顧客に丁寧に対応していたつもりが、突然、激怒し、大声で怒鳴り出すケースがあるとします。こんな時、気が動転し、ただ謝罪しかできなくなることもあるかもしれません。しかし、その応対はかえって、相手の気持ちを逆なでしてしまう場合があります。
激怒している相手にいったいどうすればいいのか?今回は通常のクレームに加え、悪質なクレーマーを前にしてしまったときの、実践的な対処方法についてまとめます。
最初に謝罪するのは正解か?
激怒する顧客に対して謝罪をすべきか、しないべきかは、企業や人によって意見が異なります。「揚げ足を取られるから絶対に謝るな」と指導する企業もあれば、「まずは謝って少しでも怒りを静めるべき」という方針の企業もあるでしょう。
どちらがより適切なのかは、ケースバイケースですが、企業の方針が「謝るべからず」であるのであれば、その方針に従うべきでしょう。激怒してきた顧客が悪質なクレーマーならば、相手はこちらの発言を根拠に、何かしらの利益を得えようとあの手この手のテクニックを使ってきます。そのような悪意あるやり方には、こちらも同様の心構えが必要になります。
しかし、これからできるだけ理性を持って対話をしなければいけないときに、ひと言も謝らないのはお互いの心象が悪くなりかねません。
そこで折衷案として、全面的な謝罪と受け取られない「内容を限定した謝罪」をすると良いでしょう。たとえば、「お手間をとらせて、申し訳ございません」「ご不快な思いをさせて、申し訳ございません」といったフレーズです。謝罪内容を、あくまで「クレームのための時間を取らせたこと」「クレームを入れるという不快な思いをさせたこと」に限定すれば、サービス全体の謝罪にはならないため、揚げ足を取られるケースも少なくなるでしょう。
聞き役に徹し、相手の気を落ち着かせる
もうひとつのテクニックとしては、とにかく「聞き役」に徹することです。相手も感情が高ぶっていますから、これから冷静に話し合うためには、一度気持ちを吐き出してもらう必要があります。このときに、繰り返し謝ってはいけません。度重なる謝罪はマニュアル対応のように見えて、かえって火に油を注ぐことになりかねません。
聞き役に徹しながら、相手の言葉から真意を把握するよう努めましょう。顧客が何に対して怒っていて、どんな要求をしているのかを冷静に判断し、こちら側ができる対応を考えます。そうしているうちに顧客の怒りが収まれば、成功といえるでしょう。
正当なクレームに対しては妥協案を探る
たとえ正当な理由によるクレームであったとしても、相手の要望に対して、企業には対応ができることと、できないことがあります。
対応できない場合は、顧客の要望に近い代替案を探るべく話し合いになりますが、できるだけ本音で話し合いましょう。企業として要望に応じられない理由を正直に打ち明け、顧客に対してなにができるかを能動的に示す姿勢が大切です。
相手が悪質なクレーマーであれば、金品による賠償や、非を認めさせようと詰め寄ってくる場合があります。これは勢いに乗じて謝罪させるクレーマーのテクニックになります。相手のペースに乗らず、ゆっくり落ち着いて話すのが得策です。
顧客をクレーマー化させる従業員の言動
ここまでクレーマーと直接やりとりする際のポイントについてご紹介してきました。ですが、火のないところに煙は立たずという言葉があるように、企業側の適切とはいえない顧客への対応が、怒りに火を付ける例も多いようです。
おどおどと自信がないような接客は、相手に対して不必要な疑念を抱かせます。また最初から悪質なクレーマーと決めつけて対応すると、その態度は伝わるものです。顔と顔を合わせた対応に問題がなくても、メールでは言葉足らずになる人がいます。クレーマーを不自然に多く抱える従業員がいたら、行動を注視しておいたほうがいいかもしれません。
もうひとつは、過剰な顧客優先主義を続けてしまい、顧客が自分でも気付かないうちに増長し、企業が悪質なクレーマー予備軍を育ててしまっているケースもあります。節度を保って顧客と接するようにしましょう。
連載記事一覧
- 第1回 山本五十六から学ぶ人材育成論 2016.03.09 (Wed)
- 第2回 SMAP騒動に学ぶ、できる社員の扱い方 2016.04.06 (Wed)
- 第3回 これからの社員食堂の話をしよう! 2016.04.28 (Thu)
- 第4回 相撲の世界に学ぶ、会社経営の肝要とは 2016.05.10 (Tue)
- 第5回 ゆとり世代の部下育成に悩む上司のためのコーチング術 2016.05.17 (Tue)
- 第6回 自発的に動く組織のつくり方 2016.06.14 (Tue)
- 第7回 有名企業にみる働きがいのある職場のつくり方 2016.06.17 (Fri)
- 第8回 指示待ち社員を上手に活用してビジネスを円滑に回す 2016.06.30 (Thu)
- 第9回 気を付けて!その一言が部下の成果を左右する 2016.07.12 (Tue)
- 第10回 社内FA制度のメリット・デメリット 2016.07.14 (Thu)
- 第11回 “優秀な人ほど辞めてしまう”企業の特徴 2016.07.20 (Wed)
- 第12回 あなたのストレス解消法は間違っている!? 2016.07.27 (Wed)
- 第13回 「ゆとり社員」が敬語を話せないのにはワケがある 2016.08.19 (Fri)
- 第14回 孫子の兵法に学ぶ、人望を集めるリーダーの姿勢とは 2016.08.25 (Thu)
- 第15回 タイプ別、従業員のやる気を引き出す4つのポイント 2016.09.12 (Mon)
- 第16回 ずっと仕事をし続ける部下に「手抜き」を教える方法 2016.09.28 (Wed)
- 第17回 平成生まれ世代の部下に嫌われない上司になるには 2016.12.01 (Thu)
- 第18回 顧客が突然怒り出したときの対処法 2016.12.19 (Mon)
- 第19回 “イクメン企業”に学ぶ、ワークスタイル変革術 2017.02.24 (Fri)
- 第20回 スターバックスには接客用のマニュアルがない 2017.03.13 (Mon)
- 第21回 指示待ちの部下が自発的に変わる「質問」の力 2017.03.23 (Thu)
- 第22回 部下を叱るのが下手な人が注意すべきポイント 2017.03.27 (Mon)
- 第23回 プレミアムフライデーを導入しないのは企業の損失? 2017.04.11 (Tue)
- 第24回 睡眠6時間でも不足!?生活習慣「睡眠負債」の危険性 2017.10.24 (Tue)
- 第25回 優秀な中途採用者を活用できる会社と腐らせる会社 2017.11.30 (Thu)
- 第26回 内向的な人がリーダーシップを取るコツ 2018.01.10 (Wed)
- 第27回 上司が率先して休むと、部下の生産性は向上する!? 2018.01.23 (Tue)
- 第28回 たとえ家賃が高くても、会社近くに住むほうが幸せに 2018.02.06 (Tue)
- 第29回 マスク着用で笑顔をお届け!? コロナ禍の接客法 2020.10.20 (Tue)
- 第30回 73.3%が「難しい」と回答、テレワークの人事評価 2020.12.01 (Tue)
- 第31回 どう育てる? コロナ禍の新卒&若手教育 2021.03.09 (Tue)
- 第32回 覚えておきたい職場ハラスメントの現状と対策 2021.06.03 (Thu)
- 第33回 優秀な人材は「ナラティブ」(物語)で採用する時代 2021.09.14 (Tue)