2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

2023.02.15 (Wed)

建設業はICTで変わるのか(第13回)

建設業におけるDXとは? DXでどんな課題が解決できるのか?

 2025年以降、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、日本は超高齢社会に突入すると予測されています。少子高齢化の進展や生産年齢人口の減少といった社会的背景から、さまざまな分野で「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進が重要課題となっており、なかでもその実現が急務となっているのが建設業です。本記事では、建設業でDXの推進が必要とされている背景や、その実現によって解決できる課題について解説します。

建設業におけるDXとは

 DXとは、2004年に当時スウェーデン・ウメオ大学の教授であったエリック・ストルターマン氏が論文のなかで提唱した用語で、「デジタル技術が人々の生活をあらゆる面で豊かにしていく」といった意味合いとして定義されている概念です。近年では、最先端のデジタル技術を活用し、経営体制そのものに変革をもたらす取り組みとして浸透しています。

 まずは、なぜ日本の建設業でDXの推進が求められているのか、その背景について解説します。

建設の生産プロセスをデジタル化して最適化すること

 建設業におけるDXとは、AIやIoT、クラウドコンピューティング、ロボティクスなどのデジタル技術を戦略的に活用し、既存の生産プロセスに革新的な変化をもたらすことです。

 現在、日本の総人口は2008年の1億2,808万人をピークに下降の一途を辿っており、総人口に占める高齢者率は29.1%と、世界で最も高い水準となっています。同時に、生産年齢人口は1995年の8,716万人を頂点として減少に転じており、多くの分野で人手不足が深刻化しているのが現状です。

 さまざまな産業で人手不足が加速するなか、建設業では就業者の高齢化が進展しており、若年層の入職者が減少傾向にあります。さらに建設業では、5年間の猶予が与えられていた「働き方改革関連法」の適用が2024年4月から開始されます。同法では時間外労働の罰則付き上限が設定されているため、違反しないためには、労働環境の抜本的な変革が必要です。こうした新たな法規制に基づく労働環境の再整備と、プロセスにおいて生じる諸問題のことは、業界では「建設業の2024年問題」と呼ばれています。

 このような社会的背景のなか、建設業に携わる企業が持続的に発展していくためには、最先端の情報通信技術やセンシング技術、ロボティクスなどの活用による経営改革が必要です。デジタル技術を事業領域に取り入れ、既存の生産プロセスを省人化・自動化できれば、人手不足による労働生産性の低下を補えるうえ、建設業そのものが抱えているさまざまな経営課題の解消が期待できます。

建設業におけるDXがなかなか進まない理由

 建設業では、デジタル技術の活用による経営改革が急務となっているものの、多くの企業が「IT化」の領域に留まっており、「DX化」の実現には至っていないのが実情です。その理由のひとつに、「アナログな業務が多い」という業界特有の特徴が挙げられます。

 20世紀末から21世紀初頭にかけてIT革命が起こり、さまざまな産業でデジタル化が加速しました。ところが、建設業はアナログ的な現場作業が主体であり、現代のデジタル技術ではその生産プロセスに対応しきれません。

 たとえば、施工管理のリモート化や図面のペーパーレス化、ドローン技術を活用した測量といった業務領域では、デジタル活用が進みつつあります。しかし、基礎工事の型枠組みや鉄筋加工、外構工事のブロック積み、土間コンクリートの金鏝仕上げなど、熟練工の属人的な技術を必要とする業務領域のデジタル化は非常に困難です。さらに、現場作業を主体とするアナログな生産体制ゆえにITリテラシーが低く、デジタル化への抵抗感をもつ人材が多い点も、DXが進まない理由のひとつといえます。

 DX推進が停滞しているもうひとつの理由として、資金調達の難しさがあります。DXを推進するためには、デジタル技術の設計・実装やIT人材の発掘・育成といった工程が必須であり、そのプロセスにおいて相応のIT投資が求められます。大企業のように豊富な資金調達手段を持たず、多重下請構造の下請けの部分で現場作業を担う中小企業では、投資資金を調達するのは容易ではありません。

