2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2023.03.13 (Mon)

建設業はICTで変わるのか(第22回)

i-Constructionとは? ICTを建設現場に導入するメリットを解説

 建設業界には、繁忙期・閑散期による受注の極端な増減や人手不足など、さまざまな問題があります。建設作業には危険なものもあるため、万が一事故を起こすと人員が欠けてしまうだけでなく、管理責任から損害賠償にまで発展する可能性もあります。こうした多くの問題を解決するために、国土交通省ではi-Constructionを掲げ、建設業界を刷新するための施策を打ち立てました。

i-Constructionとは国土交通省が掲げる取り組み

 i-Constructionは、日本の建設プロジェクトの効率化と品質向上を目的とした、国土交通省が掲げるプロジェクトです。まずはi-Constructionの詳細と取り組みの理由について解説します。

国交省が掲げるプロジェクトのひとつ

 i-Constructionは、建設プロジェクトのプロセスと品質を向上させるために、ICT(情報通信技術)を活用します。コンクリート工事、3Dプリンター、ロボティクスといった各種技術を、調査・測量、設計、施工、維持管理などに使用することで生産性の向上をめざします。

 さらに、ICTの導入だけでなく、部材の標準化や工期の平準化によって現場作業の改善も行います。これまで建設業界では現場ごとに製品を製造して、その場に合った方法で設計していました。しかし、これではプロジェクトごとに工期や品質が変わってしまう問題があります。そこで、設計、発注、材料調達、加工、組立などの各工程を最適化することで、コスト削減と生産性の向上をめざします。

 その他、公共工事などでは、繁忙期と閑散期が季節ごとにあり、労働環境が偏ってしまう問題もあります。この問題の解決策として考えられたのが、施工時期の平準化です。これによって、限られた人材を効率よく活用でき、年間を通じて施行数の安定化をめざします。

i-Constructionが始まったのはなぜ?

 日本では、人口の減少と高齢者の増加が危惧されています。内閣府が公表したデータによると、2065年には人口が8,808万人になり、国民の2.6人に1人が65歳以上になると試算されています。

 このような状況では、建築業界のみならずあらゆる業界で人手不足が深刻化し、業務を運営することが難しくなることが想定されます。さらに建築業界の労働環境は、賃金や休暇の問題などから現在でも若手離れが進み、人材不足が問題化しています。

 こうした課題を解決するには、「労働環境の改善」と「人材不足の解消」を解決するための施策が必要です。まず人材不足を解消するには、少ない人手でも業務を継続できる環境をつくり出さねばなりません。そこで期待されているのが、ICTの導入による業務効率化です。さらにICTの導入は、建設業界のネガティブイメージの払拭にも役立ちます。危険な業務をICTに任せることで、従業員は危険を冒さずに現場で業務を行うことが可能になります。

i-Constructionにおける「3つの柱」

 国土交通省の資料によると、i-Constructionの柱は以下の3つです。

・ICTの全面的な活用(ICT 土工)
・全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)
・施工時期の平準化

 たとえば、ICTの利用用途として「ドローンによる測量」「3Dモデル化」「AIやロボティクス技術による施工・点検」などが挙げられます。

 コンクリート工の規格の標準化では、「鉄筋のプレハブ化」「部材の定型化」などによって、現場内の効率化をもたらし、天候に左右されないで作業を実施できるといった効果が期待できます。

 施工時期については、国土交通省は各自治体に対して平準化を推進するよう通知しました。これにより閑散期の落ち込みが回復し、1年を通して安定的に工事の受注が可能としています。

i-Constructionによって得られるメリット

 i-Constructionによって、建築業界は大きく変革を遂げようとしています。現在、労働環境や人手不足に悩んでいる企業は、こうした時代の流れに対応してメリットを享受しましょう。

メリット1:作業を効率化できる

 ICTやデータの活用は、業務の効率化に貢献します。たとえば、ドローンによる測量を実施すれば、これまでの測量と比べて業務を効率的かつ正確に行えるようになるでしょう。

 これまで測量では、トータルステーションなどによる地上からの測量やセスナ機などを使った上空からの測量が一般的でした。地上からの測量の場合は、人が入れない場所は難しく、高所では危険が伴うこともあります。一方、飛行機による測量では、コストが大きくなるのがデメリットです。

 その点、ドローンを使用すれば人が入れない狭い場所も簡単に測量でき、高所にも対応可能です。高いコストを払う必要もなく、手軽に3Dモデルが作成できるため、従来のデメリットを解消しつつ効率的な測量が可能となります。

メリット2:人件費を削減できる

 近年は、ICTを導入した建設機械(建機)が出現しつつあります。こうした建機は、MG(マシンガイダンス)やMC(マシンコントロール)が可能であり、人件費の削減につながります。

 MGの場合は、建機内のモニターに施工方法を映し出し、どのように施工すべきかを教えてくれます。一方、MCは、機械自体が自動で動作するため、人間が建機に対して簡単なサポートをすることとなります。

 これまで建機を扱うにはある程度熟練された技能が必要で、人によってばらつきがありました。しかし、MGを導入することで経験の浅い従業員も一律で同じ施工ができるようになり、MCを導入すれば、以前なら3人必要だった作業もひとりで行えるようになり、作業時間の短縮も期待できます。これらをうまく活用すれば、少ない人材で素早く施工ができるようになるため、人件費の削減につなげられます。

メリット3:イメージ向上が期待できる

 建築業界には、汚い・きつい・危険というマイナスイメージをもつ人がいます。しかし、i-Constructionを導入すれば、こうしたイメージの払拭が期待できます。

 ICTの導入やコンクリート工の標準化を実施することにより、少ない人数で効率よく施工が行えるようになるため、従業員は体を酷使して作業をする必要が少なくなります。また、標準化や平準化の推進により繁忙期・閑散期のばらつきが少なくなり、工期が遅れる可能性も減少するでしょう。計画通りに施工が進み、効率よく業務が行えれば、週休2日で現場が回るようになる可能性が高まります。さらに、国が率先して賃金アップを推進しているため、従業員の待遇もよくなることが予想されます。

