2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2024.10.03 (Thu)

まちづくりのヒント(第11回)

20~30代の観光客を「マンガ」で増やす!中野市の観光DX

 長野県中野市は、新たな観光地づくりや観光地の魅力発信強化のため、デジタル技術を活用し、観光サービスの質を向上する「観光DX」の取り組みを始めています。中野市が目指す観光DXとはどのようなものなのでしょうか? 観光DXへ舵を切った背景と、地元出身の人気漫画家とコラボした“奇抜な施策”について、中野市の担当者に聞きました。

<導入いただいたソリューション>
観光DX支援


<ソリューション導入効果>
・若い世代やこれまでとは違った層に中野市の魅力を発信
・今回のAR事業をきっかけに、市を挙げて観光DX事業を推進


<NTT東日本選定のポイント>
・中野市が実現したい「人気漫画家とのコラボレーション事業」にフィットする、ARを活用した事業の提案
・提案されたARアプリの機能が、今回の企画実現に最適だった
・すぐにデモンストレーションを実施するなどスピーディーな対応

これまでにない新たな観光地を作るためには、 “奇抜な施策”も必要

――まずは、長野県中野市の観光に関する現状を教えてください。

戸島氏:中野市の観光名所といえば、通称“バラ公園”と呼ばれる「一本木公園」です。バラの見ごろを迎える初夏と秋には、「バラまつり」が開催されます。

 さらに、全国から集められた2000点にも及ぶ土人形が展示されるミュージアム「日本土人形資料館」もあります。毎年3月31日・4月1日に、全国の土人形の展示・即売が行われる「中野ひな市」には、県外からも観光客が多く訪れます。

 近年の新たな動きとしては、令和3年度から中野市の魅力を発信するバーチャルユーチューバー(VTuber)「信州なかの」を用いた、中野市のPRを行っています。


 信州なかのは、コロナ禍で市のPRをリアルな場でやりづらくなったことがきっかけで誕生したキャラクターです。YouTubeでの動画配信からスタートし、SNSなどの反響もあって少しずつ認知されています。今では市で制作している観光パンフレットの表紙を飾ったり、アクリルスタンドや缶バッジなどのグッズを作って販売したり、公用車にキャラクターのイラストをプリントした「痛車」を作ったりと、さまざまな形でPRしています。

 実際、パンフレットやグッズは若い女性や子どもからの反応が良く、痛車もメディアに取り上げられたことをきっかけにさまざまなイベントに招待されるなど、これまでに無い反響を実感しています。VTuberを通じて、“中野市のファン”になってもらえるよう取り組んでいます。

――そのような観光資源があり、さらにVTuberという新たな取り組みがスタートしている中で、なぜ「観光DX」についても推進することになったのでしょうか。

戸島氏:理由の一つは、観光客の減少です。

 信州なかのが誕生したことを機に、若い世代やこれまでとは違った層の方々にアプローチできていると感じています。とはいえ市内の観光地利用者の数は、かつては年間70万人を超えていた時期もありましたが、令和5年はコロナ禍の影響もあり約41万人に減少しているのが現状です。

 別の理由としては、中野市の地理的な問題もあります。中野市は、北陸新幹線の長野駅から電車で30~40分ほどの場所にありますが、手前には小布施、その先には志賀高原、温泉で有名な湯田中、野沢温泉などの観光地に囲まれており、中野市に足を止める人が少ないという課題があります。

 こうした課題を解決するためには、まずは中野市を多くの人に知ってもらい、そしてほかの地域と差別化できるような、魅力ある観光地を作っていくことが必要と判断しました。具体的には、観光客が観光地を巡るだけではなく、農作業を体験するような体験型のコンテンツや、これまでにない新たな観光地を作ることを考えています。

江澤氏:観光客だけでなく、中野市の交流人口(実際に地域を訪れる人々)や関係人口(地域と多様に関わる人々)を創出していくためには、ときに“奇抜な施策”も必要です。そのため、デジタル技術を活用した観光DXによって、観光客が中野市に足を運ぶような、新たな観光地づくりができるのではないかと考えました。

地元出身の人気漫画家とコラボ。ターゲットはマンガやアニメ・AR技術に親和性の高い20~30代

――現在、中野市が推進している観光DX事業について、具体的な内容を教えてください。

江澤氏:中野市出身の人気漫画家・宮島礼吏(みやじま・れいじ)先生とコラボレーションしたAR(拡張現実)事業の準備を進めています。

 宮島先生は、週刊少年マガジンにて連載中の『彼女、お借りします』の作者です。同作は累計発行部数1300万部を超える大ヒットを記録しており、2020年にはアニメ化、2022年には実写ドラマ化もされています。特にアニメの人気は高く、2025年にはTVアニメ第4期の制作も決定しています。

 宮島先生の作品は以前から認知していました。中野市の出身で、こんな身近にこんなすごい絵(漫画)が描ける先生がいることを広く知ってもらえれば、子どもや学生に夢や希望を与えることができるのではないかと思いました。

 そこで「何かコラボレーションできないか」と宮島先生にご相談させていただくと、多忙を極めているにもかかわらず、「地元のために」と快くお引き受けいただきました。大変感謝しております。

 当初、ざっくり考えていたのが、中野市内の特定の場所で宮島先生が描かれたキャラクターに「会いに行く」感覚を味わえるような企画です。この構想をNTT東日本に相談したところ、ユーザーがAR技術を活用しながら市内を周遊して楽しむ企画の提案をすぐに受け、そこから今回のAR事業が本格的にスタートしました。

