2024.12.03 (Tue)
まちづくりのヒント(第20回)
デジタル地域通貨普及に向けた自治体連携情報交換会を開催!(後編)
2024年9月9日、NTT東日本は自治体におけるデジタル地域通貨事業の普及と定着を目的として、デジタル地域通貨を運用している自治体を対象にした情報交換会を開催しました。 前編では、各自治体のデジタル地域通貨を運用状況や、先進事例をお伝えしました。
後編である本記事では、地域通貨に関する研究成果の解説と、これまでの話を踏まえた議論の様子を紹介します。
研究成果から考える、地域通貨の運用に必要なこととは?
各自治体におけるデジタル地域通貨の情報共有の後、宮﨑准教授からはこれまでの研究成果から見たデジタル地域通貨についてのお話をいただきました。
「地域通貨の理想的な運用の仕方には、はっきりとした答えがありません。そのため、実際に運用しつつ、小さい取り組みから少しずつ効果検証を積み重ねていくしかないと思っています。そして、効果的な運用をするためには、まず地元住民に丁寧に地域通貨の意義を伝えることが大切なのではないかと感じます」(宮﨑准教授)
この前提を踏まえ、主に下記の3点について解説していただきました。
(1)地域通貨とは何か
地域通貨は「統合型のコミュニケーションメディア」とする見方があります。統合型コミュニケーションメディアとしての地域通貨には、具体的に下記の属性が内包されています。
発表スライドより抜粋
地域通貨を運用する上で大切なのは、貨幣的な側面と言語的な側面を、どのように融合させて形成するかというところです。民間企業が運用するデジタル決済の通貨とは異なり、デジタル地域通貨には、地域の経済循環やコミュニケーションの醸成を促す役割があります。これを、地域の方にどのように説明していくかということが一つの鍵になります。
(2)地域通貨をデジタル化するメリットとは
デジタル地域通貨のメリットは、データを集めることにあります。個人情報の取り扱いには十分留意する必要はありますが、どのような住民が、どのような店舗を利用しているかといったデータを収集・分析することで、デジタル地域通貨のより良い運用方法を検討できます。
(3)デジタル地域通貨による行動変容の測定も大切
デジタル地域通貨を導入する前と後で、住民の行動がどのように変わるのかといったデータを、アンケートで取得して測定することも、デジタル地域通貨の運用を考える上では大事なことです。事前事後でデジタル地域通貨の効果検証をすることで、住民にとって望ましいデジタル地域通貨の方向性が考えやすくなります。
デジタル地域通貨への考えをさらに深めるディスカッションを実施
各自治体の取り組み事例と、宮﨑准教授のお話を踏まえた上で行われたディスカッションでは、デジタル地域通貨の運用にあたっての疑問や課題に対する意見交換が行われました。そのなかでも特に反応が大きかったトピックを紹介します。
Q1: デジタル地域通貨の意義が地域に浸透していないように感じます。加盟店拡大のために店舗の理解を得たり、住民に利用を促したりするために、意義をどのように伝えていくかが課題です。
A1: 「デジタル地域通貨がどのように地域の経済循環や地域活性化を促すのか、その理念や目的を関係者に説明し、共感を得る活動が必要です。そのためには広報誌や広告でPRする、講演会を開く方法もありますが、地域通貨ゲームを活用した勉強会で周知を図る方法が分かりやすそうです。
地域通貨ゲームとは、参加者ごとにサラリーマン、レストラン、農家などの役割を決め、法定通貨と地域通貨を使い分けながら、指定された物品を購入するゲームです。このゲームを通して地域通貨がどのように地域の役に立つのかを疑似的に体験することで、地域通貨のメリットを考えるきっかけになると思います」(宮﨑准教授)
Q2: 地域通貨の利用促進を図るために、どのような組織体を設けて議論していけばよいのでしょうか?
A2: 「地域通貨の関係者はもちろん、地域通貨に興味関心のある方や、地域で活発に活動されている事業者や個人を集めた組織体を設けるとよいでしょう。地域通貨を活用できそうなアイデアを募ったり、実際にそうしたイベントを企画したりする際に団体間で連携を取りやすくなりそうです。
組織体を立ち上げる際には、子育て世帯や若年層など、実際に地域通貨を活用する方々にも参加してもらうことが望ましいです。運用する側と利用する側の認識がずれないよう、あらゆる属性の方からの意見が聞ける環境づくりも大事です」(宮﨑准教授)
通貨を選ぶひと手間が、地域を考えるきっかけになる
デジタル地域通貨を導入することで、住民は物品購入の際に「どのように使い分けるか」を考えることになります。その点について、宮﨑准教授からはこのようにお話しいただきました。
「法定通貨とデジタル地域通貨の使い分けが必要になるので、住民が買い物をする際に、どの通貨を利用するかを考えるひと手間が掛かります。しかし、『この通貨を使えば地域のためになる』という目的が共有されていれば、住民の考え方が地域にフォーカスされ、デジタル地域通貨を使用するという選択になるものと考えます」(宮﨑准教授)
上記のような考え方が地域に定着するまでには、デジタル地域通貨の利用促進に向けた取り組みの継続した検証や、結果やノウハウの定期的な共有が必要であることが、参加者全員の共通認識となったところで、本情報交換会は終了しました。
今回はデジタル地域通貨の今後に活かせる多くの知見が得られた、実りある情報交換会となりました。今後もNTT東日本では、デジタル地域通貨に関わる情報交換会を継続して開催し、取り組み事例やノウハウの共有を通して、地域活性化の一助となる支援施策を企画してまいります。
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