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2023.02.15 (Wed)

建設業はICTで変わるのか(第16回)

施工管理システムを導入するメリット、主な機能や選び方とは

 建設現場の管理者は、効率的かつ安全に工事が進められるよう、業務全体を管理する必要があります。しかし、案件の契約内容や予算、工事計画の進捗状況など、把握すべき情報は広範囲にわたり、かつ数多くの情報を適正に把握しなければなりません。

 その際に役立つのが、施工管理システムです。施工管理システムには管理業務をサポートするさまざまな機能が用意されており、システム上で情報を一元管理できれば、大幅な業務効率化が期待できます。本記事では、施工管理システムの一般的な機能、導入するメリット、ツール選定時のポイントを解説します。

業務効率化に役立つ施工管理システムとは

 施工管理システムとは、建設事業者向けに設計されたプロジェクト管理ツールです。工事の契約から売上金の回収まで、案件に関連する情報のすべてを統合的に管理できるため、管理業務の効率化に有用です。

 一般的な施工管理システムには「予算管理」「原価管理」「工程管理」「作業日報管理」などの機能が用意されています。管理者はこれらの機能を活用し、システム上に集約された情報を確認・分析することで、煩雑になりがちな管理業務が効率的に進められます。

施工管理システムに搭載される主な機能

 管理業務では、現場への指示だけでなく、発注元との打ち合わせや取引先とのやり取り、必要な書類の作成など、いくつもの仕事が並行して進みます。業務量は多岐に渡るため、多くの従業員へ情報を共有することや、複数箇所に保管された情報を把握しておくことも、施工管理の業務内容に含まれます。

 施工管理システムに備わっている機能は、建設業が抱えるさまざまな問題解決に貢献します。ここからは同システムに含まれる機能を列挙します。

受注工事管理

 受注工事管理は、工事ごとの契約内容、物件情報、予算金額、工期といった情報を登録し・管理する機能です。登録作業の効率化や情報へのアクセス性向上が実現します。クラウド型のシステムであれば、現場から接続して必要なデータをすぐに確認できるため、事業所と現場間の情報共有もスムーズに行えます。

実行予算管理

 実行予算管理は、施工前に作成する工事の手段や費用、期間、最終利益などの情報を一元で管理する機能です。建設業では収支が変動することが珍しくないため、実行予算には精度の高さが求められます。実行予算管理を利用することで、案件別の売り上げや最終的な利益を可視化することが可能です。さらに、原価と実施予算の比較もできるため、スムーズなコスト管理が可能になります。

発注管理

 発注管理は、工事内容や事業者ごとに発注金額などの情報を登録できる機能です。発注金額は自社の利益を含む掛け率で計算できるため、入力した情報を抽出すればスムーズに注文書を作成できます。システムで管理することにより、ペーパーレス化の促進にも有用です。

工事原価管理

 建設業における原価管理では、資材の仕入れにかかった材料費や外注費の支払い、諸経費などを詳細に把握する必要があります。この際に、施工管理システムの工事原価管理機能を用いれば、受注している案件ごとの適切な管理が可能になります。

 工事原価管理機能を活用すれば、資金繰りの管理がスムーズに行えます。年単位のプロジェクトになることが多い建設業では、途中で原価変動が起こるケースも珍しくありません。施工管理システムを活用することで、難解になりやすい原価管理業務がスムーズに進められます。

工程管理

 工程管理は、施主が希望する品質を守るために、非常に重要な役割を有する業務です。工程管理機能では、工程表の作成・修正作業などをシステム上で実行・管理します。

 工程管理機能では、複数の案件を抱えている場合でも、工事ごとの進捗状況をほぼリアルタイムで把握できるため、工事に遅れが生じた際も素早く調整できます。工事現場との連携性がアップすることで、工程の見直しや人員の再配置などがスムーズに行える環境が構築できます。

作業日報管理

 作業日程管理は、案件ごとに作業日報を管理する機能です。作業現場で起こったことを詳細に把握するには、作業日報を詳しくチェックする必要があります。作業日報を適切に管理することで、現場ごとの作業進捗だけでなく、問題点も察知しやすくなります。たとえば、各現場で実際に発生した原価や追加発注の要請報告などを記録し、当初設定した実行予算と照合すれば、予算計画や最終的な売上予測を効率的に見直すことも可能です。

