近年はさまざまな新しい技術のビジネス活用が見られるようになりましたが、なかでもIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の普及は目を見張るものがあります。総務省の「令和3年 情報通信白書」によると世界のIoTデバイス数は右肩上がりを続けており、2020年時点で約253億台が利用されています。
近年は建設業界にもIoTを活用する動きが見られていますが、なぜ建設業界でIoTが注目されるようになったのでしょうか。本記事では、IoTを導入することによって建設業界が得られるメリットを、導入事例をとともに解説します。
建築業界が抱える課題
建設業界の人手不足は大きな課題となっています。
国土交通省が発表した「建設業及び建設工事従事者の現状」によると、2016年平均の建設業就業者数は約500万人であり、ピーク時であった1997年の685万人と比較すると約28%も減少しています。さらに同資料によると、2016年時点での建設業就業者は55歳以上が約3割を占め、29歳以下は約1割しかおらず、従業員の高齢化も深刻な状況です。高齢者は近い将来定年退職を迎えるため、人手不足にさらに拍車がかかる可能性が高い状況です。
この建設業が抱える「人手不足」という課題に対して、解決の糸口となり得るのがIoTなのです。
なぜ建築業×IoTなのか
IoTの普及により、さまざまな電子機器や機材がネットワークでつながることで、業務に関連したデータや映像がリアルタイムで取得できるようになりました。これは人手不足で悩む建設業には朗報といえます。
建設業界は人手不足などの問題により、ひとりの現場責任者が1日のうちに何カ所もの現場を管理する必要がありました。しかしIoTを導入することで、建設現場に行かずとも、現場の各種機器からデータや映像を計測できます。離れた場所でも現地の映像がリアルタイムで確認できるようになり、移動時間も削減できるようになりました。
建築業界におけるIoT導入の事例
大成建設株式会社
同社は日本マイクロソフト株式会社と連携して、IoTおよびAIを活用した協業を開始。そのなかで、IoTを活用して生産施設での従業員の作業状況の見える化を実施しました。
同社は人手不足という課題に対し、施設や装置の改善に加え、従業員の作業状況についても、ネットワークカメラなどを用いてリアルタイムで確認し、そこから得られるさまざまなデータを活用したシステムを開発しました。
さらに、従業員の心拍や体温、姿勢などの身体の状態、所在、作業環境のデータをIoTで随時取得し、関連情報をモニタリングしています。同時にAIで分析を行い、従業員の作業負荷軽減や労働環境を改善するための効率的な作業計画立案、作業状況を考慮した動線・レイアウトなどを検討し、従業員に最適な指示を提示しています。
株式会社東伸コーポレーション
建設業界では、年々コンクリートに対する品質要求が厳しくなっており、製造技術の高度化が図られています。しかし、生コンクリートや原材料販売を行う同社は、熟練従業員の勘と経験で検査を行っており、従来から品質検査方法を変えていませんでした。
そこで同社は、生コンクリートの品質検査の生産性を高め、かつその品質を適正に評価できる仕組みを作るべく、ミキサー車にIoTデバイスを設置。生コンクリートの品質データをリアルタイムでクラウドにアップロードし、品質変化データを取得・可視化できるシステムを導入しました。
結果、生コンクリートの品質の経時変化が簡単に確認できるようになったうえ、熟練従業員の勘と経験に頼らない品質検査が可能になりました。加えて、気温や湿度、材料といった各種条件が生コンクリートの品質に与える影響も分析できるようになりました。
まとめ
国土交通省は現在、IoTやAIといったICTを活用して建設現場の生産性向上を図る 「i-Construction」を推進しており、今後も建設現場でIoTが導入されるケースは増えていくと予想されます。自社にIoTが導入できないかどうか、検討してみてはいかがでしょうか。
建設業 デジタル技術導入・活用ガイド
建設業の過剰な労働時間は長年にわたって問題視されてきましたが、いよいよ2024年4月1日に「残業時間の上限規制」が適用されます。規制に違反すると懲役・罰金刑に処され、悪質なケースでは企業名公表もあるため、労働時間の見直しは建設事業者にとって喫緊の課題です。国土交通省や厚生労働省はICT活用に向けた支援を実施しているものの、十分に普及していないのが現状です。本資料では、建設業のデジタル化に詳しい大阪大学 矢吹信喜教授の見解を踏まえ、2024年問題対策のポイントや進め方を解説します。有効なデジタル技術に言及しながら、事業者がこれから検討するべき対処法を紹介します。
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