 事業の内容については、宮島先生に描いていただく、中野市を舞台にした描きおろし漫画を活かした内容を考えています。具体的には、描きおろし漫画に描かれた市内数カ所の情景やキャラクターを、現実世界の同じ場所にも、ARで再現し、いわゆる没入感を楽しむようなスポットを設置します。

 現地を訪れた観光客が、スマホのARアプリを使うと、画面の中に作中のキャラクターが表示され、漫画の世界感を味わうことができるようにしたいなと思っています。さらに、テキストを通じ、キャラクターから「待ってたよ」「次はここに行こう」といったメッセージを受け取ることが出来れば、ユーザーの満足度も高まるのではないかと考えています。

 ストーリーに沿って、キャラクターと一緒に街を巡るように、観光客の皆さんに中野市内を周遊して楽しんでいただきたいと思っています。簡単にいえば、ARを使って、中野市内をいわゆる“聖地巡礼”するような、体験型のコンテンツを目指しています。

 観光施策でのAR技術の活用は、県内外の事例を見ても、徐々に増えているように感じられますが、今回のような大ヒット漫画作品とのコラボレーションは大変光栄なことであり、「2次元でしか見られなかったものが、現実世界に現れるような感覚を楽しめる」というARの魅力を大いに活かせると思っています。

――現在は準備を進めている最中とのことですが、プロジェクトを進めるにあたって、何かハードルはありましたか?

江澤氏:反対する声はあまりなく、むしろ市民の皆さんの応援の声が追い風になっています。というのも、中野市では市民満足度調査を毎年実施しており、その中で若い世代から「ARやVR技術を使った観光施策を考えたら面白いのではないか」という意見を多数いただいていたからです。若い層からの意見を反映できたことも、今回の事業のポイントとなっています。

 一方で、中野市にとって初めてとなる観光DXの取り組みのため、技術面や運用面でハードルを感じていました。しかし、NTT東日本の営業担当や技術担当の方々の丁寧なサポートのおかげでスムーズに進めることができています。提案の際にはARのデモンストレーションで企画をより具体的にイメージできましたし、こちらの要望をうまく汲み取っていただいていると思います。実現までのプロセスもわからないことが多くありましたが、相談した時には毎回親身に対応していただいています。

――AR事業に期待する効果を教えてください。

江澤氏:現在、中野市で行っている催しやイベントなども大切にしていきたいと考えておりますが、今後は、関係人口や交流人口を創出するためにも、若者世代に移住や定住などを考えてもらえるような、“奇抜な施策”が必要であると思っています。

 今回のAR事業はその施策の一つとして、若い世代と親和性が高いマンガ・アニメとAR技術を掛け合わせたコンテンツを提供することで、20~30代を呼び込むフックになることを期待しています。ファンの方には、ARの特徴を最大限に生かし、宮島先生の原作漫画が持つタッチの繊細さやエモーショナルな雰囲気を味わってもらえたらと思います。AR事業を通して、宮島先生の作品の魅力、そして中野市の魅力を発信していきます。

マンガ・アニメツーリズムの成功の鍵とは? NTT東日本の街作りの知見に期待

――今後の展望やNTT東日本に期待することを教えてください。

江澤氏:今は秋頃のローンチに向けて準備を進めており、細かい仕様を詰めているところです。宮島先生の描きおろし漫画には、中野市のスポット4~5カ所が盛り込まれる予定で、ローンチ後には作中に登場する場所でのイベント開催も計画しています。この事業を皮切りに、マンガやアニメを活かしたまちづくりを推進していきたいです。

 マンガ・アニメツーリズムは、行政主導ではなく民間事業者や地域全体での盛り上がりが最も重要と考えていて、グッズ販売やイベントの実施など、多様な取り組みを行っていくことが、地域の活性化につながると考えています。そのためにはどのようなアプローチが必要なのか、地域の街作りにおいてさまざまな知見やコネクションを持つNTT東日本に、ぜひ意見や提案をいただければ幸いです。

――そのほか、観光DXで今後実現させたいと考えている取り組みなどがありましたら教えてください。

江澤氏:マンガやアニメに限らず、今回の事業のようにARを活用したコンテンツを提供していきたいと思っています。具体的な構想はまだありませんが、XR技術によって没入感を味わいながら、誰でも気軽に楽しめるような、面白いコンテンツができないかと考えています。

戸島氏:中野市には、バラや土人形といった名産品があったり、中山晋平、高野辰之などの偉大な著名人がいたり、さらに、エノキダケをはじめとするキノコ栽培、モモ、シャインマスカットなどのブドウ、リンゴなどの高品質の農産物と、多くの魅力的な観光資源があります。これらを活かして、今後も関係人口・交流人口を創出し、地域の活性化に向けて取り組んでいきたいと思います。NTT東日本からの協力も仰ぎながら、今回のAR事業を皮切りにさらなる観光DXを進めていきたいです。



<組織名>
長野県中野市

<概要>
長野県の北東部に位置する人口約4万2千人の市。北東に高社山、北西に斑尾山の2つの山を配し、気候は昼夜の気温差が大きく、降水量は少なめ。果物の栽培に適しており、特にリンゴやブドウは全国でも有数の生産量を誇る。エノキタケをはじめとするキノコの栽培も盛ん。アクセスは北陸新幹線の長野駅から、長野電鉄に乗車し約30~40分。市内には上信越自動車道の信州中野IC、豊田飯山ICも存在する。


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