2017年2月24日の金曜日から、「プレミアムフライデー」が始まりました。毎月末金曜日は退社時間を早めて、週末は趣味や食事、旅行などで、プライベートを普段より“プレミアム”に過ごすという制度で、労働時間の短縮と、デフレ傾向を変える個人消費喚起の両方を狙い、経産省が取り組んでいます。
しかし、2月24日の1回目となるプレミアムフライデーでは、ほとんどの企業で退社時間が早まることはなかったといいます。なぜ多くの企業で、プレミアムフライデーが実現されなかったのでしょうか。
プレミアムフライデーを実施する企業は少なかった
プレミアムフライデーのプロモーションを行っているプレミアムフライデー推進協議会事務局は、全国の企業および有識者を対象としたアンケート資料「2月24日(金)第1回『プレミアムフライデー』実態調査」を、3月15日に発表しました。
この資料によれば、1回目のプレミアムフライデーにて「会社が早く帰宅することを推奨していたので、通常よりも早く退社した」という回答は、全体のわずか7.6%で、「会社が推奨していたわけではないが、通常より早く退社した」という回答も9.4%しかありませんでした。
これに対して「会社が推奨していたわけではなく、通常と変わらない時間に退社/通常よりも遅く退社した」は71.9%と、なんと7割も超える結果となりました。つまり、ほとんどの企業でプレミアムフライデーは推奨されておらず、かつ早く退社できてないという実態が明らかになりました。
政府がプレミアムフライデーを推奨しているにもかかわらず、なぜ多くの企業で実施されないのでしょうか。その原因のひとつには、そもそもプレミアムフライデー自体に強制力がないという前提が挙げられます。プレミアムフライデーを実施しないことによる罰則は特にないため、あえて導入する必要はないと判断している企業も多いと考えられます。
これに加えて、プレミアムフライデーが実施される毎月末金曜日は、月の「締め」の業務が多忙になる時期でもあります。そのため、通常の金曜日以上に、残業が発生する率が高くなりがちです。溜まった業務をこなすため、通常の営業日よりも残業せざるを得ないというケースも多いでしょう。
以上のことを考慮すると、プレミアムフライデーをすべての企業が導入するというのは、簡単なことではないといえそうです。
プレミアムフライデーを導入した企業の狙いとは
とはいえ、プレミアムフライデーで早期退社を実現している企業も中にはあります。そうした少数派の企業は、どのようにして実施しているのでしょうか。
たとえば住友商事では、プレミアムフライデーを有給休暇の取得率向上の一環として取り組んでいます。プレミアムフライデー当日を全休・午後半休取得奨励日とし、さらに毎週金曜日を「有給休暇取得・フレックスタイム退社奨励日」に設定。休暇や午後3時以降の退社を呼びかけることで、有給休暇の消化率の向上を狙っています。
住宅メーカーの大和ハウス工業では、偶数月の最終金曜日に限り、始業時間を1時間早め、午後を有給休暇としています。つまり、当該日は8時~12時という4時間の短時間労働となります。午前中に集中して働くというワークスタイルの変更で、従業員に生産性の向上を意識づける狙いがあるといいます。
ソフトバンクでは、毎月末金曜日の午後3時を退社奨励時間に設定しました。さらに4月からは、約1万人の従業員を対象に、コアタイムを撤廃したフレックスタイム制を導入し、在宅勤務制度の変更も行っています。
同社ではこれに加えて、全従業員に毎月1万円の助成金を給付することも発表しています。これには、業務時間の変更により捻出できた時間で、社員自身のスキルアップを奨励する狙いがあるといいます。
プレミアムフライデーに便乗して会社の意識改革を
これらの企業に共通しているのは、プレミアムフライデーを自社の働き方改革の一環と捉え、実施しているという点です。
単純に早く帰るだけでは、繁忙日である月末金曜日の業務が終わらず、ほかの日にそのしわ寄せが起きるだけです。短い労働時間でも成果を出すためには、生産効率を向上する必要があり、そのためには業務効率化やワークスタイルを変える必要があります。つまり、プレミアムフライデーの早期退社を実現させるには、企業と従業員が手を合わせ、従来から一歩踏み込んだ働き方改革を実行する必要があります。
「今は様子見」として、プレミアムフライデーを静観していれば、働き方改革や生産効率はいつまでも手付かずのままです。一方で、プレミアムフライデーを契機に、働き方改革を実現し、より効率の良い働き方を実現している企業もあります。
「プレミアムフライデーを実施してもほかの日に残業が増えるだけ」と、デメリットばかりに注目して導入を見送るのは、得策ではありません。プレミアムフライデーに便乗することで、自社の働き方改革をスタートしてはいかがでしょうか。
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