近年、建設業に特化したSaaSがリリースされています。建設業の情報管理は煩雑になりやすく、いかに業務効率化を推進していくかが課題ですが、クラウド上で利用できるサービスは、インターネット環境さえあれば場所を問わずに利用できるため、チームで仕事を進める業種の業務効率化が期待できます。
本記事では、SaaSの概要と導入するメリット・デメリット、サービスを選定する際のポイントについて解説します。
建設業に導入したい「SaaS」
都市部における高層ビルの建設ラッシュや老朽化したインフラの整備工事などにより、建設業の需要は高まることが予想されます。一方で、建設業界では人材不足が続いています。よって建設業界では、人材不足を補うべく業務の効率化を進めていく必要があります。
業務効率化を進めるためには、情報をスムーズに確認・共有し、ムダな時間の削減に貢献する「SaaS」サービスの導入が有効です。SaaSとは「Software as a Service」の略称で、クラウド上でソフトウェアを利用するサービスのことです。SaaSの導入により、これまでのアナログ方式では難しかった業務効率化が期待できます。
SaaSの特徴
SaaSとは、ユーザーがインターネットを通じ、サービス提供事業者がクラウド上に用意したソフトウェアを利用するサービスです。インターネット環境さえあれば、どこからでもアクセスできるという点でメリットがあります。
近年はマルチデバイス対応のサービスも増えており、パソコン以外でもタブレットやスマートフォンから利用できるなど、利便性が高くなっています。同じプロジェクトに携わるすべてのメンバーが、それぞれの持ち場でお互いの進捗状況を確認できれば、業務効率の大幅アップが期待できます。
SaaSは無料で利用できるものもありますが、使える機能やデータ容量が制限されている場合があります。多くの場合は有料版に切り替えることで、フルスペックの機能が利用できるようになります。有料サービスの中には、無料で利用できるトライアル期間が用意されたものもあります。気になるサービスが複数ある場合は、実際に試用してから判断することも可能です。
建設業にSaaSを導入するメリット
建設業にSaaSを導入することで、業務効率化やコスト削減など、いくつかのメリットが期待できます。ここからは、そのメリットを列挙します。
業務が効率化できる
従来の建設業界の現場は、口頭や電話などで職人と現場監督が連絡を取り合い、必要な情報を伝達するという、アナログなやり方が一般的でした。もし工事に変更が生じた場合は、現場監督は速やかに現場へ移動し、情報を共有する必要がありますが、口頭によるやり取りは、伝達ミスを引き起こしやすいため、工事の遅れを引き起こす要因になりがちです。
しかしSaaSを導入すれば、インターネット経由で情報が共有できるため、口頭でやり取りをする必要がなくなります。情報共有に手間を掛ける必要がなくなるため、業務が効率化できます。
初期導入費用が抑えられる
SaaSでは、サービス提供事業者が用意したソフトウェアをクラウド上で利用する仕組みです。そのため、わざわざ自社で新たなシステムやソフトウェアを開発する必要はありません。ソフトウェアを動作させるために物理的なサーバーを購入・設置する必要もないため、初期導入費用を大幅に抑制できます。ハードウェアやソフトウェアの保守運用もサービス提供事業者に任せられるため、人的コストの削減に効果的です。
ペーパーレス化が推進できる
ペーパーレス化を進めることも可能です。紙で管理している業務を、データとしてクラウド上で一元管理すれば、ペーパーレス化の促進につながります。従来の紙を用いた情報共有方法では、プリントアウトしてメンバーに配布する必要がありましたが、SaaSであればクラウド上のデータをメンバー全員が参照できるため、いつでも最新の情報をメンバー間で共有できます。
データを駆使した経営を実現できる
建設業界では、元請けから一次、二次請けへと工事が発注されるため、それぞれの事業者に見積もりや契約、請求に関するステップが発生します。案件の規模が大きくなるほど必要な書類の数は膨大となるため、書類の作成や処理に必要なデスクワークが業務の負担となります。
多数の取引先とスムーズに書類をやり取りするには、点在した情報をデータ化し、SaaSにアップロードして一元管理するのが効果的です。必要な情報が必要な時にどこからでも管理・活用できれば、経営改善の判断も迅速に行えるようになります。
サポートが手厚い
導入前の手厚いサポートにより、導入効果が得やすいのもSaaSの特徴です。利用者向けのサポートが充実したサービスや、有料のサポートプランを用意しているサービスもあります。建設の現場では、デジタル技術に不慣れな作業員が多いことも想定されます。サポートサービスが充実しているSaaSを採用すれば、パソコンやタブレットの操作に不安のある従業員でもソフトウェアを操作できるようになります。
