2025年4月1日利用分より、フレッツ 光ネクスト(一部サービスタイプ)の月額利用料を改定します。詳細はこちら別ウィンドウで開きますをご確認ください。

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2024.10.03 (Thu)

まちづくりのヒント(第8回)

誰もがデジタルの恩恵を受けられる街に。中野市が挑む自治体DX

長野県中野市 湯本隆英市長

 長野県の北東部に位置する「中野市」は、デジタル技術を活用し、業務プロセスを改善するDX(デジタル・トランスフォーメーション)を積極的に推進している自治体です。たとえば勤怠管理システム、文書管理・決裁システムなど業務効率化を図る庁内業務のDX化や、公立保育所のさまざまな業務をITで管理する保育DXを推進しており、最近ではVTuberを活用した観光DXにも力を入れています。

 なぜ中野市は、市の業務にDXを取り入れたのでしょうか? そして、DXを導入する際にはどんな工夫があったのでしょうか? 2020年より市長に就任し、DXの旗振り役を務めてきた湯本隆英中野市長に話を聞きました。

<導入ソリューション>
地域活性化に向けた包括的DX支援


<ソリューション導入効果>
・庁内の印刷物を約10%削減
・市職員の業務負荷を減らし、本来の業務に集中する環境の創出
・観光ARなど、若い世代に市の魅力を伝えるためのコンテンツを作成
・市職員のITリテラシーやデジタルに対する意識・知見の向上


<NTT東日本選定のポイント>
・自治体DXの知見やノウハウが豊富
・庁内DX、保育DX、観光DX、デジタル人材育成など、幅広いDXに対応可

DXは、人口や働き手が減っていく未来への準備

──なぜ中野市がDX推進の取り組みをスタートしたのか、その理由を聞かせてください。

湯本市長:中野市は人口4万2,000人程度の中規模地方都市です。他の多くの地方都市と同様に人口減少の問題に直面しており、このままだと2050年頃には、人口が3万人を切ると予測されています。何もしなければどんどん人が減り、働き手も少なくなることが予想されます。

 こうした状況を変え、若い世代の移住定住を促すために、そして労働生産性人口が減少する次の時代に備えるために、全市的に思い切ったデジタル化を行うことが必要だと考え、2021年より包括的なDX推進(スマートシティ)プロジェクトを進めています。

──DX推進プロジェクトでは、具体的にはどのようなことを推進しているのでしょうか?

湯本市長:現在、具体的に取り組んでいるのが、「【1】庁内DX」「【2】保育DX」「【3】観光DX」「【4】eスポーツ拠点創設」「【5】デジタル人材育成」といった5つのプロジェクトです。

「【1】庁内DX」では既に、職員の勤怠管理の仕組みを紙からデジタルに移行したり、契約書や起案で使う回議用紙などさまざまな書類を、紙ではなくデジタルで申請・確認・決裁するシステムを導入するといった取り組みを行っています。住民が電子申請するサービスも導入しており、わざわざ市役所を訪れなくても、各種申請ができる環境を整えています。

「【2】保育DX」では、市内の保育園に、保育園の業務に特化した業務支援ソリューション「コドモン」を導入しました。コドモンでは保護者の方々に向けて保育改善のためのデジタルアンケートを行っており、そこでの要望を受けて、「おむつのサブスクサービス」も始めています。希望者は月額料金を支払うだけで、紙おむつとお尻ふきが使い放題となるサービスです。

「【3】観光DX」では、中野市の魅力を発信するバーチャルYouTuber(VTuber)として「信州なかの」を起用し、定期的にYouTubeにて中野市の情報を発信しています。

 さらに、地元出身の漫画家・宮島礼吏先生に、中野市を舞台にした漫画を描いていただき、その漫画を活用したAR(拡張現実)コンテンツも準備しています。宮島先生は、累計発行部数1,300万部を誇る人気漫画『彼女、お借りします』の作者として広く若者に知られている漫画家です。

 このコンテンツは、2024年秋の公表を予定しています。漫画に興味を持った人が、作中に登場する中野市の観光スポットへ実際に足を運び、ARで魅力的なキャラクターたちに会える、そんなコンテンツを展開することで、交流人口(実際に地域を訪れる人々)や関係人口(地域と多様に関わる人々)が増やせるのではないかと期待しています。

 このほかにも、若者だけでなく高齢者を巻き込んだ「【4】eスポーツ拠点の創設」、将来を見据え、DXを担う庁内人材を幅広く育成する「【5】デジタル人材育成」も、着々と進めているところです。こうした幅広い取り組みを通して、より魅力ある中野市、より住みやすい中野市を作り上げていくことが狙いです。

なぜ中野市は、“未知の取り組み”であるDXを推進できたのか

── 一連のDXプロジェクトの効果についてお聞かせください。

湯本市長:「庁内DX」の領域でいえば、電子文書・決裁システムの導入により、昨年に比べ、紙の出力枚数が10%ほど減ったという効果が出ています。職員の業務負荷が低減しただけでなく、サステナビリティ、環境負荷軽減の面でも好影響を実感できており、「やってよかった」と思っています。

 住民サービスについてはまだこれからではあるのですが、先に挙げたコドモンの導入や、各種申請のデジタル化によって、書類を持っていろいろな窓口を回らず済むようにしたことなど、住民から好評の声が届いています。

──なぜ中野市では、これらの取り組みが進められたのでしょうか? 自治体がDXを進めるとなると、スキルやノウハウが足りず、うまく進まないケースも起こり得ると思います。進め方のコツがあればお聞かせください。

