「リーダーシップ」と耳にして、自分にはそんな能力がない、向いていないと感じる人がいるかもしれません。しかし、ある程度の経験を積むと、自ずとチームを率いる立場にならざるを得ないこともあります。そんなとき、どのように部下を引っ張ればよいのか悩む人も少なくないはずです。
悩む人の多くは、理想的なリーダーシップがメンバーを力強く引っ張るようなタイプと考えがちですが、実際にはさまざまな方法があります。そのなかには自分の資質を活かすものもあるので、うまくチームを引っ張ることは十分可能です。今回は、トム・ラスとバリー・コンチーによる著書『ストレングス・リーダーシップ―さあ、リーダーの才能に目覚めよう』を参照しながら、リーダーシップの多様さや活かし方について説明します。
「外向的」であることばかりがリーダーシップではない
日本語で「リーダーシップ」といえば、強い自信と外向性を身体全体にみなぎらせた「俺についてこい」というタイプを想起するかもしれません。しかし、実際にはこうしたタイプの人ばかりがリーダーであるわけではないのです。
本著によれば、人間の強み(ストレングス)は34に分けられます。強みとは、いつでも成果を生み出せるような能力のことです。たとえば「成長促進」を強みとして備えている人は、他人の潜在的な可能性を見抜くのが得意である、とされています。
34の強みの中には、「活発性」「最上志向」「自我」「社交性」「ポジティブ」「目標志向」など、いかにもリーダーシップに当てはまりそうな資質が多く含まれています。
しかし、著者は決して活発性など外向の強みについて 「リーダーが持つべき資質は○○である」と主張しているわけではありません。むしろ、すぐれたリーダーシップにはさまざまなかたちがあること、そして内向的なタイプでもリーダーたり得ることを指摘しています。
内向的なものである「共感性」「慎重さ」「内省」なども、34の強みに含まれています。
外向的なリーダーばかりがリーダーシップのあるべき姿だというわけではありません。リーダーシップの定義は多様です。リーダーは自分がどのような資質を身につければうまくチームを統率できるかを考えるよりも、今の自分が持っている資質で、どのようにチームを統率していくべきかという点にフォーカスして考えるべきだと本著では述べています。
自分の長所を見つけて活かそう
重要なことは、今の自分の資質を見極め、その活かし方を考えることです。あるべきリーダー像は外向的などという固定観念に囚われていると、短所を埋め合わせることばかりで対処しようとします。その人が生来持っている資質を活かしきれていない状態ともいえるでしょう。
内向的な人も、裏を返せば人間観察に優れたタイプかもしれません。部下の人となりをよく知り、その人の求めることや気になっていることを把握しながら業務を進めるのが性に合っている可能性があります。それを活かすとすれば、部下の話によく耳を傾けて、風通しのよい職場の雰囲気作りに気を配るのが合っているかもしれません。
「適切な人材を自分のまわりに配置し、それぞれの強みを足がかりにして目標を達成する」ことが大切と本著では述べています。自分の思っていた理想のリーダーになることよりも、チームの力を最大限に活かすことがリーダーには求められているのです。
自分とは違う強みを持つチームメンバーにフォローしてもらおう
内向的な人は、自分の弱点に目を向けがちです。しかし、どんなリーダーにも弱点があるのは当然のこと。本著では、「最もまとまりがあって、成功しているチームでは、メンバーの強みが広範にわたっている」と書かれています。つまりチームとして結果を出すために、自分にはない強みを持つチームメンバーを見つけることをすすめています。
そのとき、まずはまとまりのよいチームには何が必要なのか把握するようにします。本著でリーダーシップに必要なものは、「実行力」「影響力」「人間関係構築力」「戦略的思考力」の4つの領域に分類されています。前述した34の強みは、4つの領域のうちいずれかに所属しています。たとえば、「目標志向」や「慎重さ」は実行力、「活発性」や「社交性」は影響力、「ポジティブ」や「共感性」は人間関係構築力、「内省」や「戦略性」は戦略的思考力のうちの1つです。
リーダーである自分が4つの領域をカバーしている必要はありません。チーム全体として4つの領域をカバーしていると、団結力のある強固なチームができあがります。足りない部分は、他のメンバーが補えばよいからです。仮に実行力と戦略的思考力しか自分が備えていないようであれば、残りの2種類の資質を持つ人をチームに迎え入れましょう。
その上で、リーダーはメンバーの強みを理解するとともに、メンバー間の人間関係づくりに投資し続けることが重要です。本著では、お互いの強みを理解するとともに、組織の目的に向けてメンバーを団結させることが有能なリーダーであるとされています。リーダーは、自分の強みを知っており、メンバーの強みを知っており、しかもメンバー同士がお互いの強みを理解できるよう促せる役割を担っているわけです。
リーダーシップとは、自分の強みを理解し、チームがより成果を上げるためにどんな強みが必要であるかを理解できる資質です。リーダーは、外向的でなければいけないわけではありません。内向的でも、その慎重さや考えの深さを活かすことでリーダーシップを発揮できるのです。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2017年12月25日)のものです。
【参考書籍】
トム・ラス、バリー・コンチー『ストレングス・リーダーシップ―さあ、リーダーの才能に目覚めよう』日本経済新聞社
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