2023.03.31 (Fri)
建設業はICTで変わるのか(第33回)
「ダッシュボード」は建設現場のマストアイテムになる
基本的に屋外で工事を行う建設業界で課題とされているのが、作業員全員への情報周知・共有です。これまでの建設現場では、気象情報や労働安全衛生に関わる注意事項、図面の変更などについては、作業員が集合する朝礼時などに口頭で伝えてきました。しかし、作業員の数が増えたり敷地が広くなったりした場合、全員に伝達事項を正しく伝えるのは簡単ではありません。ここでは、こうした課題を解決する建設現場のマストアイテムをご紹介します
建設業で重要な情報周知・共有は効率化できる
建設業では、設計や施工、建設作業といった工程ごとに異なる複数社が携わることが一般的です。作業工程ごとに分業化が進んでいるため、ひとつの建設現場には多数の企業の作業員が出入りしています。複数の工程の足並みをそろえて、作業を協調して行うためには、各作業工程がどの程度進捗しているのかという情報共有が大切です。
建設の過程では、建設機械の利用など、危険を伴う作業も存在します。いつどこで作業が行われるのかという情報を、現場の作業員に対して周知広報を行う必要もあります。さらに、建物や設備の建設が行われる現場は基本的に屋外です。天候に関する情報も重要です。降雨降雪や風の強さだけでなく、最近は熱中症対策のために予想最高気温などの情報も必要になります。
必要な情報を一覧表示する「ダッシュボード」
ダッシュボードとは、さまざまな情報源からデータを集めて、概要をまとめて一覧表示するツールです。自動車の速度やエンジン回転数、燃料の残量、走行距離などを表示する計器板もダッシュボードと呼ばれています。こちらも「運転に必要な情報をまとめて表示するもの」であることが呼び名の由来となっています。
建設現場におけるダッシュボードは、前述した作業進捗や危険を伴う作業の有無、天候に関する情報などをまとめて一覧表示するものです。ダッシュボードの表示方法は、パソコンの画面やタブレット端末、もしくは大型ディスプレイなどがあります。
近年は屋外で利用できる、防水・防じん性能に優れた大型ディスプレイが登場していて、建設現場でのダッシュボード表示に利用されています。画面が大きく、複数人が表示内容を確認できるため、これまでの掲示板と同じような使い方が可能です。
このようなダッシュボード×大型ディスプレイの組みあわせを建設現場に導入するメリットは他にもあります。大型ディスプレイでは動画が再生可能なので、朝礼や終礼時における安全啓蒙を動画を通じて行えます。さらに図面を確認するときにも活用できます。
紙を貼って情報を共有していた掲示板とは異なり、書き直しや印刷の手間が発生しない点、リアルタイムで情報を共有できる点もメリットとなります。ダッシュボードの活用は、建設現場の業務効率化やコミュニケーションの円滑化を後押しする重要な要素なのです。
LTEが届きにくい場所でもインターネット接続で活用範囲が大きく広がる
無線LANの利用環境を整えれば、タブレット端末やスマートフォンにダッシュボードを表示して閲覧することもできるようになります。各作業員に同じ情報を一斉配信することは、「言い間違い」や「聞き間違い」といったコミュニケーションミスの発生を防ぐことにもつながります。ネット接続はさらに、ECサイトとの連携による資材の発注や、いざというときの元請け会社社員の安否確認にも役立ちます。
このように、ダッシュボードの活用とそれを支えるインターネット接続環境の整備は、建設現場の情報共有を通して生産性の向上と業務効率化を支えることができます。ただし課題となると考えられるのが、導入に当たってのサービス・資材の選定です。
建設業はデジタル技術の活用やICT機器の導入という点でほかの業界の後塵を拝しています。DXの推進について、建設業では「今後の予定はない」との回答が半数以上を占めたという調査結果もあります。
確かに、自社でさまざまなサービス・機器を選定して導入し、運用するのが難しいケースもあるかもしれません。そのような場合、デジタル技術の活用やICT機器の導入については、建設業のデジタル化に詳しい業者に相談して、一貫したサポートを受けるという選択肢もあります。トラブルが発生したときの対応や保守も任せることができれば、自社は中核となる業務に専念できます。
今回紹介したダッシュボードのようなデジタル技術の活用、ICT機器の導入は、情報共有を通じて作業員の業務効率や生産性向上を支援します。その結果として、無駄な作業や危険な作業、残業などが削減できれば、労働環境の改善も実現できます。自社の建設現場の情報共有で改善すべき点があると感じているなら、ぜひダッシュボードの活用とインターネット環境の整備を検討してみてください。
先進企業の事例に学ぶ建設現場DXの最新動向
人手不足や高齢化が進む建設業界ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれて数年が経過したものの、思うように取り組みが進んでいない企業もあるのではないでしょうか。そこには、「どのような方法で行えばよいかわからない」、「現場で具体的なイメージをもつことができない」、「デジタルになじみにくい社風である」といった要因も関係しているでしょう。そこで本資料では、日本建設業連合会が公開している「建設DX事例集」を中心に、建設業のデジタル化の取り組みを多彩な業務・技術の観点から解説します。数多くの事例に触れることで、これから始める自社の改革へのヒントを得られるでしょう。
連載記事一覧
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