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2023.02.15 (Wed)

建設業はICTで変わるのか(第17回)

施工管理で重要な「工程管理」とは?効率化するための方法を解説

 建設業界のプロジェクトは、他業界と比較して完了までに長い時間を要します。施行以外にも設計や工事監理など、多くの担当者が業務を分担するため、管理業務は複雑になりがちです。本記事では、工程管理を担う人に向けて、4つの軸となる「工程管理」「原価管理」「品質管理」「安全管理」の中から、特に重要な工程管理を取り上げて解説します。

建設業における施工管理について

 建設業における施工管理の仕事は、多岐にわたります。施工管理の担当者は、施工計画をはじめ、予算から書類の作成、安全事項など、工事現場に関するすべてを適切に管理しなければなりません。施工管理の仕事内容は、主に4つの軸で構成されています。

1. 工程管理

 工程管理とは、工期内での完成を目標にスケジュールを管理する重要な業務です。現場の職人など、工事にかかわるさまざまな人員の配置やスケジュール調整だけでなく、必要な重機の手配も行います。

 大規模な建設工事の場合、プロジェクトが年単位になることも珍しくありません。規模が大きくなるほどプロジェクトにかかわる人も多くなるため、工程管理を適切に行うには、相応の知識や経験だけでなく、コミュニケーション能力やマネジメント能力が求められます。

2. 原価管理

 原価管理とは、決められた予算内で建物を建設するために、材料費や外注費などの原価を管理・調整して利益を確保するための手法です。赤字や利益の減少を未然に回避することで、コストの改善を図ります。

 資材価格は変動が多く、工事費の項目も細かくなるため、情報の管理は複雑になりがちです。さらに、予算内で求められた基準を満たす必要もあります。さまざまな状況を加味しながら不足やムダがないかを判断し、適正に原価管理を行うことで、コストの削減をめざします。

3. 品質管理

 品質管理とは、建物などが設計図や仕様書どおりに進捗しているかどうかをチェックする業務です。建設で求められる「品質」とは、主に強度や密度を示します。施主の求める品質を満たすために、評価の試験や工程ごとに施行が完了した部分を確認して証拠の写真を残し、次の工程へと進みます。

 建築物は、当然ながら長期的な利用が想定されます。重大な欠陥の見落としはトラブルにつながりかねません。問題に気づかないまま物件を引き渡してしまえば、企業の信頼やブランドイメージの低下につながります。建物の耐久性や機能に直結する品質管理の仕事には、想定外のリスクを想像するスキルと、現場の職人と信頼関係を築くためのコミュニケーション能力が求められます。

4. 安全管理

 常に危険と隣り合わせの建設現場では、事故を未然に防ぐ安全管理が不可欠です。建設現場には、高所での作業や重機の出入り、体に大きな負担のかかる力仕事など、労災事故に発展する原因が数多く潜んでいます。そのため企業や管理者は、作業員の安全や健康を確保するために、設備管理や健康管理、安全教育などを入念に行う必要があります。

 通行人などの部外者が事故に遭わないよう、交通誘導や現場のパトロールを行うなど、さまざまな部分に目を配りながら作業を進めていく必要があります。無事故で建設工事を終えるために、ヒヤリハットに関する報告を集めて周知し、改善策を講じるなど、現場の環境を整えることが安全管理の仕事となります。

工程管理はなぜ重要なのか?

 工程管理を適切に実施することで、トラブル発生時の迅速な対応が可能になります。納期に追われる建設現場で工事の質を維持するには、いかにムダを省いていくかが重要です。以下、工程管理を行うメリットを列挙します。

1. 納期を遵守するため

 建物の建設には、必ず納期が設定されています。工程管理によって進捗状況を正しく把握できていれば、天候不良や現場で課題が発生した際も、スムーズに計画を見直せます。

 納期の遅れが発生すると、職人の人件費や重機のリースを延長するためのコストが発生します。場合によっては、施主に遅延損害金や損害賠償の支払いを求められるケースもあります。リスクを回避するために、全体のスケジュールを現場の作業員に共有し、納期遵守に対する意識を高めるなどの工夫が求められます。