建設SaaSを選ぶときのポイントについて
SaaSを導入したものの、期待した効果がなかなか得られないといったケースも起こり得ます。サービスの選定時には、必要な機能の洗い出しを行い、運用ルールを明確化することも必要です。以下に、SaaS選定時のポイントを紹介します。
ポイント1:目的が合っているか
SaaSを導入するにあたり、目的の明確化は非常に重要です。たとえば、図面管理が可能なサービスであっても、CADのデータ管理まで実行できるかどうか、現場でどのように活用するかを把握したうえで、サービスを選定すべきでしょう。
ポイント2:料金設定に問題はないか
SaaSにかかる主な費用は、初期費用と月額利用料です。たとえば既存システムからデータを移行する場合には、初期導入時にデータ移行費用などもかかります。
さらに、月額利用料が定額ではなく、月ごとに請求額が異なる場合もあります。利用する人数ごとに課金されるのか、部門や企業単位で課金されるのか、データ量に応じて料金が変わるのか、1カ月間サービスを利用しなかった際には料金がどのようになるのかなど、料金設定の詳細な条件を確認したうえで利用すべきでしょう。事前に具体的なシミュレーションを行うことで、適切なプランを選択できます。
ポイント3:サポート体制はどうなっているか
万が一のトラブルに備え、サポート体制を確認しておくことも大切です。自社で対応できないようなトラブルや障害が発生した際、サポート体制が十分でないと、自社の損害につながる可能性があります。
特に、自社に専門的な知識のある人材がいない場合には、手厚いサポートを提供しているサービス提供事業者に依頼したほうが安心です。ICTにおけるサービスの品質保証を示すSLA(Service Level Agreement)が明示されているサービスを選定すれば、トラブルや障害によるリスクを低減できます。
ポイント4:情報セキュリティ対策はどうなっているか
自社の情報を保護するために、利用者側は、導入後にアカウント情報やアクセス制限を適切に管理する必要があります。
クラウドサービスの接続にはIDとパスワードを用いることが一般的ですが、近年では、多要素認証を採用したSaaSも登場しています。多要素認証は、パスワードなどの知識情報、スマートフォンなどの所持情報、指紋などの生体情報のうち、複数の情報を組みあわせた認証方式で、高い情報セキュリティが期待できます。
ポイント5:使いやすさはどうか
操作性の高さもサービスを選定する際の重要なポイントです。パソコンに不慣れな従業員であっても、すぐに使いこなせるツールを採用すべきです。
さらに、現場の作業員が早く馴染めるように周知することも大切です。作業員が導入の目的や活用方法を共有し、どのような効果が見込めるかを知ることで、導入決定者と現場の作業員のギャップが生じにくくなります。操作研修の実施はもちろん、マニュアルの充実化や操作に疑問があった際の問い合わせ体制まで整備することで、現場の作業員も安心して使うことができます。
まとめ
建築業に特化したSaaSは、業務効率化やコスト削減など、さまざまな効果が期待できるクラウドサービスです。
SaaSを選定する際は、導入目的を明確化し、自社に適したサービスを導入することが重要です。もしオーバースペックのシステムを導入してしまった場合、コストの負担が大きいうえ、使いこなすユーザーも限られる恐れがあります。
自社の業務に必要な機能を見極め、操作性に優れたサービスを選定すれば、情報共有にかかる手間が削減されるため大幅な効率化が見込めます。人手不足の課題解消に向けて、利便性の高いSaaSの導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
先進企業の事例に学ぶ建設現場DXの最新動向
人手不足や高齢化が進む建設業界ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれて数年が経過したものの、思うように取り組みが進んでいない企業もあるのではないでしょうか。そこには、「どのような方法で行えばよいかわからない」、「現場で具体的なイメージをもつことができない」、「デジタルになじみにくい社風である」といった要因も関係しているでしょう。そこで本資料では、日本建設業連合会が公開している「建設DX事例集」を中心に、建設業のデジタル化の取り組みを多彩な業務・技術の観点から解説します。数多くの事例に触れることで、これから始める自社の改革へのヒントを得られるでしょう。
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