メリット4:安全性を高められる

 ICTを活用することで、危険が伴う作業を低減させることが可能になります。たとえば、ドローンやロボティクス技術を利用することで、高所での作業や確認、測量といった危険な作業を人間が行わなくてもよくなります。また、作業中の建機の周辺など危険な箇所に従業員が入った場合は、センサーなどを用いることで警告音を発することも可能です。

i-Constructionを推進する上での課題

 i-Constructionは、生産性の向上によって建設業界に革命をもたらす可能性を秘めています。ここ数年で普及が進み、現在では多くの建設会社で導入されています。しかし、i-Constructionを本格的に普及させるためには、解決しなければならない課題もいくつかあります。

ICT機器を扱うための人材育成や採用を行う必要がある

 i-ConstructionではICTを取り扱うため、利用できる人材の育成・確保が必要です。ICTを安全かつ効率的に使用するためには、適切な教育が不可欠であり、そのためには時間や費用、資源の面で投資が必要になります。

 たとえばドローンの活用についても、従業員への教育が必要です。これまで民間資格のみであったドローンは、2022年12月から国家資格も用意されました。国家資格には、一等無人航空機操縦士(一等資格)と二等無人航空機操縦士(二等資格)のふたつがあり、それぞれ以下の4つのレベルで飛行できる範囲に違いがあります。

・レベル1:目視できる範囲での手動操縦
・レベル2:目視できる範囲での自動・自立飛行
・レベル3:人のいない場所での目視外飛行
・レベル4:人のいる場所での目視外飛行

 一等資格ではレベル4までの飛行が可能となり、二等資格ではレベル3までの飛行ができます。民間資格もレベル3までの飛行は行えますが、飛行条件によっては国土交通省への申請が必要です。一方、二等資格では、民間資格と比べて申請が不要になる飛行条件が広くなっています。

ツールやシステムの導入コストがかかる

 ICTを導入するためには、ハードウェアやソフトウェアの調達や導入・保守・教育などの費用がかかります。さらにその投資に見合うだけのコストパフォーマンスも評価しなければなりません。こうすることで、費用に対して、i-Constructionがどれだけ効果があるかを測定できます。

 i-Constructionの導入にあたっては、以下の補助金や助成金が利用できます。これから導入を考えている企業は、利用の検討をおすすめします。

※募集が終了している補助金・助成金がありますが、再募集の可能性があるため掲載しています。あらかじめご了承ください。

・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
 条件により、1社当たり経費の1/2または2/3が補助されます。

・IT導入補助金
 システム導入に関連した補助金です。

・人材開発支援助成金
 作業員の訓練費用に充てられる助成金

・IT活用促進資金
 ICTによる事業変革に関して融資が受けられる制度

 各補助金・制度による補助額や控除額などは、企業の状況によって異なります。各団体のWebサイトで詳細を確認した上で活用を検討してください。

i-Constructionのキーコンセプト、CIMとBIM

 i-Constructionでは、CIMとBIMというふたつのキーコンセプトが採用されています。それぞれ取り組みは類似していますが、用途が異なります。

工程を可視化・共有するCIM

 CIMは、Construction Information Modeling(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の略です。建設の工程である設計、施工、維持管理などにおいて、3Dモデリングを採用することで、完成までの工程を可視化し、共有を可能にします。

 これまで建設現場では、「どこで何をするのか」「どのように機材を動かすのか」といった作業は、現場監督の指示に従っていました。この手法では現場監督しか作業の流れを把握していないため、現場監督が不在になると作業が進まないというデメリットがあります。一方、CIMでは、こうした情報が3Dモデリングで共有できるため、全員が何をすべきか把握できます。

建築プロジェクトをシミュレートするBIM

 BIMは、Building Information Modeling(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の略です。建築プロジェクトに3Dモデリングを使用することで、デジタルシミュレートします。

 3Dモデリングを活用するという点ではCIMと違いはありませんが、BIMは建築に関する分野で3Dモデリングを活用します。CIMは建設業での3Dモデリング使用であり、土木工事も関わってくるため、BIMより幅広い分野で3Dモデリングが利用されます。

まとめ

 i-Constructionは、少子高齢化による人材不足や建設業界のイメージ払拭などをめざし、建設プロセスと品質を向上するための取り組みです。この施策では、ICTの導入やコンクリート工の標準化、施工時期の平準化といった3本の柱を掲げており、これらを実現することで建設業界に大きなメリットがもたらされます。

 これまで多くの人材が必要であった工程も少人数で実行できるほか、危険な業務をICTで行うことにより従業員の安全を守れます。企業側は生産性向上により収益アップが見込め、従業員はクリーンな現場で働き、適正報酬にもつながるでしょう。i-Constructionにより建設業界が刷新し、人材の流入も期待されます。

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建設業の過剰な労働時間は長年にわたって問題視されてきましたが、いよいよ2024年4月1日に「残業時間の上限規制」が適用されます。規制に違反すると懲役・罰金刑に処され、悪質なケースでは企業名公表もあるため、労働時間の見直しは建設事業者にとって喫緊の課題です。国土交通省や厚生労働省はICT活用に向けた支援を実施しているものの、十分に普及していないのが現状です。本資料では、建設業のデジタル化に詳しい大阪大学 矢吹信喜教授の見解を踏まえ、2024年問題対策のポイントや進め方を解説します。有効なデジタル技術に言及しながら、事業者がこれから検討するべき対処法を紹介します。

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