2024.12.03 (Tue)

まちづくりのヒント(第21回)

デジタル地域通貨を導入したのはどんな自治体?2023~2024年版

 持続可能なまちづくりの手段として注目を集めつつある「デジタル地域通貨」。コロナ禍を経て、スマートフォンを使った「非接触決済」が広く受容されつつある状況も、デジタル地域通貨普及の追い風となっています。本記事では、2023~2024年にデジタル地域通貨を導入した主な自治体をピックアップしてご紹介します。

地域経済に好循環をもたらす。デジタル地域通貨の魅力とは

 デジタル地域通貨の導入は、地域の活性化においていくつものメリットがあります。一つには、地域内経済の循環です。

 これまでも、地域のお金が地域外に流出してしまうことを防ぐため、例えば特定の地域でのみ利用できるプレミアム付き商品券や、ポイントカードといった、紙媒体を用いた施策が実施されてきました。しかし、紙媒体は発行から回収、集計、精算など、物理的に煩雑な作業が発生するため、地域の商店やサービス事業者といった加盟店にとっては負担となってしまいます。そこで、スマートフォンアプリなどを用いた、地域限定のデジタル地域通貨が注目されているのです。

 デジタル化により、運営主体となる自治体や企業にとっては、印刷や集計といった作業が省略・軽減され、運営コストが安価で済みます。加盟店側でも、換金業務が自動化されることで、負担が軽減されます。地域住民にとっては、プレミアム付き商品券と同様に、お得な買い物ができます。なお、スマートフォンを持たない住民には、並行して一部紙での運用を続けるといった柔軟な対応も可能で、それでも十分に上記のメリットを享受できます。

 また、デジタル地域通貨は、単なる決済手段というだけではありません。ポイント付与によって地域のイベント参加を後押ししたり、アプリを通じて給付金を発行するといった活用法があります。地域住民との接点を増やすと同時に、決済をはじめとしたやり取りのデータを蓄積・分析することで、他の施策に活かすこともできます。

 そしてこれらの取り組みを通じて、自治体、加盟店、住民のデジタルリテラシーを向上させることにもつながると期待されています。

政府が後押しする地域DX。デジタル地域通貨の採用実績は?

 日本政府は「デジタル田園都市国家構想(デジ田)」を掲げ、地方公共団体による自主的・主体的なDXへの取り組みを強力に後押ししています。各自治体が企画したDX事業に対し、交付金を発行。さらに、予算面のみならず、他自治体での成功事例の横展開など、さまざまな形で支援を行っています。なお、この交付金では施策が4タイプに分類されており、デジタル地域通貨は「デジタル実装」タイプに該当します。

 直近での令和5年度(2023年度)補正予算では、「産業振興」のカテゴリで、多くの自治体が交付金を活用し、デジタル地域通貨施策を企画・推進しています。

 群馬県安中市では、市内でのみ利用できるデジタル地域通貨「UMECA(ウメカ)」を2024年12月にスタートさせました。同市ではデジタル地域通貨を、「地域課題を総合的に解決するプラットフォーム」と位置づけており、今後もプレミアムポイント事業や出産・子育て応援ギフト、行政ポイントなど、さまざまな事業に活用していくといいます。スマートフォンアプリのほか、スマートフォンを使えない人のために、カードタイプも用意しています。

 埼玉県飯能市でも、給付事業をはじめ、さまざまな事業をデジタル地域通貨プラットフォームに統一する構想を進めています。飯能市は令和5年度に、出産・子育て応援交付金を電子クーポンで配布しました。この取り組みをさらに発展させるべく、今後は健康ポイントや赤ちゃんスマイルクーポンの配布に向けたシステム拡充を行っています。こちらもスマートフォンアプリに加え、カードタイプの発行にも対応する見込みです。

 その他、令和5年度(2023年度)補正予算で、デジタル地域通貨の施策を企画した主な自治体は以下のようになっています。

※政府資料より抜粋。 https://www.chisou.go.jp/sousei/about/mirai/policy/r5hoseigaiyou/index.html

デジタル地域通貨を単体施策で終わらせないために

 日本政府の後押しもあり、地域課題解決の手段として注目を集めるデジタル地域通貨。しかし、単なるキャッシュレス決済なら、ほかに便利なサービスはたくさんあります。そんな中で、あえてデジタル地域通貨を立ち上げる目的をしっかり考える必要があるでしょう。

 導入のポイントとしては、単体の施策として完結させないことが挙げられます。あくまでも地域DXという大きなグランドデザインの中で、各種施策の中核を担うツールとして、デジタル地域通貨を捉えることが大切です。

 例えば今回ご紹介した安中市や飯能市の事例では、デジタル地域通貨を「プラットフォーム」と位置づけているのが大きな特徴です。つまり、地域の経済基盤として、決済以外にも行政施策や民間活用など、利用の幅を広げていくことを最初から考えています。デジタル地域通貨の定着によって住民の利便性を高めつつ、中長期にわたって地域全体の経済を活性化させ続けていく仕組みづくりが必要なのです。

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