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2023.03.31 (Fri)

建設業はICTで変わるのか(第32回)

新規入場者教育のデジタル化からはじめる建設現場DXとは

 多数の関係者が出入りする建設現場では、新規入場者に対して作業開始前に現場の状況や独自のルール、安全を確保するための注意事項を教育する新規入場者教育が実施されています。この新規入場者教育は口頭と紙で行われており、現場監督への負担が大きいこと、効率的な業務の進め方ではないことが指摘されてきました。このコラムでは、新規入場者教育を始めとした建設現場の業務を効率化するための方法を紹介します。

建設業の災害発生件数が増えている

 厚生労働省が発表している2022年の労働災害発生状況を見ると、建設業界の死亡災害発生件数は288件で、全産業における死亡災害発生件数の約30%を占めています。2021年の258件と比較すると11.6%の増加です。死亡災害につながった事故の原因として最も多かったものは「墜落・転落」。その後には「崩壊・倒壊」「はさまれ・巻き込まれ」が続いています。

 近年では設備災害の発生件数こそ少なくなったものの、作業員の不安全行動(決められた方法やルールに沿わない、安全ではない行動)やヒューマンエラーに起因する労働災害は継続して発生しています。工事現場に関する知識や情報を十分にインプットしていない新規入場者が作業に加わる危険性を踏まえて、建設業界では作業開始前に現場の状況や独自のルール、安全を確保するための注意事項を教育する「新規入場者教育」を行うことが定められています。

 新規入場者教育は、「作業所の安全衛生計画の内容の伝達」「作業員が混在し作業を行う場所の状況」「危険の生ずる場所の状況」「避難方法」などの内容を、職長や安全衛生責任者が口頭で伝えるという形で行われるのが一般的です。

建設現場の新規入場者教育が抱える課題とは

 建設現場には協力会社の作業員が多数出入りしています。これまでのように、新規入場者それぞれに15分~30分かけて教育を行うやり方は、効率的とは言えません。さらに以下のような問題も指摘されています。

新規入場者の管理が煩雑だ

 新規入場者教育の実施基準は「関係請負事業者が請負工事を開始する時」「関係請負事業者が稼働中の現場に加わり、その作業所に初めて入場する時」の2パターンです。鳶職、内装職など工期が進むにつれ多数の関係者が出入りすることから、新規入場者教育の対象者を判別することにも手間がかかっています。

工程に合わせた膨大な教育資料が必要になる

 建設工事の過程には、さまざまな作業工程が含まれています。現場の状況に合わせた作業員を手配するため、その都度新規入場者教育のための資料を作成しなければなりません。紙ベースの資料では保管場所も必要になります。

外国人作業員にも的確な指示を出せる資料を用意しなければならない

 外国人作業員に新規入場者教育を行うときは、言語や文化の違いのために、認識の齟齬が発生するリスクがあります。正しく内容を伝えるために平易な言葉で説明したり、多言語のマニュアルを作成したりするなどの工夫が求められます。

ソリューション導入で新規入場者教育を効率的に実施

 こうした課題の解決に取り組んだ企業の例を紹介します。従業員500人規模の中堅ゼネコンA社でも、前述のように新規入場者教育を現場監督が行っており、1回につき15~30分の稼働が発生していました。さらに新規入場時アンケート記載内容のチェックも必要となっており、こういった業務が朝の多忙な時間帯に重なることで、他業務へ影響を与える点が課題となっていました。

 そこで同社は新規入場者教育を効率よく行うために、新規入場者教育を動画配信で行うことにしました。これによって日々の稼働が削減できるだけでなく、多忙な時間帯に時短ができることで他の業務も効率的に実行できるようになりました。

 これまで現場監督が行ってきた新規入場者教育の業務を削減するだけでなく、サイネージ(大型ディスプレイ)での配信を通じた注意喚起によって、安全教育の効率化と形骸化防止にも役立てています。今後は外国人作業員向けに多言語化対応も行う予定です。

ICT化で新規入場者教育の手間を省いて形骸化を防ぐ

 このように、建設現場の新規入場者教育が抱えている課題は、ICTツールを使うことで解決できます。新規入場者教育のための動画を、現場に設置したサイネージやタブレット、または作業員のスマートフォンで閲覧してもらえば、担当者の負荷を大幅に軽減するだけでなく、担当者が説明し忘れるというヒューマンエラーも発生しにくくなります。

 視覚情報として伝える方が、口頭での説明や紙ベースの資料を配布するよりもわかりやすい新規入場者教育を実現できます。動画の多言語化によって、外国人作業員も内容を理解しやすくなるでしょう。

 複数の現場で共通して使う動画は、一度データを連携してしまえば、何度も作成する必要がありません。動画を大型ディスプレイで定期的に再生することで、新規入場者教育の形骸化を防ぐことにもつながるでしょう。安全な建設現場を実現する上で、重要なポイントと言えます。

新規入場者教育以外にも建設業の業務効率化が可能

 こうしてICTツールは、新規入場者教育だけでなく、建設現場のさまざまな業務の効率化に役立ちます。

 新規入場者教育を実施する上で必要となる作業員の入退場管理は、顔認証システムで効率化することが可能です。「顔認証による本人情報」「GPSによる位置情報」「時刻情報」によって、「誰がいつ現場に出入りしたか」をリアルタイムかつ正確に把握できるようになり、労務費管理などの現場業務を効率化できるようになります。

 顔認証の導入は、ICカードを使った「なりすまし」のリスク低減にもつながります。建設現場における作業員情報の登録業務を簡略化できるでしょう。

※グリーンサイト グリーンファイル(労務・安全衛生に関する管理書類)を、クラウド上で簡単に作成・提出・確認できる株式会社MCデータプラス提供のサービスです。

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 現場管理を可能とするソリューションの中には、ECプラットフォームと連携することで、必要な建設資材や道具を発注したり、建設現場へ直接納品したり請求処理も行えたりするものもあります。作業所に戻る必要がなくなるため、担当者にかかる負荷は大幅に軽減できます。

 作業の進捗や工程表、ウェブカメラの映像をサイネージに集約することで、リアルタイムの情報共有も可能になります。

 自社に必要なツールが洗い出せない場合は、ソリューションの紹介やハードウェアの調達を請け負ってくれる専門家に相談するという選択肢もあります。ICTツールを使いこなして、作業現場の業務効率化を実現してください。

建設業 デジタル技術導入・活用ガイド

建設業の過剰な労働時間は長年にわたって問題視されてきましたが、いよいよ2024年4月1日に「残業時間の上限規制」が適用されます。規制に違反すると懲役・罰金刑に処され、悪質なケースでは企業名公表もあるため、労働時間の見直しは建設事業者にとって喫緊の課題です。国土交通省や厚生労働省はICT活用に向けた支援を実施しているものの、十分に普及していないのが現状です。本資料では、建設業のデジタル化に詳しい大阪大学 矢吹信喜教授の見解を踏まえ、2024年問題対策のポイントや進め方を解説します。有効なデジタル技術に言及しながら、事業者がこれから検討するべき対処法を紹介します。

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