2024.12.03 (Tue)

まちづくりのヒント(第19回)

デジタル地域通貨普及に向けた自治体連携情報交換会を開催!(前編)

 2024年9月9日、NTT東日本は自治体におけるデジタル地域通貨事業の普及と定着を目的として、デジタル地域通貨を運用している自治体を対象にした情報交換会を開催しました。複数の自治体を招いた情報交換会の開催は、NTT東日本では初の取り組みとなります。本記事では、当日の情報交換会のレポートの前編として、各自治体が取り組むデジタル地域通貨の運用状況や、先進的な運用事例を紹介します。

各自治体のデジタル地域通貨の特色や、課題共有からスタート

 本情報交換会には、山形県大蔵村、宮城県名取市、群馬県安中市、山形県長井市のデジタル地域通貨ご担当者の方々と、コミュニティ経済や地域通貨の研究を専門とする宮城大学の宮﨑義久准教授にご参加いただきました。


オンラインからの参加者も交え、ハイブリッドな情報交換会となった。


 まずは、大蔵村、名取市、安中市におけるデジタル地域通貨の運用方法や現状の課題、今後の展望を、ご担当者の方々から次のようにお話しいただきました。


【大蔵村:くらポ】
・地域住民の活動を活性化させる目的で2024年4月から本格導入
・健康事業などへの行政イベントの参加でデジタル地域通貨を獲得可能
・デジタル地域通貨システムと連携し、村営バスでの活用も計画中
・デジタル地域通貨が利用可能な店舗の選定に課題

【名取市:なとりコイン】
・地域経済の活性化や行政施策の参加促進を目的として2024年8月から本格導入
・産官学連携で構成される「利用促進委員会」により、運用方法を協議・検討
・抽選キャンペーンの展開により利用を促進
・行政イベントへの参加等でインセンティブ付与を予定

【安中市:UMECA】
・地域経済の循環を目的として2024年12月から本格導入
・地銀と連携し、市が負担する手数料を軽減
・加盟店舗をどれだけ増やせるかが現状の課題

業務効率化や災害対応でのメリットも!山形県長井市の運用事例を紹介

 次に、2022年5月に本格導入されたデジタル地域通貨「ながいコイン」を運用している山形県長井市の佐藤氏より、先進的な運用事例として、その取り組みをご紹介いただきました。


山形県長井市 総合政策課 デジタル推進室 佐藤拓磨氏


 長井市では、デジタル技術の活用によって『いつまでも便利に安心して暮らせる「スマートシティ長井」の実現』に向けた取り組みを実施しています。その一環として、デジタル地域通貨「ながいコイン」を導入しました。

 ながいコインは、地域経済の循環とプレミアム商品券等の市民への給付施策のデジタル化等を目的に、「還元施策のプラットフォーム」として運用しています。これまでに、国からの物価高騰対策等の補助を活用し、ながいコインによる全戸への給付施策を計3回実施したこともあり、市民にもその存在と目的が認識されている状況です。同時に、ながいコインを使用できる環境づくりを進めており、ながいコインが使用できる市内の加盟店は166店舗(令和6年9月現在)と、使用範囲も広がっています。

 令和6年度からは、今後の定着化に向けた新たな取り組みとして、マイナンバーカードを活用したデジタル身分証アプリと連携し、健康教室やボランティア等に参加した際のポイント付与を開始しました。この連携により、ポイント付与事業の実現とともに、複数のメリットが実現できました。

 1つ目は、庁内の事務負担軽減が期待できるということです。ながいコインはスマホ利用方式とカード利用方式を利用者が任意で選択できるため、ながいコインによる給付施策を実施する際、これまでは紙媒体への印刷や郵送作業が必要でした。この度の連携により、デジタル身分証アプリを介して、確実な本人確認を実施しつつも、スムーズな配付が可能となりました。実施はこれからですが、事務作業の工数が減ることや、印刷や郵送のコスト削減効果が期待されます。

 2つ目は、マイナンバーカードの利用機会拡大です。デジタル身分証アプリはながいコインのポイント付与のみならず、災害時の避難所受付やイベント参加時の受付でも活用できます。そのため、平時からマイナンバーカードの利用機会拡大と、マイナンバーカード普及率の向上も期待できます。

 このように、現在は、ポイント付与の実施等、国の補助による給付施策以外でもながいコインの恒常利用を促進し、定着化できるようさまざまな取り組みを進めているところです。引き続き、デジタル地域通貨をとおして地域の活性化を図り、持続可能なまちづくりに取り組んでいくことを今後の展望としています。

 今後の運用方法や展望のイメージをふくらませることにつながる、各自治体におけるデジタル地域通貨の運用状況や課題を共有できる場となりました。

 後編では、宮﨑准教授のこれまでの研究から見た地域通貨の在り方や、これまでの情報共有の内容を踏まえた議論の様子をお届けします。

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