2024.03.29 (Fri)
まちづくりのヒント(第2回)
地域通貨とは? 代表的な地域通貨と現在利用可能な地域通貨を紹介
地域通貨とは、特定の地域やコミュニティでの利用を目的とした通貨を指します。地域通貨の活用には地域経済やコミュニティの活性化、地域価値の発掘といったメリットがあり、地域の持続可能な成長を後押しする手段として注目を集めています。
この記事では、地域通貨の概要や日本と世界各地の成功事例、現在日本で利用可能な地域通貨、導入する際のポイントを解説します。
地域通貨とは?
地域通貨とは、特定の地域やコミュニティでの利用を目的とした通貨を指します。国の通貨とは異なり、自治体や企業などが独自に発行し、地域経済やコミュニティの活性化、地域価値の発掘などを目的としています。
地元の小売業者やサービス提供者が商品やサービスの取引に地域通貨を利用することで、地域内での消費が促進され、資金の地域外流出を防ぎます。ボランティアやエコ活動の対価として地域通貨を発行している自治体もあり、地域コミュニティの活性化や相互扶助に役立ちます。お米や野菜といった地域の特産品と交換できる地域通貨は、地域の価値発掘に貢献しています。
地域通貨の活用における課題
さまざまなメリットを持つ地域通貨ですが、過去に発行停止になった地域通貨は少なくありません。
地域通貨は導入や運用だけでなく、利用者拡大を目的とした宣伝などにもコストがかかります。地域通貨は国からの交付金や補助金、ふるさと納税などが財源になっているケースが多く、地域通貨の運用が終了する理由として、財源が確保できなくなったことが多く挙げられます。
加えて、費用対効果を出せる利用サイクルの確立も課題です。地域通貨の特性上、利用用途が制限されがちですが、利用が少ないと費用対効果が得られず、廃止に追い込まれてしまう可能性があります。
地域通貨活用の課題を解決するデジタル地域通貨とは
こうした課題を解決する手段の一つとして、「デジタル地域通貨」が注目を集めています。
デジタル地域通貨は、その名の通り地域通貨がデジタル化されたものです。デジタル通貨の登場によって、地域通貨をオンライン上で配布したり管理したりすることが可能になり、導入や運用、宣伝のためのコストが削減されました。
また、国は「デジタル田園都市国家構想」を掲げて地方自治体のデジタル化を推進しており、デジタル技術を活用し、地方の活性化や行政・公的サービスの高度化・効率化を支援する目的でデジタル実装に必要な経費などを支援しています。こうした制度も自治体のデジタル地域通貨の導入を後押ししています。
地域通貨の成功事例:世界と日本国内の例
地域通貨は日本だけでなく、世界各地で活用されています。以下はその代表的な例です。
●世界の事例①:ブリストル・ポンド(イギリス)
イギリスのブリストルで流通している「ブリストル・ポンド」は、2012年に地域経済を活性化させる目的で導入されました。この地域通貨は地元の店舗やサービスに限定して使用でき、地域内消費を促進し、大手チェーン店と競合せずに地元のビジネスを支援することを目的としています。
●世界の事例②:キームガウアー(ドイツ)
ドイツのキームガウ地方で使われている「キームガウアー」は、地域経済の活性化と地元企業の支援を目的として、2003年に導入されました。この通貨は、1キームガウアー=1ユーロの価値で発行され、地元の商店やレストランで使用可能です。また、利用者は地元の学校やNPOへの寄付を選択することができます。キームガウアには一定期間で価値が減ってしまう(減価)仕組みがあるので、利用者が溜め込むことを防いで地域内での資金循環を促し、地元企業の売上増加に貢献しています。
●日本国内の事例①:さるぼぼコイン(岐阜県)
岐阜県高山市、飛騨市、白川村で流通している「さるぼぼコイン」は、地域の伝統人形「さるぼぼ」をデザインモチーフとしたデジタル地域通貨です。この通貨は地域内での消費を促進し、観光客にも利用されることで地域経済の活性化に役立っています。
