2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2023.03.31 (Fri)

建設業はICTで変わるのか(第27回)

若年層の未定着・離職に苦しむ建設業界が取るべきアプローチ

 

 新卒人材の採用難、若年労働者層の離職など、建設業界では人的リソースに関わる深刻な問題を抱えています。人材確保や定着率向上をめざす建設事業者は、どのようなアプローチを取るべきなのでしょうか。今回のコラムでは、建設業界における人材獲得・定着率向上の課題について改めて振り返りつつ、有効な解決策を紹介します。

若年層の未定着・離職を招く要因とは?

 総務省が発表した「労働力調査」によると、2021度における建設業への就業者数は485万人で、就業者数がピークを迎えた1997年度と比較して29%減少しています。同調査からは、建設業界の就業者数が減少しているだけではなく高齢化が進んでいるという問題も読み取ることができます。例えば15~29歳の建設業界就業者数を合計しても、65歳以上の就業者数の半分程度にしかなりません。

 なぜ若年層の就業者数は伸び悩んでいるのでしょうか。建設業界へ就職する新卒人材が減少していることも理由のひとつですが、「入社した人材が定着せず、すぐ離職してしまう」という要因もあります。

 厚生労働省が発表した「雇用管理現状把握実態調査(平成24年度)」を見ると、若年層が建設業界に定着しない理由として、企業側は以下のような要因があると捉えています。

・作業がきついこと:42.7%
・若年層の職業意識が低いこと:40.8%
・現場での人間関係が難しいこと:24.9%
・労働に対して賃金が低いこと:24.2%
・休みが取りにくいこと:23.5%
・危険な作業があること:19%

 若年層が離職した理由については、下記の回答が見られました。

・雇用が不安定なこと:9.6%
・遠方での作業が多いこと:9.0%
・休みが取りにくいこと:8.4%
・労働に対して賃金が低いこと:7.9%
・危険な作業があること:6.7%
・キャリアビジョンを描けないこと:6.2%
・現場での人間関係が難しいこと:5.6%

「変革」を求められている建設業界

 こうした現状を踏まえて、建設事業者は作業員の確保や育成に向けた取り組みを進めなければなりません。中には政府とともに改善をめざすものもあり、主に次の内容を見直すことが求められています。

・休日確保:週休2日制、4週8休、4週8閉所など

・安全な労働環境の提供:足場・はしご墜落転落防止対策など

・賃金の見直し:建設労働者の社員登用、月給制導入などの処遇改善など

・キャリアビジョンの明確化:建設技能者の能力評価制度の導入と企業の施工能力の見える化

 これらは2024年4月より建設業界に適用される働き方改革関連法とも強い結びつきがあり、時間外労働が上限を超えた場合には罰則を受ける可能性もあります。

 若年層の定着を促すために、「社会保険の加入など福利厚生の充実」「仕事量や能力に見合う賃金の支払い」「資格取得の推進や教育の実施によるキャリアアップの支援」を検討する企業も存在します。しかし、国土交通省が公開している「建設業の働き方として目指していくべき方向性(参考資料)」を見ると、完全週休2日制または4週8休を導入している建設事業者は全体の16%にとどまっています。年齢階層別における平均年収を見ると55歳以上は右肩下がりで、キャリアアップも生活基盤の安定も難しいのが実情です。

 一方、若年労働者を建設業界に送り出す側の高校は、どう考えているのでしょうか。

 高校が生徒を就職させたいと考える企業の理想像としては、「月給制および社会保険が完備されている」「現場見学会に保護者も参加できる工夫をしている」「早期離職を防ぐ取り組みをしている」などが挙げられます。新卒人材の確保をめざすためには、こうした条件を満たしている必要があります。

 若年層の労働人材の確保や働き方改革関連法の適用を考慮すると、建設事業者は今こそ変革することが求められているのです。

建設事業者が変革するために取るべきアプローチ

 労働時間の短縮に取り組んでいる企業は増加傾向にありますが、長期的な視点から見ると、「これも一時的な措置に過ぎない」という意見も見られます。

 建設事業者が取り組むべきなのは「いかにして生産性を向上させるか」というアプローチです。これについて国土交通省は現場のICT化を推奨しており、「i-Construction」という取り組みを進めています。これは建設現場の生産性向上をきっかけとして、企業の経営状態を改善し、就業者の賃金水準や現場の安全性向上を図るものです。例えば、作業員が担ってきた業務の一部を自動化したり、デジタル技術を活用して技能継承を行ったりすることなどが想定されています。危険な業務や肉体労働も、ICTツールの活用によって一部自動化することが可能です。

 建設事業者はICTツールの活用を通した「建設現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)」を実現することで、限られた人材を有効活用することが求められています。国土交通省が設置したICT導入協議会では、i-Constructionの支柱となる「ICTの全面的な活用」に向けて、建設事業者が抱える課題を社会全体が共通して認識すべきとの意見を示しています。同協議会では、小規模建設現場におけるICTツールの活用によって労働環境を整えた成功事例を蓄積していく方針です。

 建設事業者は「どういったICTツールを現場に取り入れるか」「ICTツールをどう活用・運用するか」などを相談できる専門家を見つけると良いでしょう。自社の状態をよく知っており、なおかつICTに精通した企業とタッグを組むことで、建設現場が抱えている課題の一部を解決できます。特に、業務の機械化・自動化は業務効率化につながり、危険な作業を減らすことは安心して働ける作業現場の整備に直結します。人材確保や定着率向上に有効なアプローチになるでしょう。

建設業 デジタル技術導入・活用ガイド

建設業の過剰な労働時間は長年にわたって問題視されてきましたが、いよいよ2024年4月1日に「残業時間の上限規制」が適用されます。規制に違反すると懲役・罰金刑に処され、悪質なケースでは企業名公表もあるため、労働時間の見直しは建設事業者にとって喫緊の課題です。国土交通省や厚生労働省はICT活用に向けた支援を実施しているものの、十分に普及していないのが現状です。本資料では、建設業のデジタル化に詳しい大阪大学 矢吹信喜教授の見解を踏まえ、2024年問題対策のポイントや進め方を解説します。有効なデジタル技術に言及しながら、事業者がこれから検討するべき対処法を紹介します。

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