2023.03.31 (Fri)

建設業はICTで変わるのか(第31回)

建設業の工数削減に寄与する「顔パス」入退場管理

 建設業界の人手不足が深刻化する中、多くの建設事業者は時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」に直面しています。労働人口の減少は以前から指摘されており、建設業界全体として生産性向上・業務効率化に取り組むことが求められています。これらを実現するひとつの選択肢として、昨今では「顔認証」で入退場管理を行えるソリューションが登場しています。今回のコラムでは、建設現場での顔認証の活用について解説します。

働き方改革関連法への対応が迫られる建設業

 建設業界では、これまでも長時間労働や休日の少なさが問題視されてきました。この課題を解決できていないまま、2024年4月からは建設業への「働き方改革関連法」が適用されます。

 2021年時点での年間の総実労働時間は、全産業の平均と比較して340時間以上(約2割)長い状況です。1997年における年間の総実労働時間と比較すると、全産業の平均時間は約255時間削減されているものの、建設業は約50時間しか削減されていません。年間出勤日数の推移に関しても、建設業界は全産業の平均と比べて約30日多いことが国土交通省の調査によって明らかになっています。建設工事全体を見ると、作業員の約4割が4週4休以下で就業しているのが実態です。

 働き方改革関連法で定められた基準以上の時間外労働に対しては罰則が科せられるため、労働時間の短縮を目的とした生産性向上・業務効率化が急務となっています。

 国土交通省は建設業界の働き方改革を推進すべく、「建設業働き方改革加速化プログラム」を発表しました。生産性向上に関しては、以下を課題解決の例として提案しています。


ICT活用を促すための積算基準の見直し
  • ・共通仮設費(技術管理費)の見積もりの見直し
  • ・直接工事費(賃料)の地域差の見直し
  • ・共通仮設費(技術管理費)の保守点検・システム初期費の見直し
  • ・共通仮設費(技術管理費)の経費はく離の見直し
技能を継続的に学び直す「建設リカレント教育」推進 国土交通省が2017年度より実施している教育訓練機関を導入した事業モデルの推進
公共工事の書類の簡素化 国土交通省関東地方整備局が2021年9月に改定した「土木工事電子書類スリム化ガイド」による工事書類の簡素化の推進
IoTや新技術の導入 国土交通省が2025年度までに2割向上をめざすi-Construction(建設現場の生産性向上)ではデジタルデータをリアルタイムに取得してIoTやAI技術と連携することを推奨
現場に配置する作業員の将来的な減少を見据え、配置義務の合理化を検討
  • ・国土交通省による現場の作業員不足への対策を検討中
  • ・技術者試験制度の対象拡大に向けた環境整備
  • ・下請け企業の主任技術者配置要件の合理化
  • ・監理技術者配置要件の合理化

「顔認証」による入退場管理が工数削減につながる

 先に示した通り、国土交通省全体として建設業界にIoTやAI技術の活用を推奨していることがうかがえます。国土交通省が「建設業働き方改革加速化プログラム」で掲げるIoTおよび新技術の導入、現場に配置する作業員の減少、配置義務の合理化への具体的な対応の1つとして、「顔認証システム」を使った作業員の入退場管理が挙げられます。

 作業員の入退場管理は、安全管理や労務費の点から建設現場では必ず実施しなければならない項目です。しかし、現状は記録簿への記入や、現場監督への報告によって入退場管理を行うことが多く、誤記入や報告漏れなどのヒューマンエラーが発生する可能性が否めません。また、そもそも入退場管理ができていない建設会社もあり、入退場管理が正確に行えないという課題がありました。

 顔認証システムを使えば、「誰がいつ現場に出入りしたか」をリアルタイムかつ正確に把握できるよようになり、労務費管理などの現場業務を効率化できるようになります。新規プロジェクト立ち上げの際、過去工数を参考とした適切なコストを算出しやすくなることにもつながるのではないでしょうか。

顔パスからつながるDXへの道

 顔認証システムを利用した入退場ソリューションの導入は、建設現場のデータ連係を促し、デジタル化への扉を開くことにもつながります。 工数を削減しやすい領域からデジタル機器を導入したい、作業員の管理に顔認証システムを役立てたいというニーズを抱えていても、どのようなソリューションが自社に適切なのか迷う場合もあるでしょう。そのような場合は、建設業界に精通したICT事業者などに相談することがおすすめです。

建設業 デジタル技術導入・活用ガイド

建設業の過剰な労働時間は長年にわたって問題視されてきましたが、いよいよ2024年4月1日に「残業時間の上限規制」が適用されます。規制に違反すると懲役・罰金刑に処され、悪質なケースでは企業名公表もあるため、労働時間の見直しは建設事業者にとって喫緊の課題です。国土交通省や厚生労働省はICT活用に向けた支援を実施しているものの、十分に普及していないのが現状です。本資料では、建設業のデジタル化に詳しい大阪大学 矢吹信喜教授の見解を踏まえ、2024年問題対策のポイントや進め方を解説します。有効なデジタル技術に言及しながら、事業者がこれから検討するべき対処法を紹介します。

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