2024.11.07 (Thu)

まちづくりのヒント(第13回)

デジタル地域通貨とは?自治体・住民・事業者それぞれのメリットを紹介

 地域経済やコミュニティの活性化を目的に、自治体や企業が独自に発行しているデジタル地域通貨。デジタル地域通貨を活用したまちづくりをすることで、単身世帯の増加に伴うコミュニティ意識の希薄化、人・モノ・カネの都市部への一極集中といった地域課題の解決にもつながるかもしれません。本記事では、デジタル地域通貨の現状や、自治体・住民・事業者側から見たメリットを紹介します。
 NTT東日本では、デジタル地域通貨を活用したまちづくりを推進しています。NTT東日本がめざすまちづくりについての詳細はこちら

紙に代わり、デジタル地域通貨が登場

 デジタル地域通貨とは、特定の地域やコミュニティ内で利用できる地域通貨がデジタル化されたものです。自治体や地域の企業などが独自に発行し、スマートフォンの専用アプリなどを使って決済します。商品券のように消費者から事業者への支払いだけに使えるものや、事業者間同士の仕入れなどに利用できるものもあります。また、チャージした金額への一定額の上乗せや決済額に応じたポイント付与などの特典を付けた仕組みも多く見られます。

 「特定の地域でしか使えない」という特徴が地域経済の活性化に寄与するほか、地域内でのボランティアや自治体のデジタル推進への協力などへの御礼として地域通貨を付与することで、住民の行動変容を促進することが期待されています。また、地域通貨プラットフォーム上に蓄積されたデータを活用し、総合的な地域DXを推進することも可能です。

 過去には紙ベースでの運用が一般的でしたが、運用面などでの課題もあり、現在はデジタルで運用するケースが多くなっています。

※「紙とデジタル地域通貨の違い」についてはこちらの記事で解説しています。

デジタル地域通貨のメリット・デメリット

 デジタル化により、再注目を集める地域通貨ですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。自治体、住民、事業者、それぞれの視点から考えます。

自治体のメリット

 紙・デジタルに関わらず、地域のお金が地域の中で使われることにより地域内の経済循環の促進が期待できます。また、出産・子育て応援交付金の給付やプレミアム商品券の販売、脱炭素ポイントの発行をデジタル地域通貨アプリ経由で行えるなど、地域の経済基盤としてさまざまなシーンで活用することも可能です。

 上記のメリットに加え、デジタルならではのメリットも享受することができます。従来の紙ベースの地域通貨では、発行作業や協力店・利用者への配布に大幅な手間とコストがかかっていました。しかし、デジタル地域通貨であれば、このような課題や手間が軽減され、コストも大幅に削減できます。また、地域の住民や産業界のITリテラシー向上にも寄与するほか、取得した購買データに基づく施策立案を行うこともできます。

 一方、サーバーの管理や維持、セキュリティ対策など、デジタルならではの新たな課題が発生することも事実です。ただし、デジタル地域通貨機能を搭載したアプリの登場や、専門企業によるサポートで負担は軽減されつつあります。

住民のメリット

 紙の地域通貨と違い1円単位で使用できるなど、一般的なQR決済サービスと同じ感覚で利用できる点は大きなメリットです。デジタル地域通貨がプラットフォーム上に集約されることにより、子育て支援などの給付金もデジタル地域通貨アプリ経由で申請してすぐに受け取ることができるほか、自治体が実施する各政策でもらえるポイントをアプリ内に一元管理できるようにもなります。さらに、行政サービスの支払いにデジタル地域通貨を充てることも容易に行えるようになります。

事業者のメリット

 住民側のポイントが貯まりやすく、利便性が向上することで、地域内での購買に積極的になれば、地域の事業者にとっても消費・売上の拡大、リピータの増加が見込まれ、メリットになります。事業者側も購買データを取得できるため、データを基に新たな施策を検討することもできるでしょう。

自治体、住民、事業者三方よしの事業

 以上のように、デジタル地域通貨は、自治体・住民・事業者にメリットがある“三方よし”の事業です。ただし、三方それぞれが積極的に利用しなければメリットも享受できません。自治体としては地域通貨を活用したさまざまな事業を展開し、事業の広報や加盟店・利用者の開拓に力を入れることで、三方の循環をしっかりと機能させる必要があります。

 現在はクレジットカードだけでなく、電子マネー、QRコード決済、バーコード決済など、キャッシュレス決済の種類が多様化しており、競争が激化しています。似たような利便性であれば、取扱店舗の多さやポイントの還元率などで選ばれてしまうため、地域通貨ならではのメリットを感じてもらうこと必要があるでしょう。

 たとえば、地域の災害情報を受信できる機能を専用アプリに搭載したり、デジタル地域通貨で得られた収益の使い道の意思決定に住民が関与できる仕組みを整えるなど、その他キャッシュレス決済との差別化を図り、単なる通貨としての価値だけではなく、利用者が地域通貨を持つ動機付けになるような価値をつくることが大切です。

 加えて、住民や加盟店から地域通貨への愛着を持ってもらうことも忘れてはいけません。地域の持続可能な成長を後押しする手段として導入を検討してはいかがでしょうか。

デジタル地域通貨を活用したまちづくり

詳細を見る

連載記事一覧

メルマガ登録


NTT EAST DX SOLUTION


ミライeまち.com


「ビジネスの最適解」をお届けします 無料ダウンロード資料


イベント・セミナー情報

ページトップへ

ページ上部へ戻る