●日本国内の事例②:にしのみや地域振興券(兵庫県西宮市)
兵庫県西宮市で使用されている「にしのみや地域振興券」は、地元店舗限定で利用可能なプレミアム付き商品券です。この券を通じて地域内消費を促進し、小規模事業者を支援しつつ、地域経済の活性化を図っています。
現在日本で利用可能な地域通貨一覧
2024年3月現在、日本で利用可能な主な地域通貨は以下の通りです。
●さるぼぼコイン(岐阜県)
飛騨地方の伝統人形「さるぼぼ」をモチーフにしたデジタル通貨。
●せたがやPay(東京都世田谷区)
スマートフォンアプリを利用した地域振興のデジタル通貨。地元の店舗で利用でき、地域経済の活性化に貢献している。
●ぶんじ(東京都国分寺市)
地域内の消費を促進するためのプレミアム付き商品券。地元企業の支援と消費の活性化を目的としている。
●negi(ネギー)(埼玉県深谷市)
深谷ねぎをモチーフにした地域通貨。地域特産品の購入や地元イベントでの使用が可能。
●アクアコイン(千葉県木更津市)
木更津市の地域振興券。地元の店舗や施設で利用可能で、地域経済の促進を図っている。
●アトム通貨(東京都早稲田・高田馬場)
早稲田大学周辺の地域経済を活性化するための地域通貨。学生や地元住民による利用が促進されている。
●Byacco/白虎(福島県会津若松市)
会津若松市の歴史や文化を背景に持つ地域通貨。地元の店舗での消費を促し、地域の魅力を発信している。
●ひらつか☆スターライトポイント(神奈川県平塚市)
平塚市内の店舗で使用できるポイント制の地域通貨。市内の消費活性化と地域経済の循環を目的としている。
●富士山Gコイン(静岡県御殿場市)
御殿場市内の店舗で利用可能なデジタル地域通貨。スマートフォンアプリを使って決済ができ、観光客の利用も促進している。
●MORIO Pay(岩手県盛岡市)
盛岡市内の店舗で使用できるデジタル地域通貨。スマートフォンアプリを通じて利用でき、市内の消費喚起と地域経済の活性化を目指している。
●まにこいん(岡山県真庭市 (株)トマト銀行)
真庭市内で流通する地域通貨。株式会社トマト銀行が発行し、市内の店舗で利用可能。地域内の経済循環と地元企業の支援を目的としている。 ※上記は2024年3月段階で稼働している地域通貨の一例ですべてを網羅するものではございません。
地域通貨を導入する際のポイント
地域通貨を導入する際のポイントは以下の通りです。
●利用するハードルを下げる
デジタル地域通貨を導入する場合、機能が複雑だと利用率が低迷する可能性があります。スマートフォンの操作が苦手な人でも活用しやすいように、直感的な操作で利用できる設計にしたり、チャージできる場所を増やしたりすることは利用促進につながります。 加盟店が導入しやすい仕組み作りも欠かせません。ポスターやチラシ、ステッカーといった販促グッズを運営側が用意する、アプリのQRコードを活用して専用端末の導入を不要にするなどの工夫が必要でしょう。
●継続して利用してもらうための仕組み作り
地域通貨の導入では、継続的に利用してもらうための仕組み作りが重要です。地域によっては、地域通貨でしか買えない商品を設定したり、ポイントを貯める仕組みを構築したりしているところもあります。また、デジタル地域通貨を行政サービスやポイントと一緒に管理・運用できる地域通貨プラットフォームの導入も有効です。
地域通貨の導入・運用では外部のサービス活用も有効
地域通貨は、地域経済やコミュニティを活性化し、地域価値を発掘するための効果的な取り組みです。導入では、利用するハードルを下げることや、継続して利用してもらうための仕組み作りが欠かせません。 近年は、地域通貨を導入・運用するためのさまざまなサービスが登場しています。地域に根差した持続可能な地域通貨を導入・運用するために、こうしたサービスの活用を検討するのもいいでしょう。
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