2024.11.07 (Thu)

まちづくりのヒント(第18回)

デジタル地域通貨の導入を支援する交付金とは

 地域経済の活性化を図る取り組みとして、内閣府のポータルサイト「地方創生」で、「デジタル地域通貨」の導入事例が取り上げられています。こうした取り組みの導入課題として考えられるのがシステム導入や運用にかかる費用ですが、「デジタル田園都市国家構想交付金」によってクリアになるかもしれません。本記事では、上記交付金の概要や、交付金を活用してデジタル地域通貨を導入した事例を紹介します。

デジタル地域通貨の導入を支援する交付金とは

 地域経済の好循環や地域コミュニティの活性化の取り組みとして、「デジタル地域通貨」を導入している自治体が登場しています。しかしその導入には、決済システムの運用コストだけでなく、決済手数料や、利用促進を目的としたキャンペーンの負担費用など、多くの費用がかかります。

 このような費用面の課題を解決し、地方活性化につながる意欲的な取り組みの支援をするために、2022年に設立されたのがデジタル田園都市国家構想交付金(以下、デジ田交付金)です。

 デジ田交付金を活用してデジタル地域通貨事業に取り組む自治体も増えており、2022年は57件、2023年にはさらに33件の事例が報告されています。

事業内容に沿った交付金のタイプ選択が求められる

 デジ田交付金には大きく4つのタイプがあります。その中でも、デジタル地域通貨の導入に向けて、活用実績のある2タイプについて紹介します。

 一つは、デジタル技術を活用して地方活性化や公共サービスの高度化・効率化を推進する「デジタル実装タイプ」です。このタイプは、さらに4つの種類に分かれています。他の自治体ですでに確立された優良な事業モデルを参考にした取り組みを行う際には、主に「TYPE1」という種類で申請できます。TYPE1は、他のTYPEよりも採択件数も多く、なおかつ採択条件が緩やかであるため、申請しやすいメリットがあります。

 TYPE1でデジ田交付金を受ける場合、採択された年度だけ、経費の1/2の補助が受けられます。

 もう一つは、地方の観光や農林水産業の振興に資する取り組みをシステム面で支援する「地方創生推進タイプ」です。こちらのタイプも、さらに3つの種類に分かれており、他の自治体の事業を参考とした取り組みを行う際には、主に「横展開型」という種類で申請できます。

 地方創生推進タイプでデジ田交付金を受ける場合、採択年度から3年間、経費の1/2の補助が受けられます。一方で、先述のデジタル実装タイプ(TYPE1)と比較すると、採択件数は少なく、採択条件のハードルが高くなる点には留意が必要です。

 実施しようとしている事業内容によっては、上記以外の種類でデジ田交付金を受けたほうが、補助率が高くなったり、補助期間が長くなったりする可能性もあります。そのため、デジ田交付金の詳細はもちろん、取り組もうとしている内容を事前に精査・確認してから、申請することが望まれます。

デジ田交付金を活用したデジタル地域通貨の導入事例とは

 すでにデジタル地域通貨を運用している自治体では、どのような種類で交付金を受けて、導入をしているのでしょうか。

 まずは、宮城県名取市の事例です。名取市では、2023年度に「地方創生推進タイプ・横展開型」で採択された「地域DX推進事業」の一環として、デジタル地域通貨「なとりコイン」を導入しました。上記事業では、デジタル技術を利用した高品質な生活基盤の構築を目的に、スマートシティアプリや、スマートストアといった取り組みも複合的に行っていくとされています。

 なとりコインの特徴は、プリペイドカードを購入するか、クレジットカードで決済残高をチャージする方法で使用できる以外に、キャンペーンに参加することでも獲得できるところです。初めてスマートフォンを購入した高齢者には3,000円分のコインを進呈、名取市関連のアプリに登録した住民に500円分のコインを進呈といったキャンペーンを展開しています。こうしたキャンペーンにより、なとりコインの利用促進だけでなく、なとりコインをインセンティブとしながら、地域のデジタル化を促進させています。

 次に、山形県最上郡大蔵村のデジタル地域通貨「くらポ」です。くらポは、2022年度に「デジタル実装タイプ」で採択された「かんたんデジタルスタートアップ事業」の一環で導入されました。大蔵村内の加盟店で、スマートフォンから利用できる地域通貨として運用されています。

 くらポの特徴は、人間ドックや健康教室といったイベントの参加、日帰り温泉施設の利用といった活動で獲得できる点です。さらに、村民にとって必要不可欠な交通手段である村営バスの利便性向上を図るため、2024年10月より、乗車運賃をくらポで支払えるキャッシュレス決済システムを導入しています。これにより、利用者属性や乗降データの収集・分析が可能になり、利用者ニーズに寄り添ったサービスの提供が期待できます。

 名取市では、デジタル地域通貨を通して、住民のデジタル利用も後押ししています。そして、大蔵村では、デジタル地域通貨による村営バスのキャッシュレス決済で、交通の利便性向上に寄与しています。このように、交付金を有効に活用していくことで、地域の課題解決につながるデジタル地域通貨の活用方法が設計でき、特色のある有用な取り組みにつなげられるかもしれません。

デジタル地域通貨を活用したまちづくり

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