2016年1月にお茶の間のみならず、社会全体を揺るがしたSMAP騒動。単なる芸能ニュースかと思えば、「後継者争い」や「独立」など、働く世代が一度は悩む普遍的な問題が原因であったため、多くのビジネスパーソンがグループの行く末に注目しました。
騒動の顛末については専門家たちに任せるとして、ここでは会社と社員のあいだで生じる軋轢を最悪の事態に発展させないためにはどうすればよいのか、リーダーの役割と従業員満足の観点から探っていきます。
従業員満足をおろそかにすると社員は本当に出ていく
経済のグローバル化という避けられない大波にさらされ、雇用の非正規労働化が進むなかで、正社員の立場も盤石とはいえなくなってきました。ひとつの会社を勤め上げるキャリアプランがむずかしく、より実力中心主義になったために、意識が高く有能な人材ほど、現状に不満があれば活躍の場を社外に求めます。いまや従業員満足は円滑な会社経営に欠かせない概念です。
まず従業満足を向上させる代表的な方法をあげてみましょう。
・明確な評価基準に基づいた給与体系
・立場を超えた発言が許される、自由で生産的な職場環境
・育児休暇制度とそれを取得しやすい環境
・偏りのないワークライフバランス
・安心して働ける福利厚生
これらを実践するには、なにがあっても従業員満足の施策を実現しようとする、経営者の強い意志が必要不可欠です。それには日ごろからリーダーシップを発揮して、経営理念や未来を描くビジョンを社員全体に浸透させ、会社に健全な一体感を醸成しておくとよいといわれます。
トップの意志をくまなく伝えるにはどうするべきか?
経営者の意志を社員に伝える方法はいくつかあります。毎月の朝礼や一斉メール、管理職との密な会合などは、おおむねどの会社でも取り組んでいることでしょう。
このような場に共通しているのは、経営者みずからが社長室を飛び出して、社員の元へ歩み寄っている点です。従業員からみると経営者という存在は非常に大きく、どんなに規模の小さい会社だとしても社長は雲の上の人です。従業員が社長室のトビラを気軽にノックすることは簡単にはできないので、経営者のほうから階段を下りていかなければなりません。
そしてこのときに、相手にわかりやすい言葉で話すことが重要になります。つい忘れてしまいがちですが、自分にとってわかりやすい言葉や説明の順番が、相手にとってもわかりやすいとは限りません。年齢はもちろんですが、置かれてきた環境によって、是とするものは当然異なるので、そこをくみ取って伝えられる言い方を探してください。端的で短い言葉にたどり着くには、しっかり時間をかけて頭を悩ます必要があります。
若手・中堅社員の従業員満足
会社に忠誠を誓ったところで、それが必ずしも報われるわけではない時代だと知っているのがいまの若い世代の特徴です。したがって、この層に対しては、組織のよさを十分に伝えるとともに、それを実感してもらうよう取り組んでみてはどうでしょう。
直属の上司と密度の濃い関係を築くという、小さいけれども確かな関係性から、組織内での自分の重要性を感じてもらうのが基本になります。その過程において、重要な仕事を任せ、責任ある役割につければ、やりがいを持って会社に貢献する気持ちがはぐくまれるでしょう。
次に実力がついた中堅社員の従業員満足についてみていきます。中間管理職は、実力がついた半面、悪い意味で仕事に慣れてしまっています。なにも考えずに飛び込むよりも、安定的な数字の達成を求められるので、責任の割に地味でおもしろみが少なくなっているのです。また、中間管理職は長期間、同じ立場が続くことが多いので、どうしても停滞感が出ます。すると不満は経営陣に向かっていき、放置しておくと離職につながりかねません。これを防ぐには、新しい役割を与えたり、新人を育てる喜びを知ってもらったりするなどがよいでしょう。なるべく新鮮な空気を入れてあげるのが大切になってきます。
会社の統合で起きることに学ぶ従業員満足
積極的に経験したいと思う人は少ない、会社の「合併」。特に統合された側の従業員は、自分の居場所が確保されるのか気が気ではないでしょう。合併はいわば、強制的な転職に近いわけですから、環境が合わなければ自分から選んで新しい会社に行く人も出てきます。せっかくイノベーションが起きる空気が生まれたのに、有能な人材が流出しては元も子もありません。
合併で起きる人材流出の原因を探ると、しばしば以下の点があげられます。
・新しいビジョンがきちんと行き渡らず将来が不透明
・経営者がリーダーシップを発揮できず、会社がひとつにまとまらなかった
・従業員が疑心暗鬼になり本音の相談ができず、既得権争いが起きた
いずれも前述した従業員満足に関係することばかりであることがわかります。従業員満足の向上策を日ごろから行うことが肝心で、仮になんらかの問題が起きてしまったとしても、基本に立ち戻った策を講じれば、ダメージを最小限にとどめられます。
問題が生じた場合、責任はあくまで経営者にあることを忘れず、前向きな改善に向かって行動したいものです。
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