2. 高品質を維持するため

 工程管理は、建物の品質や作業品質の向上につながります。施主の希望する品質もしくは期待以上の物件を納品できれば、顧客満足度の向上も見込めます。顧客が納得のいく仕上がりにまで品質を高めるためには、適切な工程管理を行い、必要な資材や人材を作業現場に配置する必要があります。

 工程ごとに作業内容を明確化し、時間に追われることなく作業に取り組める環境を整備すれば、ヒューマンエラーの発生も防止できます。

3. 生産性を向上させるため

 施行計画・工程管理の徹底は、生産性の向上に有用です。現場で作業する職人を計画的に確保して段取りよく作業を進めていけば、生産性の向上が実現します。適切な工程管理は、的確で迅速なスケジュール調整を可能にするため、さまざまなムダを削減できます。

 生産性の向上により工期が短縮できれば、リピート率や利益の向上も見込めるはずです。人材に適した配置は、現場で働く作業員のモチベーションアップに有効です。

4. 無駄なコストを削減するため

 作業現場のムダを洗い出すことで、リードタイムの短縮による生産性が向上し、作業員を長期間確保する必要がなくなることで、必要以上にかかっていた人件費を減らせます。

 さらに、工程管理の一環として、スムーズな情報共有が可能になる仕組みを取り入れることで、施工ミスの原因になりやすいコミュニケーションエラーが削減でき、これまで工事が長引くことで発生していた諸経費も削減できます。

工程表を作成するための一般的な手段

 時間を費やして工程表を作成しても、必ず計画どおりに工事が進むとは限りません。工程管理がうまくいかなかったときには、原因を突き止めて改善を繰り返す「PDCAサイクル」を回し、管理の質を高めていく必要があります。

 工程表を作成する際は、プロジェクトの規模や自社の環境に適した手法を採用すべきです。以下に工程表の作成法を列挙します。

紙面・ホワイトボードで作成・管理

 数人程度で進める小規模な施工であれば、紙面やホワイトボードを使ったアナログな工程表で十分な場合もあります。工程表を作成したあとの加筆や修正が簡単に行えたり、費用が安価に済む点がメリットです。

 一方でデメリットとしては、記入漏れなどのヒューマンエラーが発生したり、作業員同士や外部の協力会社と共有しづらい点が挙げられます。かつ、長期間の保存に向いておらず、保存する場合はExcelなどに転記が必要になります。

Excelで作成・管理

 工程表は、Excelやスプレッドシートでも作成・管理できます。Excelの数式や関数の機能を活用すれば、煩雑な計算を行う手間が省けます。Excelを導入している企業は多いため、外部との共有も容易です。ただし、人の手により作成されるため、入力ミスなどのヒューマンエラーはどうしても発生します。

工程管理を行う手順

 先述したように、工程管理はPDCAサイクルを取り入れて定期的に見直すことで、さらなる効率化が期待できます。PDCAとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字を取ったフレームワークであり、継続的に管理業務の改善を図るための手法です。以下に、PDCAを行う手順を解説します。

1. 計画を立案・工程表の作成(Plan)

 最初のステップとなるPlan(計画)では、建設する建物の設計図や施工法、施工順序に基づき、日程や作業手順といった内容を盛り込みながら、工事計画および工程表の作成を行います。工程表を作成する際は、すべてのスケジュールを把握するために必要な全体工程表のほかに、重点的な管理が必要となる部分に対する部分工程表を作成します。

 ガントチャート(横線式工程表)を採用すれば、どの時期に何をすべきか、いつまでにその作業を終える必要があるのかを視覚的に理解できるため、スムーズな情報共有が可能になります。

2. 計画を基に実行(Do)

 作成した工事計画・工程表を基に工程管理を実行(Do)します。工事管理者は、計画とズレが生じていないかを確認するため、作業日報などを活用しながら、現場と綿密な情報共有を図っていきます。万が一トラブルが発生した際は、現状を把握し、課題を詳細に記録します。記録した内容は、次の評価(Check)で活用します。

3. 浮上した問題点を評価(Check)