 このような背景から、DXの重要性を十分に理解しつつも、その実現には至っていない企業が多い、というのが建設業界の現状です。

建設業におけるDXのメリット

 建設業は、デジタル化の遅れが目立つ業界ではあるものの、大手ゼネコンや大企業ではAIやクラウドコンピューティング、ドローン技術といった先進技術の活用が進みつつあります。こうしたデジタル技術の活用によって得られる主なメリットは、以下の3点です。

人手不足の解消:人に頼らない構造を作る

 DXの実現によって享受できる代表的なメリットとして挙げられるのが、建設業界全体で深刻化している人手不足の解消です。就業者の高齢化と若手入職者の減少が進展する中で、建設業に従事する企業が中長期的に発展していくためには、可能な限り属人的なスキルに依存しない生産体制を構築する必要があります。そのためには、いかにして既存の生産プロセスを省人化・自動化するかが重要な経営課題です。

 たとえば、建設重機の遠隔操作システムの実用化が進めば、運搬や破砕、掘削などのリモート化が実現し、生産プロセスの省人化や作業員の移動時間削減などに寄与します。大容量かつ多数同時接続が可能な5Gの活用が進み、遠隔操作システムが実現すれば、やがては自宅にいながら建設重機を操作することも不可能ではありません。人手不足に伴って、建設重機を運転できる技術者が減少していくと予測されるため、クレーンやバックホウといった重機の自律運転は建設現場に変革をもたらす技術として大きな期待を集めています。

業務の効率化:全体業務の見直しによる効率化を図る

 DXの推進は、既存の業務プロセス全体を見直す契機となり、組織全体における生産性の向上につながります。そもそもDXとは、単なるIT化に留まらず、最先端のデジタル技術を活用して経営体制に変革をもたらし、市場における競争優位性を確立することが本質的な目的です。この目的を実現するためには、既存の業務プロセスをIT化するだけでなく、デジタルソリューションの戦略的活用によって、ビジネスモデルや組織構造そのものの変革を推進しなくてはなりません。

 したがって、まずは自社の経営課題となっているボトルネックを洗い出して分析し、問題の解決に必要となる中長期的なロードマップを設計する必要があります。その過程で、慣習となっていたタスクの見直しや、老朽化した業務システムを刷新することで、既存の業務プロセス全体の改善につながります。結果的に、全社横断的な情報共有やコミュニケーションの円滑化、手戻りの削減や確認作業の効率化などに寄与し、経営基盤の総合的な強化が期待できます。

技術継承の円滑化:デジタル化による円滑な技術承継

 建設業においてDXを実現するもうひとつのメリットは、デジタル化の推進による技術承継の円滑化です。先述したように、建設業界では就業者の高齢化が進むと同時に、若年層の入職者が減少傾向にあり、熟練工から若手・中間層に対する技術承継の遅れが問題視されています。現に、帝国データバンクが実施した調査によると、建設業界に従事する企業の61.5%が「後継者不在」と回答しています。そこで重要な役割を担うのが、DXの推進に伴うナレッジマネジメントの実践です。

 ナレッジマネジメントとは、熟練工のもつ高度な知識や技術といった暗黙知を、言語化ないし数式化し、形式知へと変換して共有することで、業務効率化と生産性向上に役立てる経営管理手法を指します。デジタル技術の活用によって、形式知へと変換した暗黙知をデータベースに蓄積することで、そのデータ化したナレッジを組織全体で共有可能です。技術承継がスムーズになるのはもちろん、先進的なデジタル化を推進する企業として、若年層への接点を強化する一助となります。

建設業界のDX推進で活用される技術

 DXの実現における重要課題のひとつは、自社の経営体制に適したソリューションの選定です。ここでは、建設業界のDX推進で活用されるデジタル技術について解説します。

ICT(情報通信技術)の導入

「ICT(Information and Communication Technology)」とは、「情報通信技術」と和訳される用語であり、コンピュータを用いた情報処理やネットワーク通信技術などの総称を指します。AIやIoT、クラウドコンピューティング、ファイルサーバー、LAN、スマートフォン、データ分析基盤、基幹系システム、情報系システム、ドローン技術などの基盤となる技術です。現代市場においてICTの活用は必須であり、DXを推進するには、さまざまな技術を活用するための基本環境を整える必要があります。

