まちづくりのヒント(第23回)

地域の公共交通の救世主「次世代モビリティ」とは ~人口減少時代の課題に挑むNTT東日本の取り組み~

 地域公共交通は今、かつてない危機に直面しています。少子高齢化による労働人口の減少や2024年問題による労働時間規制の強化により、運転手不足が深刻化し、路線の減便や廃止が相次いでいます。この課題に対し、デジタル技術を活用した次世代交通システムへの期待が高まっています。本稿では、地域交通が抱える課題と革新的なソリューションとNTT東日本が展開する先進的な取り組みについてご紹介します。

労働人口減少と2024年問題がもたらす地域公共交通の危機

 少子高齢化の進展により、地域公共交通の維持が困難な状況が深刻化しています。特に、労働人口の減少が進む中で、移動や物流サービスを担う人材が不足しており、その影響は全国的に広がっています。さらに、2024年問題と呼ばれる労働時間規制の強化が物流業界だけでなく公共交通にも波及し、運転手不足という深刻な問題を引き起こしています。

 例えば横浜市営バスでは、年間の運転手労働時間の上限が引き下げられ、勤務間インターバルの延長が義務付けられたことから、2024年の春には全体の約4%にあたる367便を減便せざるを得ませんでした。それでも、約120人の運転手が不足しており、休日出勤や残業によって日々の運行を支えているのが現状です。一方、東京都足立区では、コミュニティバスの一部路線が廃止され、利用者に多大な影響を与えています。こうした動きは、川崎市や千葉県など首都圏の他地域でも見られ、バス路線の減便や廃止が広がっています。

 特に自治体が関与するコミュニティバス事業は、収益性の低さや運営費の制約から、2024年問題の影響を受けやすい状況にあります。運転手不足が続く中で、事業者が観光バスなど収益性の高い事業にシフトする動きが見られ、路線バスの運行維持が一層困難になっています。京都市では、バス運転手の不足が深刻化し、路線維持が困難であることから2024年9月に「非常事態宣言」を出しました。市では処遇改善や採用活動の強化に取り組んでいますが、人手不足解消には時間がかかると見られています。

次世代モビリティがもたらす地域交通の革新

 このような地域の公共交通の課題に対処するためには、労働環境の改善や採用活動の強化だけでなく、新たな技術を取り入れた交通システムの構築が不可欠です。たとえば、AIや自動運転などのデジタル技術を活用した次世代交通システムの導入は、運転手不足の解消や効率的な運行の実現につながります。次世代モビリティと呼ばれる、取り組みをいくつか紹介しましょう。

デマンド交通

 デマンド交通は、従来の路線定期型交通に代わる新しい地域交通システムとして注目を集めています。運行方式やダイヤ、発着地の設定に高い自由度があり、地域の実情に応じた柔軟なサービス提供が可能です。利用者ニーズに合わせた効率的な運行により、自治体の財政負担を軽減しながら、交通空白地域の解消にも貢献しています。高齢者の通院や買い物支援、学生の通学など、多様な移動ニーズにきめ細かく対応できることも特徴です。ICTの活用による予約・配車の効率化も進んでおり、持続可能な地域公共交通の実現に向けた期待が高まっています。

自動運転バス

 2020年から自動運転の実証に取り組んでいる長野県塩尻市では、自動運転による持続的な公共交通の実現を目指すことはもちろん、自動運転が地域を活性化させることを期待したさまざまな取り組みを行なっています。

 2023年の実証においては、自動運転小型バスの導入や地域人材のみでの運行、予約システムの活用などを検証。毎朝、自動運転車で通学する学生も出てきているなど、本格的な実装に近づいていると言います。

ロボタクシー

 ロボタクシーは、特定の条件下においてシステムがすべての操縦を行う「レベル4」以上の完全自動運転技術を活用した次世代型のタクシーサービスです。利用者はアプリを通じて予約から決済までをシームレスに行うことができ、AIが最適な経路を選択して目的地まで安全に送り届けます。

 利用者にとっては、プライベート空間の確保や車内空間の有効活用、バリアフリー対応などのメリットがあります。事業者によっては、長期的な運用コストの削減や新たな収益モデルの創出が見込めます。現在は限られたエリアでの運用となっていますが、交通安全の向上や環境負荷の低減、交通渋滞の緩和といった社会的効果が期待されています。

NTT東日本が取り組む次世代交通プロジェクト/サービス

 NTT東日本は、次世代モビリティの社会実装に向けた実証やサービス化を推進し、地域社会や交通インフラの課題解決に貢献しようとしています。ここでは、代表的な3つの取り組みを紹介します。

ローカル5Gを活用した複数台遠隔型自動運転バス

 成田国際空港では、NTT東日本を中心に、ローカル5Gを活用した遠隔型自動運転バスの実証実験を実施しました。このプロジェクトでは、高速通信環境を活用し、空港制限エリア内において最大3台のバスを1名の監視者が遠隔で同時に監視する実証を実施しました。

デマンド交通向けクラウドサービス「お出かけデマンド」

 「お出かけデマンド」は、NTT東日本が提供するクラウド型デマンド交通サービスです。このサービスは、利用者が希望する場所から目的地までの移動を支援し、スマートフォンなどからのWeb予約や電話予約に対応しています。

 さらに、AIを活用して最適なルートを自動で計算することで、効率的で快適な移動を可能にしています。また、Web APIを通じて他分野のサービスと連携する機能を備えており、交通サービスの枠を超え、地域の活性化やまちづくりへの貢献が期待されています。

環境に優しい移動手段「グリーンスローモビリティ」

 グリーンスローモビリティとは、時速20km未満で公道を走行できる電動車を活用した小規模な移動サービスおよびその車両の総称です。このサービスの導入により、地域の交通課題の解決や低炭素型交通の確立が期待されています。NTT東日本は、2022年10月にパートナー企業と連携し、杉並区荻窪地域でグリーンスローモビリティの実証運行を実施しました。

 この取り組みでは、スマートフォンアプリ「ココシル」を活用し、運行状況の確認やデジタルスタンプラリー、音声ツアーガイド、ARカメラなど、多様なサービスを提供。移動手段としての利便性を高めるだけでなく、観光促進や地域経済の活性化を視野に入れた取り組みとなりました。


 NTT東日本は、これらの取り組みを通じて次世代交通の実現に向けた課題解決と社会価値の創出に努めています。デジタル技術や通信技術の活用により、持続可能で利便性の高い地域社会の実現を目指し、今後も革新的なソリューションの開発と提供を続けていきます。

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