請求管理

 物件の引き渡し後は、発注元へ請求書を送付して、代金を回収する必要があります。この請求管理業務も施工管理システムに含まれており、この機能を活用すれば請求書の作成から送付、データの管理、入金状況の確認といった一連の経理業務が自動で行なえます。原価情報なども自動的に更新・反映されるため、経理担当者の負担軽減に有用です。

支払い管理

 建設現場では多様な資材が必要なため、資材の数が多くなるほど、事業者ごとに支払いを管理する必要があります。そのため、手作業による管理業務を効率化するには限界があります。煩雑になりやすい支払い管理ですが、施工管理システムに搭載された支払い管理機能を活用すれば大幅な効率化が見込めます。

 支払い管理機能を使うことで、支払い日を登録して依頼書を作成したり、支払い額の仕訳を自動化したり、事業者別に集計を表示することが可能になります。スムーズな支払い処理は、自社の信用を高めるためにも欠かせません。

入金管理

 支払いだけでなく、取引先からの入金管理も施工管理システムで実行できます。案件の規模によっては受注金額が大きくなるため、分割して入金されるケースも珍しくありません。そのため入金管理の経理担当者は、現時点の入金額や請求の総額に対する残額を適正に把握しておく必要があります。

 入金管理の主な業務は、取引先に送付した請求書の内容と銀行口座の入金履歴を照合し、入金日・振込金額・振込名義などを確認することや、売掛金と入金データの照合・確認です。従来のアナログな管理方法では、こうした業務を行う際に入力ミスや確認漏れの発生を回避するために、多くの時間を費やす必要がありました。

 施工管理システムの機能を活用することで、入金情報をわかりやすく可視化して、入金情報を管理できます。取引先の数が増えても対処できるため、より確実な入金管理が可能になります。

施工管理システムを導入するメリット

 近年、建設業界では人手不足が深刻化していますが、中でも業務内容が複雑な施工管理は人材の確保が難しく、効率化に向けた取り組みが求められています。そこで、施行管理システムを導入することにより、以下に挙げるようなメリットが期待されます。

業務効率を改善できる

 施工管理システムでは、工事に関する経営資源の一元管理が可能です。顧客管理や発注・原価管理、入金管理などの情報を部門ごとでバラバラに管理していると、必要なデータを探し出す際に手間と時間を要します。工事に関する情報がひとつのシステムに集約されていれば、必要なタイミングで必要な情報に、スムーズにアクセスできます。変更や修正の内容もリアルタイムで反映されるため、情報の伝達ミス防止にも有効です。

 さらに、施工管理システムには自動集計機能も搭載されているため、利益の予測も行えます。集計作業の手間が省けるため、業務のスピードアップに効果的です。

素早い意思決定が可能になる

 経営判断の遅れは、大きなリスクにつながるケースもあります。しかし、施工管理システムを活用すれば、クラウドの活用により場所を問わずに必要な情報へアクセスできる環境が整備できるため、経営層が意思決定の際に必要とする情報を素早く確認でき、結果的に意思決定の迅速化が期待できます。

 資産状況や売り上げ、利益、人材状況など、経営層が意思決定に必要な情報をリアルタイムで把握できるようになれば、これまで手作業によりデータを集計していた時と比べ、より正確なデータに基づいた意思決定が行えます。

スムーズに情報を共有できる

 施工管理システムの活用によるスムーズな情報伝達は、業務の質を高めるだけでなく、組織全体の生産性向上にも結びつきます。情報を可視化して共有すれば、オフィスと現場の間でお互いの活動状況が共有できるため、オフィスに居ながら現場の進捗状況を瞬時に把握することも可能です。

 さらに、すべての部門で共通のデータが参照できるため、業務効率化による生産性アップが期待できます。クラウドに対応したシステムを導入して情報を同期すれば、誰でも共通データにアクセスできるため、顧客や取引先から質問を受けた営業担当者も、その場でデータを参照し、スムーズに対処することが可能になります。