湯本市長:自治体DXがうまく進まない場合、2つの理由があると考えられます。

 1つ目は“意識の差”です。デジタルに対する意識は、人それぞれで大きく異なります。

 たとえば中野市の職員も、若者から年配者までいろいろな方がおり、ITリテラシーもそれぞれでバラバラです。中野市の市民も同じことがいえます。中には、「デジタル化など必要ない」と思っている人もいれば、「デジタル化が必要不可欠だ」と思っている人もいます。まずはそのことを我々が理解し、デジタル化には時間がかかることを受け入れて、意識や空気を醸成することが大事だと思います。

 よくビジネス書などで「多くの組織は、2割の優秀な人材、6割の平均的な人材、2割の追随者で構成されている」などと言われます。私はDXも、同じような構成で少しずつ進んでいくものと考えています。

 いきなり一気に組織全体・人材全体をDXに染めるのは不可能です。まずは2割のアーリーアダプター的な人材を育てて、そのあとに追随する人を育て、じわじわと全体に“デジタルって便利だな”、“自分もやってみたいな”という空気を広めていく。そうやって、焦らず進めることが重要なのではないかと思います。

 もう一つ、DX推進のためには頼れるアドバイザーが欠かせません。

 先ほど申し上げたとおり、多くの自治体にとってDXは未知の取り組みです。わからないこと、見通せないことが多くあります。優秀なアドバイザーがいれば、パーパス(目的)や目標を見定めることができ、わからないことは教えを受けることで、そのうちに職員が育って、DXに向けての空気が醸成されます。

 内部で右往左往するのではなく、外部の専門家の力を借りながら、未来を見据えて、着実に進めていくということも大切です。

「ユニークで広範囲なDX」と「デジタル人材の育成」を、NTT東日本がサポート

──先ほど「外部の専門家の力」という話が出ましたが、中野市は一連のDX施策のアドバイザーに、NTT東日本を起用しています。NTT東日本の支援内容について教えてください。

湯本市長:NTT東日本には、アドバイザーという形で支援を受けています。具体的には、デジタル化のプランに関するアイデアや、目的に応じて最適なソリューションの提案、導入したアプリがうまく機能しないときの技術的なサポートなどを受けています。

──NTT東日本の支援について、どのように感じていますか?

湯本市長:自治体DXの知見が豊富で、非常に有用なアドバイスが得られていると感じています。

 中野市は、庁内DXはもちろん、VTuberの活用やeスポーツ拠点の創設といった、ユニークで広範囲なDXにも取り組んでいます。これらは、自分たちだけでは似た事例を探すことができませんし、どうやって進めたら良いか、進めた先にどのような未来が待っているのかもわかりません。

 そこをカバーするのが、NTT東日本です。たとえて言うなら、私たちにとっての”もっとも身近なDXの相談役”です。頼れるアドバイザーがいることで、職員も安心してDXに取り組めていると思います。

──中野市の職員が、NTT東日本の支援を直接受けることもあるのでしょうか。

湯本市長:はい、あります。たとえば、先に挙げたDX推進の5番目「デジタル人材の育成」についても、NTT東日本の支援を受けています。

 中野市では職員の業務の一環として、国家試験である「ITパスポート」の取得を目指していますが、その取得に向けた庁内研修の講師として、NTT東日本のスタッフが参加しています。

 NTT東日本のスタッフによる研修と、中野市が独自に実施する通信教育の相乗効果もあって、庁内でDXに対する意識が今後さらに高まっていくと確信しています。

──デジタル人材の育成という観点では、中野市は職員のITに関する知識や資格取得を人事評価に使用していると聞きました。

湯本市長:はい。中野市では、「チャレンジシート」「職務行動シート」という2つのシートを使って職員の評価を行っています。これらの評価項目には、ITパスポートの資格取得など評価する項目があります。つまり、DXに関する知識・経験を、組織的に評価するようにしています。

 DXに関する知識は、たとえ職員が異動し、それまでの部署とはまったく異なる仕事に配置されたとしても、必ず役立つものです。異動先で新たなツールを導入したり、同僚や住民に技術的なサポートを行うこともできます。異動になったからといって前の部署で得たDX関連の知見や評価がリセットされるようなこともありません。むしろ、DXの知見があるからこそ、異動先でもDXを進めていくことが可能です。

 組織にデジタル人材を広げ、その人材が各部署を循環することで、市内に大きなDXのうねりを作ろうとしています。これが、中野市が職員のITに対する取り組みを評価する大きな理由です。

 頼れるパートナーの存在、デジタル人材の育成に関する取り組み、DXに関する知識を評価する仕組み。中野市の場合は、これらが有機的に機能して、DXがうまく進んでいると考えています。

デジタル化の恩恵を、まるで空気や水のように受けられる街に

──最後に、中野市が進めるDXの現在の進捗状況と、今後のDXの目標について教えてください。

湯本市長:冒頭でも触れたとおり、中野市では2021年よりDXに力を入れていますが、その進捗度は現在のところ30%ぐらいという状況です。今後も防災、モビリティなど多様な分野でデジタル環境を整え、市民の暮らしに浸透することで、やがてはまるで空気や水のように、当たり前にデジタル化の恩恵が受けられる街にしたいと思っています。

 今後も、保健福祉、公共施設の利活用活性化、カーボンニュートラルなど、さまざまな面で積極的にDXを推進します。デジタルの力による、新しい地域の在り方を模索していきたいと思っています。



<組織名>
長野県中野市

<概要>
長野県の北東部に位置する人口約4万2千人の市。北東に高社山、北西に斑尾山の2つの山を配し、気候は昼夜の気温差が大きく、降水量は少なめ。果物の栽培に適しており、特にリンゴやブドウは全国でも有数の生産量を誇る。エノキタケをはじめとするキノコの栽培も盛ん。アクセスは北陸新幹線の長野駅から、長野電鉄に乗車し約30~40分。市内には上信越自動車道の信州中野IC、豊田飯山ICも存在する。


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