人間は、誰しも「幸せでありたい」と思うものですが、日々の仕事に忙殺されて、幸せを感じる余裕がない人も多いかもしれません。
ハーバード大学の研究プロジェクトの報告書「Buying time promotes happiness」によると、高収入の人の幸福感が損なわれる要因の一部として、自分の時間が十分に持てない、常に時間に追われているといった「時間飢餓」を挙げています。そして、この問題を解決するためには、「時間を買う」という考え方が役に立つといいます。
人間が幸せを感じられる「時間を買う」とは、一体どういうことなのでしょうか?
「時間を買う」=「家事代行サービスを利用する」
同報告書によれば、「時間飢餓」は収入が上昇するほど生み出され、時間に追われている人を増やしているといいます。こうした時間不足のストレスは、不安感や不眠症などを引き起こし、健康状態に悪影響を与えるとされています。
この時間飢餓が引き起こすストレスを回避する方法として、プロジェクトメンバーの一人である心理学者のエリザベス・ダン教授は、お金で「時間を買う」ことを挙げています。
「時間を買う」とは、時間を節約するのためのサービスや物を購入することを意味します。たとえば、家事代行サービスを利用して家事を他人にしてもらうこと、長距離の通勤を避けるために、多少家賃が高くなっても仕事場に近い家に引っ越すこと、なども「時間を買う」ことに含まれます。
ダン教授によれば、こうした「時間を買う」行為により、自分の時間がより多く確保できるようになり、日常の満足度向上につながるといいます。つまり、時間を節約してくれる物やサービスを買うことは、「商品そのもの」だけでなく、自分の時間を買うことにもつながる、ということです。
「物を買う」より「時間を買う」方が幸せである
プロジェクトでは、「時間を買う」=「幸せを感じる」ことを証明するため、さまざまな調査が行われています。
1つ目がアメリカ、カナダ、デンマーク、オランダの約6,300人を対象としたアンケートです。このアンケート調査では、「時間をお金で買う人」は、時間飢餓のストレスによって日常生活の満足度が下がらなかった、という結果が出ました。興味深いのが、お金を十分に使える富裕層のみだけではなく、富裕層以外の人でも、同じ結果となりました。収入が多くない人でも、お金を使って時間を確保することで、日常生活の満足度の低下が抑えられる傾向が見られたのです。
プロジェクトではさらに、「物を買う」よりも「時間を買う」ことの方が幸福度が上がるという実験結果も出ています。
カナダ・バンクーバー在住の有職成人60名を対象にし、2週間にわたって行われた実験で、週末ごとに各被験者に40ドルを提供し、1週目は「時間を買う」、2週目は「物を買う」ことに資金を使わせる、というものでした。
被験者たちは、1週目は清掃代行サービスを頼んだり、会社までランチをデリバリーしてくれるサービスを使ったり、近所の子供にお小遣いをあげて雑用を頼みます。続く2週目には、時間の確保には関係のないワインや服、本などを購入したといいます。
この結果、被験者は1週目の方が高い幸福感が得られました。報告書では「時間のストレスが軽減され、被験者の感情にポジティブな影響がもたらされたのではないか」と考察しています。
「時間を売る」ばかりではなく「時間を買う」ことも重要
「時間を買う」の逆の考え方として、「時間を売る」というものもあります。「時間を売る」とは、働く時間をお金に変える、つまり「労働」のことです。
売る時間が増えることは、労働時間も増えることになるため、結果的に収入も増えます。しかし、多く収入を得たいからといって、時間をどんどん多く売っていくと、今度は「時間飢餓」の問題が出てきます。自分の時間がとれず、ストレスがたまり、幸福度が下がっていくことになります。
現代では時間に追われ、知らず知らずのうちにストレスをためてしまいがちです。「時間を売る」ことで収入を上げることも重要ですが、「時間を買う」ためのサービスや物を利用してみると、日々のストレスが減り、より幸福度の高い日常生活が送れるようになるかもしれません。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2018 年1月19日)のものです。
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