 ユーザー視点でユーザーの行動を観察し、ときにはヒアリングなどを行い、ユーザーの考え方や気持ち、ニーズをつかみます。

②課題定義

 観察・共感で得た情報をもとに議論し、ユーザーにとって重要な課題や本当に望んでいるものは何かを考えて言語化します。

③アイデアの考案・プロトタイプの試作

 課題を解決するためのアイデアを考案します。多角的に議論しながら、多くの発想が出ることが理想的です。その中からユーザーニーズを満たすために特に有効なものについて、製品やサービスのプロトタイプを作ります。

④テスト

 プロトタイプをユーザーに利用してもらい、フィードバックを得ます。課題が解決できているか検証してプロトタイプを改良します。再度、テストを行い、プロトタイプの精度を上げていきます。

 小売業におけるデザインシンキングでは、上記①~④について、次のような試みが有効だと考えられています。

 ①観察・共感においては、経営者や従業員が自ら客となって自店で商品を購入したり、商品の仕入れの様子を注意深く観察することで課題定義につながるでしょう。②課題定義では、売り上げ起点ではなく顧客起点でビジネスを考え、お客さまの真のニーズを見つけることで、小売業の肝であるサービス・接客の向上を図ります。③アイデアの考案・プロトタイプの試作、④テストにおいては、商品の見せ方、接客方法、リアル店舗とオンラインでの情報発信の住み分けなどを考え、繰り返し検証を行い、改善を重ねることが大事です。

 デザインシンキングは、国内外のさまざまな企業が取り入れています。たとえば、ある家電メーカーは、家電や住宅のデザイナーなどで構成される専門組織を立ち上げました。この組織は、アイデア出しから商品化までを担い、これまでにない商品を生み出しています。また、ある製薬会社は、デザインシンキングを取り入れることで、ブランド視点から顧客視点へと転換してD2C事業を見直しました。顧客へのリサーチなどを通して、健康への悩みや生活への困りごとを追究することで潜在的なニーズを掘り起こし、サイトやコンテンツをリニューアルしました。さらに、生活雑貨などを開発・販売するある企業は、人間の生理的な快・不快を研究して開発に生かすことでヒット商品を生み出しています。これもデザインシンキングのプロセスの①観察・共感を重視した例と言えるでしょう。

外部ソリューションを活用して、デザインシンキングを社内に定着させる

 デジタルシンキングを導入する場合、これまで社内にない思考法のため、従業員の理解が必要になります。また、社内でチームを編成してもメンバーが部署異動によって長期間継続できない懸念があります。さらに、デザインシンキングのプロセスを自社の事業に合わせて構築する必要もあります。以上のような理由から、デジタルシンキングを自社だけで実践するのが難しい場合もあるでしょう。その場合、外部ソリューションを活用するのもひとつの方法です。外部ソリューション選定のポイントは、デザインの専門家がいて、かつ実績がある組織を選ぶことです。

 NTT東日本が提供するCXソリューションは、貴社のマーケティングの営みに寄り添いながら、デザインシンキングを活用して取り組むべき課題を明確化します。さらに、問題定義~情報収集~プロトタイプ制作~ユーザーテストというステップを、短いサイクルで繰り返し実施することで、最適解にアプローチします。

小売DXは「経営陣の心構え」で成功する

政府による後押しもあり、各業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが加速しています。その中ではデータ活用が重要となりますが、業界によってはデータの活用度合いに開きが見られます。小売業ではどうなのでしょうか。本ホワイトペーパーでは、「小売DX大全」の編集者である神奈川大学 経営学部 国際経営学科 准教授 中見真也氏の意見を基に、小売業DXの進捗や日本の小売事業者が抱える課題を整理した上で、小売業DXを成功に導くポイントについて解説します。

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