2024.11.07 (Thu)

まちづくりのヒント(第17回)

検討前に知っておきたい、自治体の地域通貨発行に関するルールとは?

 地域通貨の発行には守るべきルールがあります。ルールを理解するための第一歩として、法定通貨との違いや、財務局の資料「デジタル地域通貨の発行に関する留意事項~都道府県・市町村による発行~」の内容を見ていきます。

地域通貨は法定通貨と何が違うのか?

 日本国の法定通貨は、日本銀行が発行する銀行券です。地域通貨発行のルールを理解するにあたり、まずは法定通貨と地域通貨の違いを解説します。

  • ・法定通貨:国や中央銀行が独占的に発行する通貨で、法律に基づく強制通用力がある
  • ・地域通貨:信用組合やNPO法人などが独自に発行する通貨で、法律に基づく通用力がないため、別途、信用の裏付けが必要

 地域通貨は名称に「通貨」と付いていますが、強制通用力がない点が、法定通貨との大きな違いです。そのため地域通貨の価値は、発行した自治体や企業、NPO法人などが保障しています。地域限定の決済手段であり、地域の知られざる価値を発掘し、循環させることで地域経済を活性化したり、地域交流を活発化させたりする社会的なシステムとして機能しています。

 もう一点、法定通貨との違いとして挙げられるのが、地域通貨には貯蓄性がないことです。法定通貨には3つの機能があります。1つ目は「価値保存機能」で、持っている機能が変わらず、貯蓄として貯えることができることです。2つ目は「交換仲介機能」で、商品と貨幣を交換することができる媒体としての機能を意味します。3つ目が「価値尺度機能」で、商品に対して値段を付けるといった価値を決める物差しとしての機能です。

 地域通貨には、この3つの機能のうち「価値保存機能」がありません。貯蓄や貸し出しによって利子を得られず、通貨価値を減価させる可能性もあるため、地域内での利用を促し、早い速度で流通させることが重要です。

自治体がデジタル地域通貨を発行する場合の留意点とは?

 財務局のホームページには「デジタル地域通貨の発行に関する留意事項~都道府県・市町村による発行~」という資料が掲出されています。そこではまず基本的なルールとして、財務局への登録・届出の必要性について示されています。これは資金決済法の規則です。

 資金決済法とは、情報通信技術の発達や利用者ニーズの多様化に対応するために生まれた新たな決済システムを規制する法律です。前払式支払手段の発行や、資金移動業、認定資金決済事業者協会などに関わる内容で、2010年4月1日に施行されました。利用者を保護するとともに、決済システムの安定性や効率性、利便性の向上を目的としています。

 上記の財務局の資料には、商品券やプリペイドカードなど前払式支払手段の発行者で、一定の要件を満たす場合には、資金決済法により、発行者は財務局への登録・届出が必要であることが記載されています。ただし、地方公共団体が前払式支払手段の発行者となる場合は、資金決済法の適用除外とされ(資金決済法第4条第3号)、登録・届出の必要はない旨が記載されています。

 地方公共団体が前払式支払手段のデジタル通貨を発行する場合は、資金決済法の適用除外となりますが、留意点として下記3点が挙げられています。

 まずは、地域通貨の発行者が地方公共団体となっているかどうかです。資金決済法の適用が除外されるのは、発行者が地方公共団体の場合のみなので、業務委託先などが発行者となっていないか確認してほしい旨が記載されています。

 2点目は、利用規約やホームページなどで、地域通貨の発行者名や利用期間、トラブルがあった際の連絡先の情報を提供することです。利用者保護の観点から適切な情報提供を呼び掛けています。

 3点目は、利用者から依頼を受けて資金を移動するサービスを行う場合は、資金決済法に基づく資金移動業の登録が必要になる場合があることです。併せて、資金移動業の登録主体は株式会社等のみで、地方公共団体は登録主体になれないことが明記されています。

デジタル地域通貨に関するルールはほかにもある

 そのほか、気を付けたいのはポイント付与についてです。加盟店への来店や利用額に応じてポイントを付与する場合は、不当景品類及び不当表示防止法の「景品類」のうち「総付景品」に該当します。付与制限が決まっており、取引の額の10分の2まで(取引額 1,000円未満の場合は 200円まで)の規制があることに注意が必要です。加えて、ボランティアへの参加でポイントを付与する際には、厚生労働省が発行する「ボランティアポイント 制度導入・運用の手引き」に沿った内容にすることが求められます。

デジタル地域通貨の運用に必要な周辺業務は?

 基本的なルール以外にも知っておきたいのが、デジタル地域通貨を運営するためには、多くの周辺業務が発生することです。まずは、業務フローの設計や加盟店の募集などを行う運営事務局を組織しなければなりません。加盟店への精算や振り込み業務を担当する部署を決めたり、上記留意事項にもあるように、利用者保護のためデジタル地域通貨専用のコールセンターを設置したりといった準備も行います。

 ほかにも、PRのためのホームページやポスター・チラシの作成、加盟店や利用者向けの説明会の開催など広報関係の手配も必要です。さらにデジタル地域通貨の利用状況を把握し、課題を見つけ、改善するためのデータ分析業務も重要になります。これらの周辺業務は自治体内だけで対応するのが難しいケースも考えられます。外部人材の活用がスムーズな運用につながるかもしれません。

デジタル地域通貨を活用したまちづくり

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