2024.03.29 (Fri)

まちづくりのヒント(第1回)

どこでも高品質な医療サービスを! オンライン診療の現在地

 近年、スマートフォンやタブレットを使って、医師による診察を受けられる「オンライン診療」に注目が集まっています。2024年には、AI技術の発展、VR技術の実用化、そして5Gネットワークの広範囲な普及が、オンライン診療をさらに発展させるとして期待されています。この記事では、オンライン診療の現状をもとに、これらの技術革新がもたらす新たな診療の可能性を紹介します。

オンライン診療とは

 厚生労働省によると、オンライン診療は「遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」です。わかりやすくいうと、インターネットやデジタル通信技術を活用して遠隔で診察を実施する医療サービスで、ビデオ通話、チャット、Eメールを通じて、医療相談や診断、さらには処方箋の発行が可能になります。 近年のスマートフォンやタブレット、ノートパソコンの普及により、オンライン診療はますます身近な存在になってきています。

 オンライン診療が注目されている背景には、ニーズの拡大やDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進があります。例えば、新型コロナウイルス感染症の流行は非接触型の医療ニーズを急速に高め、オンライン診療の需要を大きく増加させました。また、DXの推進によって医療分野でも技術の導入が進み、オンライン診療の質と効率を向上させています。

オンライン診療のメリット

 オンライン診療は、患者と医療提供者の双方に多くのメリットがあります。主なメリットは以下の通りです。

どこからでも医療サービスを受けられる

 オンライン診療の最大のメリットは、地理的な制約を超えて、どこにいても医療サービスを受けられる点です。適切な医療が必要な人々が、移動にかかるコストを気にすることなく、迅速に医療サービスを利用できます。

感染症のリスクを抑えられる

 コロナ禍を経験し各感染症への意識が高まる中において、オンライン診療は感染リスクの低減に大きく貢献しています。医療機関への訪問を伴わないため、他の患者との接触がなく、感染症の拡散防止に効果的です。特に、免疫力が低い患者や合併症リスクがある高齢者など、感染リスクを最小限に抑える必要がある人々にとって、オンライン診療は安全に医療サービスを受けられる手段となっています。

医師の負担が減る

 オンライン診療は、医師の負担軽減にも役立ちます。診察のための物理的な準備や患者の移動支援が不要になるため、診療時間を効率的に使えるようになります。医師はより多くの患者への対応が可能となり、高品質な医療サービスの提供に注力できるようになります。

オンライン診療のデメリット

 オンライン診療は多くのメリットを提供するものの、注意すべきいくつかの制約やデメリットも存在します。オンライン診療のデメリットは以下の通りです。

処置や検査ができない

 オンライン診療の最大の制約は、物理的な処置や詳細な検査ができないことです。例えば、血液検査やX線撮影などの診断検査は、患者が医療施設を訪れる必要があります。また、手術や緊急時の処置もオンライン診療では対応不可能なため、これらの点に注意が必要です。

緊急性の高いケースに対応できない

 オンライン診療は、緊急性の高いケースや迅速な医療介入が必要なケースには適していません。生命に直接関わるような緊急事態には即座の医療処置が求められますが、オンライン診療では必要な治療を適切なタイミングで行えないリスクがあります。

セキュリティやプライバシーに配慮が必要

 オンライン診療では、データのセキュリティとプライバシー保護が重大な課題です。セキュリティが不十分な場合、患者情報の漏えいや不正アクセスのリスクが増大します。そのため、信頼性の高いオンライン診療プラットフォームの利用と、厳格なプライバシー保護が必要です。

5G・AI・VRがオンライン診療の進化を後押し

 オンライン診療は5G通信の恩恵を存分に受けられる領域の一つだと考えられています。5Gとは携帯電話などに用いられる第五世代移動通信システムのことで、4G/LTEを超える高速通信、大容量データ転送、低遅延を実現します。5Gの高速性と大容量により、オンライン診療で高解像度の画像や動画をリアルタイムで共有することができ、診断の精度を向上させることが可能です。

 また、5Gの低遅延特性(速い反応時間)は、オンライン診療をより迅速にし、遠隔地での手術支援や緊急時の対応を実現します。さらに、5Gネットワークの高い信頼性が、医療情報の安全な送受信とプライバシーの保護を強化し、患者と医療提供者の信頼を高めます。5G技術の普及により、遠隔地でも高度な医療サービスの提供が現実化し、オンライン診療の可能性を大きく広げることになります。

 AI技術やVR技術などの技術革新も、オンライン診療の進化に寄与しています。これらの技術的進歩により、オンライン診療の範囲が拡大し、新たな診療方法が開発されています。

 例えば、AIが大量の医療データからパターンを学習することで、診断の補助や治療計画立案の支援が可能になってきています。これにより、医師は患者の状態を迅速かつ正確に把握し、患者一人ひとりに最適な治療方針を提案することが可能です。さらにAIは画像診断の正確性を高め、病気の早期発見にも大きく貢献しています。

 VRを活用したシミュレーションを通じて、医師や医療従事者は実際の臨床環境を再現した場で、手術技術や診療の練習を重ねることが可能です。このシミュレーションによって、技術の向上や緊急対応の能力が強化されます。また、患者がVRを使って治療や手術のプロセスを事前に体験することで、不安を軽減させることも期待されます。

オンライン診療の可能性を拡大する取り組み

 オンライン診療の可能性を拡大する取り組みとしては、NTT東日本の仙台市における実証実験が挙げられます。このプロジェクトは、仙台市医師会、仙台市、東北大学大学院工学研究科と共同で行われており、医療DXの一環として「遠隔地のオンライン診療の実用化」を目指しています。

 この実験では、医師の定期訪問が難しい地域の患者宅を、医療機器を装備した車両で訪問看護師が訪れます。訪問看護師が患者の状態や聴診音、心電図、超音波画像などを遠隔地の医師に伝えることにより、どの地域にいても高品質な医療を提供できることが期待されています。

 NTT東日本はこの実証実験をもとに、医師の訪問が難しい地域でのオンライン診療普及のための課題を特定し、解決策の検討を進めています。さらに、無線環境下の医療機器の操作を簡素化し、患者と医療提供者の双方に受け入れられるオンライン診療システムの開発を目指しています。

 オンライン診療は、技術革新によって年々進化を遂げています。AIやVRといった技術の発展は、診療の質を向上させ、臨床教育を一新する可能性を秘めています。さらに、5G技術の採用により、オンライン診療は高速で大容量のデータ伝送、低反応時間、そして高い信頼性を実現し、遠隔地でも質の高い医療サービスが提供可能になります。これらの技術革新がオンライン診療を新たなレベルへと押し上げ、医療サービスの質の向上と多くの人々へのサービス提供に貢献するでしょう。

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