 施工を実行していく中で浮上した問題の評価(Check)を行い、原因を追及するステップです。問題点を評価するときは、誰が見ても問題点が理解しやすいよう、客観的な数値やグラフを用いるのが良いでしょう。

 特に確認すべきは、工期の遅れや原価の肥大です。工期が遅れている場合には、当初計画されていたスケジュールと現状の進捗状況、このままのペースで作業を進めた場合の予想スケジュールを示したガントチャートを並べれば、現状の遅れがどのくらい深刻なものなのかが把握しやすくなります。

4. 問題点の改善(Action)

 先の評価で問題点を特定したら、次は改善(Action)のステップに移ります。当初の工事計画と実際の工程にズレが生じていれば、問題の性質に応じて作業の改善を図るか、計画を見直す必要があります。人手不足が問題になっている場合、人員の増加を図ることで改善が見込めます。

 ただし、改善策を講じても実際に問題が解決するとは限らず、工事を進めていく中で新たな問題が生じる可能性もあります。したがって、長期的に適切な工程管理を維持するためには、PDCAのプロセスを継続的に回し続けていくことが大切になります。

工程管理の効率性を高めるには

 建設現場では、工程・予算・品質・安全のいずれが欠けても作業は円滑に進みません。現在では、工程管理を適正に遂行して効率性を高める多様なツールも提供されています。工程管理の効率化に有用なシステムの導入は、多くの課題を解決に導きます。

建設業向け工程管理システムの導入がおすすめ

 工程管理の効率化を図るには、建設業向けの工程管理システムを導入するのが良いでしょう。工程管理システムでは、工程表の作成をはじめ、工程表と実際の作業進捗を比較したり、案件ごとのデータ管理を実行する機能を備えたものが多くなっています。さらに、関係者間でのチャット機能などのコミュニケーション機能を実装したものもあります。こうした工程管理システムを活用することで、これまで手作業で行っていた作業を自動化・省力化すれば、管理者の負担が軽減されます。

 新しいシステムを導入するには、当然ながら初期費用や利用料をはじめとしたランニングコストが必要です。しかし、工程管理が大幅に改善されれば、生産性の向上やコストの削減など、さまざまな効果が期待できます。

 工程管理に課題を抱える企業にとって、システムの導入は非常に大きなメリットをもたすはずです。

建設業向け工程管理システムを導入するメリット

 

 工程管理システムのメリットとして挙げられるのは、協力会社も含め、関係者間で情報を共有しやすくなることです。これまでのアナログな方式では、スムーズに情報共有できことが課題でした。しかし、クラウドに対応した工程管理システムを採用すれば、作業現場からモバイル端末を利用して、必要な情報へ迅速にアクセスできる環境が整備できます。

 さらに、システム上にデータを集約できるため、部門横断的な情報共有も可能です。一般的な工程管理システムには、工程表を作成するために必要な機能が搭載されており、パソコン作業に不慣れな作業員でも簡単に利用しやすいため、管理業務の属人化も改善できます。

 ヒューマンエラーの低減に有用な点も、工程管理システムを活用するメリットです。高度に標準化・自動化されたシステムの機能を利用することで、ミスや見落としなども防止できます。

まとめ

 生産性を大きく左右する工程管理をスムーズに行うには、工程管理システムの導入が効果的です。自社のニーズに適した工程管理システムを導入し、PDCAサイクルを回して改善を図っていけば、工程管理の最適化が実現します。工程管理に課題を抱えているのなら、工程管理システムの導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

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建設業の過剰な労働時間は長年にわたって問題視されてきましたが、いよいよ2024年4月1日に「残業時間の上限規制」が適用されます。規制に違反すると懲役・罰金刑に処され、悪質なケースでは企業名公表もあるため、労働時間の見直しは建設事業者にとって喫緊の課題です。国土交通省や厚生労働省はICT活用に向けた支援を実施しているものの、十分に普及していないのが現状です。本資料では、建設業のデジタル化に詳しい大阪大学 矢吹信喜教授の見解を踏まえ、2024年問題対策のポイントや進め方を解説します。有効なデジタル技術に言及しながら、事業者がこれから検討するべき対処法を紹介します。

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