DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉に代表されるように、多くの企業でデジタル化による業務プロセスの効率化が進んでいます。
さまざまな施策が導入されていますが、そのひとつが「EDI」です。EDIは、郵送やメール、FAXなどでやりとりをしていた注文伝票や契約書といった書類を、電子データ上で行うための技術です。EDIの導入は、建設業界では国土交通省主導で推進されています。
この記事では、EDIの仕組み、導入の方法、建設業界におけるEDIの現状と今後の展望を解説します。
EDIとは
EDIとは、「Electronic Data Interchange」の略で、そのまま訳すと「電子データ交換」という意味です。ビジネスにおいては、主に契約や受発注、請求などに関するデータを示すため「電子受発注」と呼ばれることもあります。EDIによって、取引に関わる書類を専用回線やインターネットを通じて、電子的に処理できます。
EDI導入のメリット
EDIを導入することでのメリットには以下のようなものがあります。
業務効率化
EDIを導入することで、書類の印刷、記入、捺印処理や、FAX・郵送する手間がかからなくなります。取り込んだデータを自動で取引先に送信できるため、自社と取引先の双方で、書類の送付状況などを管理する手間を削減できます。
ペーパーレス化
書類のやり取りがデータ上で行われるため、ペーパーレス化につながります。税関係の帳簿などを電子データで保存するためのルールである電子帳簿保存法では、数回の改正によって要件が緩和され、国も企業のペーパーレス化を推進しています。
コスト削減
ペーパーレス化によって、紙代・インク代・郵送料といった経費を削減できます。契約や受発注、請求などに必要な書類を印刷して、封筒に入れ、郵送するといった作業コストの削減も見込めます。
EDIの課題
多くのメリットがあるEDIですが、課題もあります。EDIによって電子データで企業間取引をするためには、自社だけではなく、取引先もEDIに対応しなくてはなりません。電子データで書類管理と取引先とのやり取りを行おうとしても、取引先がEDIを導入していなければ、その企業との取引は紙と手作業による書類のやり取りを行う必要があります。結果として、電子データと紙の書類を二重で管理する手間が生じることになります。
WEB-EDIとは
近年さまざまなサービスが登場しているのが、「WEB-EDI」です。WEB-EDIは、データのやり取りをインターネット回線とブラウザで利用できます。SaaS(クラウドベースで提供されているサービス)が多く、専用のシステムが必要なEDIに比べて、コストを抑えながらスピーディに導入することができます。
建設業界におけるEDIの活用状況
EDIは、建設業界で活用が進んでいます。一般財団法人建設業振興基金の経営基盤整備支援センター 情報化推進室では、建設産業全体の生産性向上を図るため「CI-NET(Construction Industry NETwork)」と呼ばれるEDIの枠組みを開発しています。
建設業界での企業間の商取引には、商談での見積依頼から、注文、請求、決済の各段階で、都度、帳票のやり取りが行われています。CI-NETは、これらを電子的にやりとりできるようにすることで、業界全体の生産性向上を図ろうとするものです。
各企業はCI-NETに対応したシステム、またはCI-NETに対応したEDIサービスや業務ソフトウエアを導入することによって、取引先と電子商取引ができるようになります。
この取り組みによって、CI-NET導入に必要な企業識別コードの登録企業数は2021年3月末時点で1万4000社を超え、大手企業だけではなく北海道から沖縄まで、日本全国に導入企業が存在しています。
今後の展望・まとめ
EDIとはどういったものか、建設業界におけるEDIの活用状況について解説しました。2022年1月に改正が施行された電子帳簿保存法では、電子データでやり取りをした国税関係の書類のデータ保存が義務付けられるなど、EDIは今後普及が進んでいくと考えられます。
建設業界においては、CI-NET規格に準拠した「CIWEB」というCI-NETに準拠したEDIサービスも登場しています。より多くの企業で標準規格のEDIの採用が進めば、EDIは建設業のビジネスに欠かせないものとなっていくでしょう。
建設業 デジタル技術導入・活用ガイド
建設業の過剰な労働時間は長年にわたって問題視されてきましたが、いよいよ2024年4月1日に「残業時間の上限規制」が適用されます。規制に違反すると懲役・罰金刑に処され、悪質なケースでは企業名公表もあるため、労働時間の見直しは建設事業者にとって喫緊の課題です。国土交通省や厚生労働省はICT活用に向けた支援を実施しているものの、十分に普及していないのが現状です。本資料では、建設業のデジタル化に詳しい大阪大学 矢吹信喜教授の見解を踏まえ、2024年問題対策のポイントや進め方を解説します。有効なデジタル技術に言及しながら、事業者がこれから検討するべき対処法を紹介します。
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