施工管理システムを選ぶ時のポイント

 施工管理システムは、多機能であるほど大きな効果が得られるというものではありません。あまりにも多機能な施工管理システムを採用すると、逆にうまく使いこなせない可能性もあります。自社に必要な機能を見極めて比較検討し、導入・運用コストの試算を行ったうえで施工管理システムを選定べきでしょう。以下、その検討ポイントを列挙します。

事前に自社の課題を洗い出す

 業務改善の取り組みに向けてまず行うべきなのは、課題を正しく把握することです。業務効率化を実現するためには、工事や現場管理、経理業務における問題を洗い出し、負担がかかり過ぎている業務や非効率となっている業務を特定する必要があります。課題が曖昧なまま施工管理システムを導入すると、自社のニーズとシステムの機能にズレが生じます。

 必要な機能が不足していれば、導入しても結局現場に浸透せず、逆に必要以上の機能を実装したシステムを導入すると、コストがかかりすぎる恐れがあります。機能要件を明確化したうえで、自社のニーズに適合する施工管理システムを探すべきでしょう。

自社に適した提供形態を選ぶ

 施工管理システムは、主に「オンプレミス型」と「クラウド型」のふたつの形態で提供されます。オンプレミス型の場合、自社独自のサーバーにシステムを構築し、おもに自社内のローカル環境でサービスを利用します。クラウド型は、ベンダー企業がインターネット上で提供しているサービスに接続し、機能を利用する仕組みです。

 オンプレミス型のメリットは、自社独自の要件にあわせてカスタマイズがしやすい点ですが、導入コストが高額になることや運用管理の負担が大きくなる点がデメリットです。

 一方クラウド型は導入コストが低く、運用管理をベンダー企業に一任できるため、省人化が実現します。インターネットが繋がる場所であれば、どこでも利用できるという利便性のメリットもあります。ただし、カスタマイズ性はオンプレミス型よりも低く、情報セキュリティレベルはベンダー企業への依存度が高くなります。

このように、導入する形態によって特徴やメリット・デメリットは異なるので、自社の目的や用途に合った導入形態を見極めるようにしましょう。

誰でも使いやすいシステムを選ぶ

 施工管理システムの使いやすさも、重要なポイントです。高機能な施工管理システムを導入すると、使いこなせる人材が限られ、結局は従業員が使わなくなる恐れもあります。

 施工管理システムを選定する際は、機能はもちろんのこと、操作性の高さにも焦点をあて、管理者・現場スタッフの双方が使いやすいシステムを選定すべきでしょう。必要に応じて、ベンダーが提供するサポートを利用したり、事前の講習や操作マニュアルを作成するといった工夫も必要です。

カスタマイズが可能かどうか確認する

 システムが、カスタマイズに対応しているかどうか確認することも大切です。施工管理システムの中には、導入後に仕様を変更できないものもあります。しかし、案件によって求められるワークフローは異なります。そこで、カスタマイズに対応し、仕様が柔軟に変更できるシステムを導入すれば、さまざまな案件、業界の環境の変化に柔軟な対応が可能になります。

まとめ

 施工管理システムは、現場作業の状況をはじめ、経理作業、組織運営など、建設業界におけるさまざまな業務を一元管理するためのソリューションです。施工管理システムを導入することで、自社全体の業務効率化を推進できます。

 施工管理システムを比較検討する際は、自社の課題を洗い出し、課題の解決に有用なツールを選定することが大切です。自社のニーズに適した施工管理システムを導入すれば、施工管理の業務も改善していくことでしょう。

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建設業の過剰な労働時間は長年にわたって問題視されてきましたが、いよいよ2024年4月1日に「残業時間の上限規制」が適用されます。規制に違反すると懲役・罰金刑に処され、悪質なケースでは企業名公表もあるため、労働時間の見直しは建設事業者にとって喫緊の課題です。国土交通省や厚生労働省はICT活用に向けた支援を実施しているものの、十分に普及していないのが現状です。本資料では、建設業のデジタル化に詳しい大阪大学 矢吹信喜教授の見解を踏まえ、2024年問題対策のポイントや進め方を解説します。有効なデジタル技術に言及しながら、事業者がこれから検討するべき対処法を紹介します。

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