AI(人工知能)によるシミュレーション

 「AI(Artificial Intelligence)」とは、日本語で「人工知能」のことです。データベースに蓄積されたデータ群から規則性や傾向などを導き出し、それを法則化する「機械学習」のベースとなる技術がAIです。建設業では主に、データの集計・分析に基づく自動化のシミュレーションや反復学習、映像技術を用いた技術承継といったシーンで活用されています。

SaaS(クラウドサービス)で場所を問わずデータ共有

 「SaaS(Software as a Service)」とは、クラウド環境で提供されるソフトウェアやアプリケーションを提供するサービスを指します。オンラインストレージやビジネスチャット、メールクライアント、Web会議システムなど、さまざまな業務領域に対応できるサービスが豊富に存在する点が大きな特徴です。SaaS型のクラウドサービスは、物理的なITインフラを構築する必要がなく、インターネット環境さえあれば、時間や場所にとらわれず利用できます。全社横断的な情報共有を推進するうえで欠かせない技術です。

ドローン技術による業務領域の拡大

 ドローン技術とは、一般的にはカメラ機能を搭載した無人航空機の総称を指します。自動制御や遠隔操作による飛行が可能であり、建設業では測量や高所の点検といった業務領域で活用が進んでいる技術です。とくに、工事現場の正確な地形を把握するために測量は必須の業務であり、ドローン技術の活用によって、作業日数の大幅な短縮と必要な人材の削減が実現できます。少ない人数でコストを抑えつつ測量や点検といった業務を進められるため、人材不足の深刻化が進む建設業界に貢献する技術のひとつです。

 建設業界は人材不足や就業者の高齢化、技術継承問題などのさまざまな課題を抱えており、DXの推進が急務となっています。こうした課題を解決するとともに、競合他社との差別化を図り、市場の競争優位性を確立するためには、デジタル技術の戦略的活用が欠かせません。新しい時代に即した先進的な経営体制を構築するうえで、ICTやAI、クラウドコンピューティング、ドローンといった技術の活用は不可欠となるでしょう。

まとめ

 建設業におけるDXとは、最先端のデジタル技術を活用し、既存の生産プロセスそのものに抜本的な変革をもたらすことです。少子高齢化の進展や生産年齢人口の減少といった社会問題を背景に、建設業では就業者の高齢化や若手入職者の減少が深刻化しています。このような背景のなか、建設業を営む企業が市場の競争優位性を確立するためには、DXの推進が不可欠です。AIやIoT、クラウドコンピューティングなどのデジタル技術を事業領域に取り入れることで、人手不足や技術継承といった経営課題を解決する一助となります。新しい時代に即した生産体制を構築するためにも、デジタル技術の戦略的活用による経営改革を推進すべきでしょう。

先進企業の事例に学ぶ建設現場DXの最新動向

人手不足や高齢化が進む建設業界ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれて数年が経過したものの、思うように取り組みが進んでいない企業もあるのではないでしょうか。そこには、「どのような方法で行えばよいかわからない」、「現場で具体的なイメージをもつことができない」、「デジタルになじみにくい社風である」といった要因も関係しているでしょう。そこで本資料では、日本建設業連合会が公開している「建設DX事例集」を中心に、建設業のデジタル化の取り組みを多彩な業務・技術の観点から解説します。数多くの事例に触れることで、これから始める自社の改革へのヒントを得られるでしょう。

資料ダウンロード

連載記事一覧

メルマガ登録


NTT EAST DX SOLUTION


ミライeまち.com


「ビジネスの最適解」をお届けします 無料ダウンロード資料


イベント・セミナー情報

ページトップへ

ページ上部へ戻る