2021.03.09 (Tue)
社員のモチベーションを高めるヒント(第31回)
どう育てる? コロナ禍の新卒&若手教育
もうすぐ新入社員の入社シーズンがやってきます。2021年は昨年に引き続き、「集団研修を中止して、数人単位のグループ研修を執り行う」「テレワーク環境下でOJTを実施する」など、コロナ禍仕様の研修を行う企業も多い見通しです。「集まれない」「触れ合えない」、そんな環境で行う新人教育の注意点とは。新卒の傾向や、接し方のコツ、知っておきたい考え方やコロナ禍のストレスケアなどについて解説します。
安定志向の新人を輝かせるには「心理的安全」の担保が欠かせない
公益財団法人日本生産性本部が実施した「働くことの意識調査」によると、2021年3月卒の就活学生のうち63.5%が「働き方は人並みで十分」と回答したことがわかっています。「若いうちは進んで苦労すべきか」という質問に対し「好んで苦労することはない」と答えた学生は37.3%で、過去最高の数値を更新しました。これらの結果から、「仕事はそこそこでかまわない」「おだやかで安定した人生を歩みたい」と考える若者が多い傾向であることが見て取れます。
「仕事への執着心が弱めで安定志向」、そんな若者にいきいきと働いてもらうためには、なによりまず会社が“安全で安定した場”でなければなりません。そこで注目したいのが、「心理的安全性」という概念です。心理的安全性とは、他者からの反応に怯えたり羞恥心を感じたりすることなく、誰もが自然体の自分をさらけ出すことができる状態を意味する言葉です。2015年、Googleが数年に渡ってチーム力に関する大規模な調査を行い、その結果「心理的安全性は成功するチームの構築にもっとも重要な要素である」と発表したことで話題になりました。
心理的安全性を担保するには「メンバーに対して平等に発言の機会を与える」「メンバーを尊重する」「常に互いの発言や考えをポジティブに捉える」「競争よりも協力を促す」「否定から入らない」などの工夫や努力が必要です。また、部下やメンバーに「自由にやってよい」と丸投げするのではなく、上長が責任を持って、部下の発言を引き出したり、協創が生まれる仕組みを構築したり、心理的安全性の必要性を伝えたりと、チームの変革をサポートすることが欠かせません。
こうして心理的安全が保たれると、メンバーたちは自主的かつ前向きに協力し合い、仕事を進めようとします。新人ものびのびと仕事に取り組むようになりますし、また、メンバーも率先して新人の教育やサポートを担ってくれるのです。
長引く新型コロナの影響で、社会の不透明感や経済への不安感が高まり続けている昨今。だからこそ、「せめて会社は安全な場であってほしい」と願う従業員が増えています。いまや心理的安全性を担保することは、企業にとって、ひとつの社会的責任を果たすことでもあると言えるのです。
結果を求めるとうまくいかない。インプットを心掛ける
心理的安全性とともに意識したいのが、「対話とインプット」です。
新人の指導や教育は、目標や結果から入るとうまくいきません。「この目標を達成してほしい」「この案件を完遂してほしい」などの期待のもと指導を行うと、期待した結果が出なかったとき「なぜうまくいかなかったのか」と相手を責めてしまいがちです。責められていると感じると新人は萎縮し、なお結果から遠ざかってしまいます。
こうした負のスパイラルに陥らないようにするには、「対話とインプットから入る」のがポイントです。自分の持っている知識を余すところなく提供し、対話しながら、とにかく情報をインプットしていきます。インプットがうまくいけば、相手の行動が変わり、結果がついてくるはずです。逆に行動が変わらない、結果が出ないときは、「インプットに問題がある」と考え、改善を試みるとよいでしょう。
テレワーク環境下でも、Web会議システムやチャットツールを活用すれば、こまめにコミュニケーションを取ることが可能です。あわせてウェビナーや動画学習サービスなどを採り入れれば、十分な知識を提供することができるはずです。これらを活用して、平時以上に「結果よりインプット」を心掛け、新人の成長を後押ししましょう。
コロナ禍のストレスケアは「早めに」「継続して」実施する
長引くコロナ禍でストレスを抱える若手ビジネスパーソンが増えています。最後に、ストレスダウンの防止策について確認しておきましょう。
対策の軸になるのは、「個人の自己管理力を強化すること」と「上司のサポート力を強化する」こと。「個人の自己管理力」は、メンタルケア研修を受講してもらう、ヘルスケアやメンタルケアに関する本を課題として読んでもらう、タスクやスケジュールをこまめにチェックして管理の仕方についてアドバイスするなどの方法で、少しずつ鍛えることが可能です。
ポイントは、入社後早めの段階でトレーニングを開始すること。新しい仕事や環境によるストレスが積み重なってからでは遅いので、入社してからあまり間をおかず、定期的に研修を実施するとよいでしょう。
「上司のサポート力」も、定期的な研修で高められます。また、ビジネス用のSNSを活用する、対話のタイミングや回数をある程度ルール化するなどの方法で補強することもできます。他に、部下にアンケートを取って、それをもとにヒアリングをしてもらうというのも、本音での対話が生まれやすい有効な手段です。
それでもうつ症状の従業員が出てしまった、という場合は、早めに専門機関に相談しましょう。例えば東京産業保健総合支援センターなど、無償で、企業側・労働者側の相談に乗ってくれる公的機関もあります。症状が重くなる前に電話するとよいでしょう。
コロナ禍の新人教育は、「安心・安全」「インプット」「早め」がキーワードです。不安を抱える新人の気持ちを理解し、寄り添い、まずは土台づくりや環境整備に注力したプログラムを組んでいくこと欠かせません。
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